短歌集・十八歳

石拾い叶わぬ思い投げ捨てる水面を滑り浮き沈みする


いたずらに穴開き銭を放り投げ穴から覗く鳩の嘴


夕暮れに独り籠った音楽室メトロノームが秒針代わり


八月の陽炎道を歩く僕さかさまになり空を行く君


小遣いをはたいて夜行バスに乗り車窓に写るシリウスを見る


啄木を読んで詩集をそばに置き空虚に青く余韻に浸る


夜十時庄内川の堤防に自転車の音清流の音


暇なので国語事典を読み漁り「青春」の欄付箋で留める


「人はいさ心も知らず」と言うけど母はなんでもお見通しだな


白鳥の水面下での尽力は高校生の規範たる物


ざくろの実食したことはないけれど悲しい恋の風格がある


「好きだよ」と君に言うまで経た時間二年五か月二十八日

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