異世界生活48日目:災いの騎士

俺たちは災いの騎士カタストロフィナイトの情報を得るためにギルドに行ったがBランクでなければ話はしないと言われた

Bに上がるために、提示された任務をこなしにアグロクの森へ足を踏み入れた

提示された任務はミストラルタイガーの討伐

風魔法を操り、警戒心がとても高く人前には姿を現さない。俺たちは何時間(感覚的には数日)歩き続けやっとのことで見つけた

ミストラルタイガーと歩き疲れている中で戦い、苦戦しながらも何とか倒すことが出来た。ちゃんと素材も回収したし、これでウルトルさんから話が聞ける。早くアグロクの森を抜けギルドに戻ろう

ヴィネのためにも早く右手の甲の男を倒してあげたい



~???~



「ったく……まだ見つかんねぇのかよ」



「まだ見つかってないのか?」



「うるせぇな……探してる最中だ」



「早く殺らないとお前の首が飛ぶかもな」



「それはお前もだろ。大公様の命令を成し遂げられてねぇんだからよ」



「部下の後始末に時間がかかってるやつと一緒にするな」



こいつは部下の後始末すら直ぐにできないグズだからな。大公様から直々の命令なんてこいつには下されない

それは信頼されていないことを意味する。こいつは幹部という地位を過信し過ぎている



「お前はガキの始末すらできねぇ能無しだろ」



「お前が追っている冒険者たちもまだガキだ。人のことを言える立場だと思ってるのか?」



「俺はお前みたいに任務を部下人形に押し付けない」



「ハッ……随分と上から言ってくれるじゃねぇか」



「あまり調子乗んなよ…!!」



「吠えるなら義務を果たしてからにしろ」



こいつとはそこそこ長い付き合いたが、全くと言っていいほど噛み合わない。意見があった事すらない。大公様はなんでこんなやつを幹部にしたんだ?ただの能無しが幹部をやっているなんて下の人間ガキ知ったらどうするつもりだ?



「……」スタスタ



「どこに行くんだ?」



「ガキ共を殺す」



「部下に任せてたのにお前が行くのか?」



「黙れ。首を突っ込んでくんじゃねぇよ」



「……」



あいつ自ら出向くとはな……珍しいこともあるんだな



~?????~



絢爛豪華な部屋に5人の人間が集まっている。その5人の前には玉座が1段高いところにある



「……」スタスタ



王様の格好をした人間が歩いてくると玉座に腰掛けた。5人は王様が入ってくると頭を深々と下げ腰掛けたところで顔をあげた



「バエル様。お久しう御座います」



「何用で御座いますか?」



神遣の騎士アポストロフィナイトの子羊を御所望でしょうか?」



「……」コク



「承知致しました」



「バエル様の仰せの通りに…」



「「「世界に神の救済を」」」



5人は再び王様に深々と頭を下げた



~カズヤ~



俺たちはアグロクの森をカンちゃんの案内の元無事に抜けることが出来た。ギルドに戻ってきた頃には太陽が西に傾いていた



「任務の報告をしに来たんですが」



「カズヤさんたちの任務はミストラルタイガーの討伐でしたね。証明出来る物はありますか?」



「これです」



「無事達成出来たんですね!!おめでとうございます!!」



「お前たち…!!?達成出来たのか!?」



俺がミストラルタイガーの角を出すと受付の人とウルトルさんは驚いた

達成すると思っていなかったんだろう。それくらい難易度の高い任務だったってことだ

実際苦戦したからな……



「これでBになれるんですよね?」



「あぁ…約束だからな。まさか本当にやっちまうとはな」



「もう1つの約束も守ってくれますよね?」



災いの騎士カタストロフィナイトについてだろ。わかってる。お前らをBランクに昇格させとくから少し待っててくれ」



「はい」



ウルトルさんが俺たちの冒険者ランクをBランクにしてくれるまでギルドでゆっくり休んでいた

休むとずっと歩いていた疲れが一気にきて眠気が襲ってくる。みんな眠気に負けて寝ていた



「終わったぞ」



「ん……朝…???」



「よっぽど疲れてたんだな」



「ハッ…ありがとうございます!!」



「みんな寝てる。起こさないと」



「無理に起こす必要はねぇよ」



ウルトルさんは見た目と違った優しいんだな。ライオスさんみたいだ

俺はみんなが起きるまで待っていた。ウルトルさんも黙ったまま待っていた

カードを確認してみるとCランクからBランクに上がっていた



「Zzz……やば寝てた!!!」



「起きろ!!いつまでも寝るな!!」

(ナリアは人を起こす時優しく起こせないのか?起こすとき人変わってるんだけど)



「え……」「朝か?」



「寝ぼけない!!!!」



「「は、はい!!!」」



「起きたか?」



「起きたみたいです」



「ここじゃ人目があるからな。こっちだ」



俺たちはウルトルさんに連れられて受付の裏にあるウルトルさんの部屋にお邪魔した

部屋は散らかってなく、机にはトロフィーが置いてある。何の大会かは知らないけど優勝してるんだ



「まずは軽く自己紹介しとくか」



「俺はウルトル。ギルドの管理を任されてる。元々は冒険者をやっていた」



「よろしくな」



「「お願いします」」



災いの騎士カタストロフィナイトについて知りたいんだな?」



「はい」



「なんで知りたい?」



「人のためです。私は困ってる人の願いを叶えてあげたい」



「なるほどな……」



ヴィネのため。これはナリアだけでなくみんなも俺たちもそうだ。最初はナリアのためにと思っていたが話を聞くとヴィネのためにやらなければと思うよりなっていた



「まず災いの騎士カタストロフィナイト__#は呼称だ。俺たちが勝手に呼んでるだけだ」



「本当の名前は?」



「あいつらは自分たちのことを神遣の騎士アポストロフィナイトと称している」



「表向きは世界を変えると言ってるからな。自分たちを神の遣いだとでも思ってんだろう」



「本当のところは平気で人殺しも行うテロ組織だ

災いしか呼んでこないから災いの騎士、災いの騎士カタストロフィナイトって呼ばれるようになった」



「災いの騎士はなんで生まれたんですか?」



「3年前、神の怒りを買って滅びた国があった。滅びた原因は自分勝手な王にあった

それで王は自分勝手で国民の事など考えていないと決めつけ世界の変化を訴えた人間たちが集まり生まれた」



「最初はそのうち無くなると誰もが思っていた

だが、あいつらは世界各地に散らばり活動を続けた

その結果、災いの騎士のことを知らない人間はこの世には1人も居ない

そして、世界の変化には犠牲が付き物だとして人殺しもやるようになった」



災いの騎士は元は世直しを訴えた集団だった。しかし、それがいつしか人殺しも行う集団へと変化した

世界を変えるためには犠牲は仕方ないってことか?

それは世界を変えることになるのか?革命には犠牲が付き物なのはわかるが、だからといって平気で殺すのはどうなんだよ



「あいつらは厄介だ。さっきも言ったように1箇所に固まっていない。世界各地に拠点があって分散してるんだ」



「全部で何箇所あるんですか?」



「5箇所と言われてる。レイデリアとアルメラート、エンデプール、リッジグーデン、チェドリア」



「レイデリアにもあるんですね。どこにあるんですか?」



「確証は持てねぇがアグロクの森だろうな。国内に拠点を作るのは危険。森なら魔物もいるし自然の要塞化する」



「あいつらにトップは拠点ごとに存在する」



「複数いると?」



「あぁ。拠点を潰しただけでは災いの騎士は壊滅しない。それにトップの名前も分からない。誰がトップなのか検討もついていないのが現状だ」



レイデリアの拠点を潰したとしても災いの騎士が直接潰れる訳では無い。複数のトップの元に災いの騎士は存在する。1人のトップが消えたところで影響はあっても壊滅することは無い

厄介だな。壊滅させるには全ての拠点を潰さないといけないのか



「そういやお前たちは2つタトゥーが入ってるやつを倒したんだよな?」



「はい。物資輸送の護衛中に遭遇して撃退しました」



「お前らCランクで何で留まってた?」



「留まるも何も僕たちはCランクにはこの前昇格したばかりですよ」



「2つタトゥーが入ってるやつは幹部クラスだ。普通はAランク以上の冒険者がやるんだがな……災いの騎士の下っ端だけでもBランクは必要だ」



「苦戦はしましたけど……そんな高いんですね」



「災いの騎士は低ランクの冒険者よりはよっぽど強い。特殊な訓練を受けてんだろうな。そこの幹部は冒険者の中でも飛び抜けて強い奴らじゃねぇと相手にならないんだけどな」



「お前らは才能があるみたいだな。このまま行けばAランク以上もあるかもな」



左頬にタトゥーが入ったやつそんなに強かったんだ。Cランクの俺らでも倒せたけどな…

あいつだけ弱かったんだろうな。そうじゃなきゃ倒せないもんな



「才能があっても気をつけろよ。あいつらは強ぇ」



「大丈夫です。私たちは負けません!!」



「自信があるのはいいことだがよ……危険だからな」



「危険なのはわかってます。でも、あの子のためには危険も承知でやらないといけないんです」



「あの子?」



「幸せに暮らしていたはずの女の子です。急に災いの騎士に襲われてお父さんとお母さんを亡くしました。その子が襲ってきた右手の甲にタトゥーが入ってるやつを倒して欲しいって言ったから追ってるんです」



「右手の甲……」



ウルトルさんが難しい顔をしてるな

ヴィネの身にあったことを知って思うところがあるんだろう



「そうか……そりゃ残念だったな」



「いくらその子のためとは言え死ぬような真似はするなよ」



「わかってます」



「ありがとうございました!!」



俺たちはウルトルさんの部屋を出たあと、ヴィネに会いに行こうということになったのでヴィネがいる病院へ向かった。ヴィネとちゃんと会うのは初めてだ。ヴィネに希望が与えられたらいいな



「右手……か」



[右手……]



ウルトルの頭の中は自分の愛弟子であるテソロが死ぬ間際に放った「右手……」とカズヤたちの言っていた右手の甲にタトゥーが入った男とどんな関係があるのか

でいっぱいだった



「ヴィネ。元気にしてた?」



「ナリア!!後ろの人たちは?」



「俺はナリアと同じパーティーのカズヤ。こっちがケールとロイス」



「ヴィネの仲間なのね。なら良かった……」

(顔が曇ってる。何かあったのか?)



「何かあったの?」



ヴィネの顔が明るくない。見慣れない俺たちがいるせいかもしれないが、だとしても暗すぎる気がする

一体何があったのだろうか?



「嫌な夢を見たの……」



「夢?」



「殺される夢……」



「誰に?」



「右手の甲にタトゥーが入った男に殺される夢」



ヴィネは右手の甲にタトゥーが入った男に両親を殺された。その男はヴィネのことを探していた

自分が両親と同じように殺されるかもしれないという不安から見たんだろう

ヴィネは怖がってる。早く右手の甲にタトゥーが入った男を倒したい



「大丈夫よ。私たちが必ずその男を倒してみせるから」



「うん。安心して。俺たちがやっつけるから」



「……うん」



俺たちはヴィネをできる限り安心させてから病院を出た



「ヴィネ怖がってたな」



「早く倒さないと」



「あぁ。そうだな」



「どうやって探そうか?」



「拠点にいるかもな」



「なら拠点を探しに行こうか」



俺たちはヴィネを安心させるためにも右手の甲のタトゥーの男を倒さないといけない

ウルトルさんの話では俺たちが探しているやつは幹部クラス。それだけ上の存在なら拠点にいるだろう。早く拠点を見つけて倒す

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