序章 はじまりの夜①
ある
その女には
彼は三男だったので、
ええ、つまり一番楽しくて美しい時間を彼に
まあ、それはいいんです。二人はもう少しで
でも、それなのに。
彼は
え、ご令嬢が言う言葉ではない?
……ゴホン、話を
幼いころから、妹はとにかくその女を目の
とはいえ、女もまさか妹に人の婚約者を寝取る
『ずっとお姉さまからあの人を
『なんで今さらなのかって? そんなの決まってるじゃない』
『だって、その方がより絶望した顔が見られるもの!』
自分の耳を疑いましたよ!
本当にこんなヤツと血が
でも、それだけならまだ
なのに、それなのに!
あろうことか、男は私にこのまま結婚しようと言い出したんです!
『悪気はなかったんだ! 君の妹がどうしてもって聞かないから付き合ってあげただけで、好きなのは君だけだ。信じてくれ、あれは気の迷いなんだ』
ふざけるなって階段から
本当なら出入り禁止にしたいくらいですが、女の両親は男の
いえ、家門が潰れてしまうと使用人も路頭に迷うので、気持ちは分からなくもないですけど。それにしたって、少しは気を
……女の妹は、こうなることが分かっていたのでしょう。全部彼女の計画の内だったんです。幸せだと思い込んで
「そう思いませんか?」
「今
優美な音楽や談笑する声から
そんなやけ酒をあおっていた私に、先ほど声をかけたのが
光を反射して
酔った頭が見せた
「そうでしょう? そうよね? 別に泣いたっておかしくないですよね?」
「おや、知人の話だったのでは?」
「ええ、知人の話ですよ。私は彼女に同情しただけでーす」
そう適当に付け加えれば、男は
「ははっ、ではそういうことにしておきましょうか」
パーティー会場の
「ところで、
「まさか、むしろ妹
「おや、その設定はもういいのですか」
からかうように言った男に無言で
「ふふ。なるほど、それは良かったです」
「良かった!? もしかして人の不幸を喜ぶタイプですか? ……それとも
「そういうことではありませんが……私も
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