チェドリアに向けて

 カンちゃん「起きろ」カン

 

 カズヤ「もう少しだけ……」


 太陽はとっくに登り日光が窓越しに寝ているカズヤを照らす

 カンちゃんが窓から部屋に入り、まだ寝ているカズヤの頭を突く



 カンちゃん「神格魔法・最光度爆発ガンマバースト


 カズヤ「ん……?お、お、おい!!落ち着け!!」


 顔が急に暖かくなった気がして目を開けると目の前でカンちゃんが口の中の炎をこちらに向けていた

 お、お、おい!!落ち着け、そんなもの発射したら街が消える!!

 俺も死ぬ!!こんなところで死にたくない!!



 カズヤ「とりあえず……!!その炎を消そう!!」


 カンちゃん「起きたら消す」


 カズヤ「もう起きました!!起きたから!!」


 カンちゃん「解除キャンセル


 ふぅー良かった

 朝から死にかけることになるとは……

 もっと起こし方があるだろ。生命を人質に取るのはダメだ

 刺激が強すぎる……



 カズヤ「命を人質に取るな!!」


 カンちゃん「起きないのが悪い」


 カズヤ「疲れてんだよ!!ずっと肩に乗ってたんだから分かるだろ!!」


 カンちゃん「知るか。みんな起きてる」


 カズヤ「え?そんな冗談、今はいいの!!」


 みんなだってまだ寝てるに決まってる。昨日の疲れは簡単には取れない

 ナリアはまだ寝てるはずだ。夜遅くまで起きてたんだから

 こんな時間に起きられるわけがない



 ナリア「カズヤー起きてる?もう朝だよー」


 ケール「早く起きてーじゃないとロイスが扉こじ開けるって」


 ロイス「俺はそんなことしねぇよ。ぶち破るだけだ」


 扉の越しに三人の俺を呼ぶ声が聞こえる

 嘘だろ……!!もう起きてるだと……!!

 ナリアまで起きてるなんて……!!何がどうなってる⁉

 ロイス、一緒だわ。ぶち破るくらいだったらこじ開けて欲しい

 俺は急いで支度をして扉を開ける

 扉の先では三人がいつもの調子で待っていた

 何で起きれるんだ?



 カズヤ「おはよう。よく起きたね」


 ロイス「寝れば疲れは取れるだろ」


 ケール「うん。ロイスの言う通りだね」


 カズヤ「納得行かないなぁ。ナリアは眠くないの?」


 ナリア「全く。元気だよ」


 おかしい。異常だよ

 この三人ちょっとおかしい(お前カズヤがおかしい)

 三人が起きたことに疑問を持ちながら宿を出た



 ロイス「よし、飲もう」


 ナリア「こんな朝から頭おかしいの?」


 ケール「吐くよ」


 カズヤ「呑兵衛でも朝から飲まないよ」


 宿を出るとロイスが元気よく言った

 こんな時間に飲むなんて頭おかしいって

 呑兵衛、アル中でもこんな時間からは無いわ

 

 

 ロイス「じゃあどうするんだよ?」


 ナリア「次の目的地の情報探しよ」


 ケール・ロイス「「次の目的地?」」


 ナリア「えぇ。次の目的地はチェドリアよ」


 ロイス「チェドリアって……滅んだ国じゃねぇか。何でそこに?」


 ケール「チェドリアなんて何も無いじゃん」


 ロイスとケールはチェドリアに行く理由が分かってないみたいだ

 滅んだ国に行くなんて普通に考えておかしいよな

 でも、俺はチェドリアに用がある



 カズヤ「チェドリアで調べたいことがあるんだ」


 ナリア「そう!!私たちがチェドリアに用があるのよ」


 ロイス「そんな行きたいならついていくか」


 ケール「うん。なんか大事そうだし」


 とりあえず二人の説得に成功

 この二人には感謝だ。何を調べたいとか言ってないのについて来てくれる

 気になることを聞かないでついて来てくれるのはありがたい



 ナリア「じゃあ情報探しね」


 ロイス「どうやって?滅んだ国の情報なんてそもそも少ないと思うが」


 ナリア「んー……とりあえずギルドに行ってみましょう」


 ケール「ギルドにあるかな?」


 ナリア「ギルドは色んな情報が集まる場所でもあるわ。行って損はないと思う」


 俺たちはギルドに向かうことになった

 ギルドには冒険者だけでなく、情報も集まる

 ナリアの言う通り、行ってみて損は無いだろう


 



 

 ――――――



 受付嬢「お待ちしてました!!」


 カズヤ「え?後ろの人たちですか?……誰もいない」


 ギルドに入り受付に行くと猛烈に歓迎された

 歓迎されるようなことをした記憶が無いので人違いだと思い、俺たちの後ろを振り向く

 だが、後ろには誰もいない

 本当に俺たちなんだ



 ナリア「私たちしかいないわよ」


 受付嬢「あなた方です……」


 カズヤ「何で俺たちを待ってたんですか?」


 受付嬢「何でも何も、災いの騎士カタストロフィナイトの拠点を壊滅されたんです。冒険者ランクの昇格をさせてください」


 あ、そうだった。死闘の末、壊滅させたんだった

 でも、最後爆発して跡形も無く吹き飛んだから俺等がやったって忘れそうになる

 冒険者ランクの昇格か。どれくらい上がるんだろう

 

 

 受付嬢「みなさまのカードをいただけますか?」


 カズヤ「はい」


 俺たちは受付にカードを渡した

 受付はカードをもらうと近くにいたスタッフに渡した

 スタッフがカードを受付の奥へと持っていく


 

 受付嬢「お預かりいたします。後ほどお越しください」


 カズヤ「あの、チェドリアについての情報ってありませんか?」


 受付嬢「チェドリア……ですか?それならギルド内にあるインフォメーションセンターに行くとよろしいかと思います」


 カズヤ「ありがとうございます」


 インフォメーションセンターか。そこに何か情報があればいいが

 チェドリアって言った時、受付の人に正気?みたいな顔されたしな

 チェドリアに行く人なんていないんだな



 カズヤ「インフォメーションセンターだって」


 ナリア「インフォメーションなら2階にあったはずよ。2階に行きましょう」


 階段を登り2階に上がる

 2階には本がいっぱい並んでおり、図書館のような雰囲気を感じる

 ここがインフォメーションセンター……見た目図書館だけどな


 

 受付嬢(インフォメーションセンター)「どのようなご用件でしょうか?」


 カズヤ「チェドリアについて知りたいんですけど」


 受付嬢(インフォメーションセンター)「チェドリアですね。少々お待ち下さい」


 カズヤ「はい……」


 チェドリアと言うと受付の人が本棚を漁り始める

 図書館じゃねぇか。本を読んで情報を知れってことか

 しばらくすると受付が右手に本を何冊か、左手にチラシのような物を持って戻ってきた



 受付嬢(インフォメーションセンター)「こちらがチェドリアに関する情報です」


 カズヤ「このチラシはなんですか?」


 受付嬢(インフォメーションセンター)「こちらは任務表です。任務場所が全てチェドリア内の任務が書かれています」


 チェドリアに行かないと達成出来ない任務が書かれているのか

 チェドリアでしか達成出来ない任務は5つか

 俺たちが用あるのはこっちじゃなくて本の方だ

 俺は受付から本とチラシを受け取る



 ロイス「もう終わりか?」


 カズヤ「いや、まだ探してみたい」


 ケール「手分けして探さない?効率が良いと思うんだけど」


 ナリア「そうしましょうか。そうね……2時にまたギルドに集まりましょう」


 ロイス「了解だ。俺は街の東を探す」


 ケール「オッケー。僕は街の西を探すよ」


 ギルド内にある時計は11時を差していた

 探す時間は三時間弱。四人で手分けをして探せば何かしらの情報が集まるだろう

 ロイスが街の東、ケールが街の西、ナリアが街の北、俺が街の南を探すことになった

 三時間弱あれば南を十分に探索出来るだろう

 俺たちはギルドを出て、それぞれ情報集めを開始した



 



 ――――――

 〜チェドリア内災いの騎士カタストロフィナイトの拠点〜

 


 「誰だ!!貴様!!」


 「……中に入れろ」


 「通すわけ無いだろう!!何故ここが分かった!!」


 「……通らせてもらうぞ。生命吸収ヴィロータ


 「なに⁉ウッ……!!ぁ、ぁ……」


 チェドリアにある災いの騎士カタストロフィナイトの拠点にフードを深く被り顔の見えない正体不明の男がやって来た

 見張りが門前払いするが、男は見張りの首を掴むと命を吸い取った

 そして古びた建物の奥へと進んでいく

 男は途中、複数災いの騎士カタストロフィナイトの構成員と出会ったが皆殺しにした

 男は奥へ奥へと進み、一段と豪華な扉の前に立つ

 次の瞬間、勢いよく扉を開けた

 中にはタトゥーが刻まれた王冠を被り、王族のような服装をした男が絢爛豪華な椅子に座っていた。男の左手にはタトゥーが刻まれている

 座っている男は見ず知らずの男を警戒し立ち上がる



 「誰だ?貴様は?」


 「……」(男がフードを取る)


 「バ、バエル様⁉どうしてここへ!!」


 「回帰の法が書かれた本を渡せ」


 「し、しばしお持ちを……!!」


 豪華な服に身を包んでいる男は入ってきた男がボスであるバエルだと分かり、動揺が収まらなくなる

 動揺からまともに口を動かすことも出来ず、言葉の端々が震える

 男は震えた手付きでバエルに言われたものを探す

 心臓をバクバク言わせながら、回帰の法が書かれた本を見つけた

 


 「こ、こちらでございます……!!」


 「そうか……死ね」


 「ウグッ……!!!ど、どうして、ですか……⁉」


 男はバエルに震えた手で本を渡す

 バエルは本を受け取ると闇魔法を纏った右手で男の胸を貫く

 男は胸を貫かれた瞬間、大量の血を吐き出した。貫かれた箇所からもポタポタと血が滴り落ちる

 男が吐き出した血がバエルの服にかかり、バエルの服が血塗ちまみれになる

 男は血がバエルにかかり焦る気持ちはあるが、それよりも痛みの方が勝る



 「お前は使い物にならない。いつか来る惨めな冒険者に倒される」


 「わたくしども、が冒険者ごとき……に」


 「その前に俺の手で殺されることに感謝しろ」


 「ハァ、ウッ……!!ガㇵァ……!!」


 バエルは男の胸から手を抜くと次に心臓を貫いた。そして、心臓を掴むと力いっぱいに引き抜いた

 男の瞳から光が無くなり、力無くその場に倒れる

 ブチブチという音が部屋に響き血が撒き散らされる。豪華な装飾で彩られた室内が血で真っ赤に染まる

 バエルは心臓を投げ捨てると本を片手に部屋をあとにした


 

 



 ――――――

 〜時刻2時。ギルドにて〜

 

 2時になりみんながギルドに集まった。俺がギルドに到着するとみんな既に集まっていた

 時計は2時をほんの少し過ぎている。みんなも今来た、というところだろう

 ケールとロイスの表情が暗いけどどうしたんだろう

 


 ナリア「みんな揃ったわね。情報は集まった?」


 カズヤ「ぼちぼちかな」


 ケール「全くダメだったよ……」


 ロイス「俺もだ……」


 ケールとロイスは何も収穫がなかったので申し訳無さそうな顔をした。何も見つからなかったから暗い顔をしていたのか

 無理もない。チェドリアは滅んだ国でありそこまで国交を開いていた国ではなかった。復興が行われてはいるけど元通りになるまではまだ時間がかかる。過去の情報はほとんど滅んだときに消えてる。海外に情報が出回らなかったのだ。情報が見つからないのも無理はない

 俺もあんまり有益な情報掴めなかった。三時間弱手分けして探して見つからなかったのならこれ以上探しても見つからないだろう



 ナリア「真剣に探した?魔が差したりしてないでしょうね?」


 ケール「真剣に探しったてば!!」


 ロイス「あぁ。ふざけたりなんかしてないぞ」

 

 ナリアが疑惑の眼差しをケールとロイスに向ける

 ケールとロイスはマジトーンで返した

 ちゃんと探してたんだな。それでも見つからなかったんだ

 もう探すのはやめだ。時間の無駄になる



 ナリア「そう……宴会ついでに情報を共有しましょうか」


 ロイス「待ってたぜ!!」


 ナリアがそう言うとロイスが子どものように喜んだ

 パーティー狂だなぁ

 でも、まずは情報の共有が先だから!!

 先に飲むなよ!!パーティー狂!!

 


 ナリア「情報の共有が先だからね!!ロイスパーティー狂分かってる!?」


 ロイス「お、おう……わかってるぞ」


 ロイスはさっきまでの勢いがなくなり大人しくなる

 ナリアって言うとき言うよな。そして、ちゃんと強い

 このパーティーにナリアの存在は不可欠だな

 


 ケール「分かってないでしょ……」


 ナリア「そう言うケールもよ。あんた、どさくさに紛れてやる時あるんだからね」


 ナリアはジト目でケールを見る

 ケールはわざとらしくナリアから視線を背ける

 図星かい。どさくさ紛れにやるときあるのかよ

 


 ナリア「じゃあ早速行きましょう」


 ナリアはそう言うとルンルンな様子で歩き始める

 気のせいかな?足取り軽い気がするんだけど

 そう言ったナリアが実は……パターンあるのか?

 それは飛んだどんでん返しだけど

 

 

 ケール・ロイス「……(あいつが一番楽しそうにしてるじゃん)」


 ナリア「早く来なさいよ!!時間限られてるんだからね!!」


 ケールとロイスはルンルンで歩いているナリアの後ろ姿を見て同じことを思った

 ナリアついてこない三人にそう言うと前を向いて再びルンルンで歩き出した

 俺はこの言葉でナリアのことを一気に信用した

 時間は限られてる。この言葉はおそらく俺のクラスメートのことを言ってくれてる……はず

 違ったらどうしよう。複雑な気持ちになっちゃうな……

 あんまりそういうことは考えない。うん

 俺は自分を説得させてナリアの背中を追いかけた

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