ころされる

ころされるかもしれない、と思ったことがある。

それは誰でもない、私自身にだ。

どうやって私を殺すのか。

絞殺か毒殺か殴殺か。

階段の上から突き落とされるかもしれない。

だから階段を歩くのが怖かった。

寝てる間に首を絞められるかもしれない。

だから眠るのがこわかった。

そんな妄想に取り憑かれていた。

強迫観念のような殺意。

それは私を取り囲んでいた。

逃げようにも逃げられない。

私はずっと怯え恐れていた。

あんなに死にたがっていたくせに。

殺されたかったことだってあるのに。

私は私に殺されたくなかった。

あのときの殺意は私の皮を被った何かだったのだ。

あれは私ではなかった。

ふわふわと漂いながら私を弄ぶ。

あれは私ではなかった。

だって本当に私だったら

私は私と心中していたはずだ。

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