長閑な暮らしがしたいだけなのにっ!

@MaShiRonTea

第1話 転生



 ─────人生に疲れた。




 子供の頃から人付き合いが苦手な私こと藤宮 天音ふじみやあまねの唯一の話し相手は愛犬のソラだけだった。


 両親は仕事の事しか考えず、一度も説教も褒められたこともない、要は無関心だ。


 机の上にいつも食事用のお金だけがあり、ソラの世話もする気がない。


 家庭的には裕福な方ではあるだろうが、体裁を保つのを理由に犬を飼い名も付けず命を粗末にするような両親ならいないほうがマシだ。


 だけど、それも明日で終わり!高校を卒業してバイトで貯めたお金で一人暮らしもできるし、ソラも私が連れて行っても何も言われない!



 これからはソラと二人で自由に生活できるんだ!






 そう思っていた───



 就職先も決まり引っ越して3ヶ月後、ソラが病気で亡くなった。




 仕事から帰ったら、ソラが倒れていて急いで動物病院に連れて行ったがもう死んでいた。原因は、心疾患と言われた。


 なんだよそれ、ふざけるなよ!私の唯一の家族なんだぞ。私は幸せになっちゃいけないのか?


 子供の頃から心の支えになってくれていたソラを失った私に、生きる意味なんてない。






 ソラが逝っちゃったなら、私も死んでいいよね?



 ────こんな世の中、間違ってる。








 そこで私の人生は終わった。
















 はずだったんだけど…家のベランダから飛び降りて死んだと思ったら、今は家の入り口で倒れている。


 起き上がって、体のあちこちを触っても怪我一つないし痛くもない、あんな高いところから飛び降りて五体満足って私鉄人だったのか?!ありえないでしょこの状況!などと思っていると後ろから


「貴方は死にましたよ。藤宮天音さん」


 男性の声がした。ドが付くほどのコミュ障なのと急に話しかけられたことによって困ったことに声が出ない。


「あぁ、貴方は人と話すのが苦手なんですね。大変失礼しました、とりあえずこちらを見てもらってもいいですか?」


 後ろ振り向いてやばめのおっさんとかだったら嫌だなぁ、と思いながらも恐る恐る振り返って見たら、翼の付いたロングヘアイケメンだった。


 咄嗟に言葉に捻り出せたのが「こ、こココスプレですか?」でした。


 翼付きイケメンはフッと笑った後「この状況でコスプレなら面白いですよね」と笑われた。


 なんか恥ずかしいな…とは言え、やっぱり神様的なあれですよねぇ…とりあえず迷惑かけたわけちゃってるだろうし謝る一択だよね。


「し、死のうとしてごめんなさい…仕事増やしちゃいましたよね…」


「いえいえ、これが仕事みたいなものですし、天音さんも色々あったようですので気にしないでください」


 神様に気を使われてる!!!申し訳無さがすごい!


「ほんとすみません…」


 死にたい…ミジンコくらい小さくなって迷惑かけずに死にたい…


「思ってることは全部伝わってますから、そんなに凹まないでください…」


 神様は少しオロオロした後、咳をして


「本題に入りますが、天音さんには2つ選択肢があります」


 選択肢がもらえるんだ…亡くなったときに舞い降りる全裸ベビーになるか地獄行きかかな?


「そんな犬と子供を連れていきそうな人生にはならないと思いますよ(汗)」


 ちゃんとツッコミしてくれる…性格もイケメンだなぁ


「一つは、この世界にてもう一度新しく人生を始めることです、こちらは何の種族に生まれるかなどは決めれませんので最悪ミジンコとかチュパカブラとかになるかもですね」


 チュ、チュパカブラ…ミジンコならいいかもしれない…


「…多分貴方くらいですよミジンコで納得する人…」


 神様に呆れられた…


「そしてもう一つは私が持っている世界に今の年齢から転生してもらって、生きてもらうことです。こちらは私の世界ですから種族は選んでもらうことも可能です」


 種族が選べるのかぁ…今の年齢ってことは犬とかになったらおばあちゃんになっちゃうな…


「こちらの世界では犬になるならこちらの世界で言う狼になれます、ですが魔獣ということになってしまうのでお薦めはできません」


 狼だけど魔獣なんだ…魔獣ってゲームとかで敵役でいる犬さんだよね?


「そうですよ、人型ということでしたら、エルフ、ドワーフ、獣人、ヒューマンです。個体差はあるので貴方がどう生きたいのか教えていただけませんか?」


 私の生き方……私はどう生きたいんだろう…


 今まで学校以外で禄に人と関わり合いになってこなかったし、今更人との世界で馴染めるんだろうか…


 できるなら人とあまり関わり合いにならず長閑のどかに暮らしていきたいかな。



 そして───ソラと一緒に─────



 ダメだ、泣きそうだ…



「ソラというと、貴方の飼っていた犬ですか。とても大事なんですね。」


 頑張って泣くのを堪える。


「はい、ソラは私の唯一の家族でした。とても優しくていい子だったんですよ」


 神様は少し考えて言った。


「………わかりました、ちょっと待ってくださいね。」


 そういうと、神様は目を閉じて少しすると「見つけた」と言って片手を前に出したら、そこから青い炎のような火の玉?が出てきた


「これが、ソラの魂です。死後からそんなに時間が経ってなく、魂が肉体から剥離はくりしてなかったので現世に魂が残ってました。」


 神様にソラの魂を、渡してもらった


「その魂は天音さんと共に私の世界に来てもらいますね」


「あ、ありがとうございます」


 ソラとまた一緒に居れるということが嬉しくて我慢していた涙が止まらなかった




 私が落ち着いた頃、神様に神様の世界について詳しく説明をしてもらった。


 こことは違い、科学とかは発展してなくて、よくあるファンタジーゲームの世界観らしい。


「ソラのことで話がそれてしまいましたが、とりあえず長閑に暮らすなら種族はヒューマンかエルフが一番いいと思います。」


 エルフ!ファンタジーっぽい!


「ヒューマンでしたら、ここと変わらず平均寿命がだいたい80年くらいですね。長生きしたい場合でしたら平均寿命が1800歳のエルフがオススメです。」


 1800!?流石にそこまでは…あ、でもソラはいくつまで生きるんだろう。


「申し訳ないのですが、ソラは私の管轄の魂ではないので選択肢がなく魔獣にしかなれないのですが、魔核が壊れない限り生きるので寿命という概念がありません。」


 魔獣っていうところは少し不安だなぁ…でも、寿命がないならいつまで生きるかわからないし私はエルフとして生きようかな!


「わかりました。では天音さんをエルフとして転生させますね」


 前とは違うけど違う世界でも、ソラと一緒に居れるならきっと幸せだろうな……イカンイカン、頬が緩む…


「後、転生する時に言語理解とアイテムボックスの2つのスキルを付与しておきますが、それに加えて一つだけ天音さんの望んだスキルを与えますが何か欲しいスキルはありますか?」


 言語がわかるのは嬉しいけどアイテムボックスって箱をくれるのかな?スキルを一つ…


 それなら───





「え、そんなスキルでいいんですか?それならエルフなので基本的に魔法適正は高いのですが通常のエルフより多めに魔力を行使できるようにしておきますね…余り欲がないんですね(汗)」


 神様にまた呆れられてしまった…私からしたら大事だからいいんです!それにソラのためにもなるし私には一番欲しいことだもの!


「わかりました…ではこれから転生させますね。私から干渉はあまりできませんのでお忘れなく!それでは良い人生を!」

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