第26話 榊の葉
「出口は? 出口は!」
書庫の焦げ茶色の分厚い扉を叩いた。開かない。
「誰か、ここから出して! お願い、出して!」
火柱は天井近くまで到達し、一酸化炭素中毒というのか、咽喉が締め付けられるように息が苦しくなってきた。下火してもなお、熱い。紅炎の痛みが飛び火するようにすごく熱い。
赤い波状攻撃が無慈悲に背中を押した。焼き焦げる。私の身体が丸焦げの炭のように焼き焦げたらどうなるのだろう。
「榊の葉だよ」
天井から助人のような天使の声が耳に入った。
「真君なの? そこにいるのは」
返事はない。とにかく榊の葉を天井に向かって投げよう、と私は一縷の望みを託して、私は火炎の嵐に向かって思い切り投げた。
猛炎はすぐさま、跡形もなく消え去り、爾後が嘘のように消失した。
「僕は今、ここにはいない。君を忘れかけているんだ。ここにいる僕は僕じゃない誰かなんだ」
「真君の仕業なの? これは」
涙声が聞こえない。どうして、私の信念は知ろうとしないし、その心の声さえも聞こえないの?
私は本当に可笑しくなってしまったんだろうか。ああ、嫌だ。私はこんな冥土の底のような静寂の最果てでは死にたくない。
「目を閉じ続けて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます