第26話 左原隆司の社会派ブログ

 僕はそもそもジャーナリストだった。本を何冊も書いてある。とはいえ最近は執筆の依頼もめっきり無くなってしまっているのは現状だ。というわけでこのブログを書いている。ペンは剣より強しという。昨今は手垢のついた陳腐な文句となってしまっているがこの言葉を僕は信じている。このブログを読んでいるあなたにもどうか僕の言葉が届けばと思う。


 ゴッドウィンド。この響きはある者にとっては救世主に思えるかもしれない。だが僕には破滅を導く破壊者にしか思えない。ゴッドウィンドが登場して以来、我々の社会は一変した。あの日、ゴッドウィンドが中国海軍を蹂躙した時。一部の日本国民はそれに熱狂し支持した。ナショナリズムは麻薬のようにこの国を蝕んでいった。いつの間にかゴッドウィンドは祖国を救った英雄として持て囃されるようになった。


 靖原英雄総理はこのゴッドウィンド人気にあやかって彼を神輿に自らへの支持へと繋げていった。彼の御披露目イベントには大勢の大衆それに大勢のマスメディアが集結したものだった。あの銃撃事件はそんな衆人環視のもとで起こった。この事件についてもゴッドウィンドの人気を不動にする為の政権側による自作自演ではないかという疑惑が未だに囁かれているが真相は未だわからずじまいだ。


 とはいえこの事件以降にゴッドウィンドの人気は不動のものとなった。巷では彼のグッズが売られるようになった。今も街中で彼の名がプリントされたTシャツを着て歩く若者とすれ違う事はもはや日常茶飯事だ。と思っていた矢先に彼以外のヒーローの存在も公表された。超高速で移動出来る韋駄天に太陽人間であるアマテラス。本来であれば彼らは非人道的な科学実験により生み出された存在なはずだ。ましてやそのような彼らのような存在を国防の礎とするとは。あまりにリスクが高過ぎる。アマテラスに関しては彼女自身が生み出した火球を利用した発電方法が検討されているがこれも不安はないのだろうか。同じ能力を持つ彼女の母親である天野裕美はが自らの力を制御出来ずに大爆発を引き起こしたという。その娘である彼女にもいつどんなクライシスが起こり得るのかはわからない。

 

 平和憲法の破壊、改正、核武装。今、この国は破滅への道を歩んでいるとしか思えない。この国はゴッドウィンドが登場して以降、ナショナリズムという麻薬に酔いしれているがそれはいずれは劇薬としてこの国を滅ぼしかねないとしか思えない。このような体制批判もいつまで許されるかわからない。僕の言論もいつ規制されかねないかわからない。とはいえ先にも書いたがペンは剣よりも強しというではないか。僕は僕自身の言論を貫くつもりだし変えるつもりはない。この文章を読んでいるあなたの心に突き刺さる事が出来ればそれが本望だ。

 




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