アロルス
実力が伸び悩みちょっと苦しい時期に入ろうが、解説役は譲らない。
そんな可愛らしいデモットの一面を見てホッコリする俺達は、北の魔境に足を踏み入れた。
メインは狩り。しかし、若干の観光も兼ねているので一撃どかーんとはしたりしない。
そっちの方が楽だし早いのだが、北でしか取れない薬草なんかを採取し上手く栽培とか出来たら村の発展にも繋がるだろう。
ぶっちゃけ、魔界に興味なんてないしこの大陸ごと海に沈めてもいいとすら思っているが、この魔界には師匠の友人と師匠が残した村がある。
あのツンデレ師匠の思い入れのある村までも破壊するほど、俺達も恩知らずでは無いので魔界を本当に海に沈めるつもりは無い。
良かったな魔界め。ウル達が居なかったら端から順に大陸を沈めるところだったぞ。
まぁ、そんな魔術作ってないのでできないのだが。
「わぁ!!これも本で読んだやつだ!!」
「エニシ草。クルクルとした先端が特徴的な植物で、食べられるそうです。おじいさん曰く、素揚げして塩をかけると酒のツマミになるんだとか。ですが、基本的に悪魔の食べ物は肉が主食ですのであまり有名ではありませんね。ちなみに、俺も食べたことがないです」
目をキラキラと輝かせながら楽しそうに植物を採取するポートネスと、可愛いドヤ顔をしながら俺達にその植物を解説してくれるデモット。
魔境に入ってからずっとこんな感じだ。
ポートネスが植物をみつけ、デモットがそれを解説する。もしかして君達仲が良かったりする?
そう思うほどに、素晴らしい連携が取れていた。
「へぇ。これ食えるのか。ポートネス。俺たちの分も採取してくれないか?後でみんなで味見してみようぜ」
「意外と美味しいかもしれないわね。魔界で取れる食べ物........ふふっ楽しみだわ。お肉はちょっと食べ飽きたしね」
「いい感じの材料になってくれたりしたら嬉しいな。料理の幅が増える」
そして、そんなのんびりとした狩りを俺達も楽しんでいた。
寿命と言う概念がなくなり、更には悟りを開いた俺とエレノアは心の余裕がかなりできた。
どうせ寿命で死ぬこともないし、ゆっくり頑張ろうぜと言う感覚かな。
俺はハマったゲームはやりまくってふとした瞬間に飽きてしまうタイプだが、無を悟ってからはのんびりやった方が長く続くと本能的に理解している節がある。
エレノアも一気に炎を燃やすよりも長く続く小さな炎を灯し続けた方が長く続くと分かっているのか、昔ほどガツガツはしなくなった。
あれだな。歳をとると性格が丸くなるみたいな感じだ。
俺達まだまだ若いけどね。エレノアはもう20を超えているし、俺ももうすぐ20代。
人間の寿命が他種族に比べて短いとしても、全然若い部類ではあるからね。
尚、見た目は12歳の頃からほぼ変わってない模様。悲しきかな。お袋の血はあまりにも強すぎた。
そんな事を思いながら、初めての冒険にはしゃぐポートネスと鼻を高くしながら俺たちに解説してくれるデモットを微笑ましく思っていると、爆速で近づいてくる気配を感知する。
ほぼ同時に気が付いた俺とエレノアは、素早く構えを取ると静かにその気配がある方向を向いた。
「早いな。とんでもない速度で向かってくるぞ」
「小型系の魔物かしらね?それにしてもかなりの速さだわ。今までこんなにも早い移動をする魔物は見た事がないから、新種の魔物ね。正確には、私達が見る中ではの話だけど」
気配がある方向をじっと見つめて待っていると、草木を掻き分けて一帯のま物が現れる。
体長は2メートルほど。俺達人間からしたらでかいサイズに見えるが、この魔界においては小さい部類の魔物だな。
見た目はティラノ系統に近く、口を大きく開けた時の牙からして間違いなく肉食系の魔物である。
でもどれかは分からん。別に恐竜博士では無いからね。
「グヲォォォォォォ!!」
「譲るよエレノア」
「あら。それなら頭を吹っ飛ばして終わりね」
大きな口を開けて俺たちを捕食しようと試みるその魔物は、愚かにもエレノアと対峙してしまった。
エレノアは爆速で飛びついてくる魔物に恐れることなく歩いていくと、クルクルと回していたトンファーでぶん殴る。
普段のように力の入ったアッパーではない。ボクシングで相手を牽制する時のような軽いジャブだ。
「シッ!!」
パァン!!
風船が弾けたような音と共に、その魔物の頭が消え去る。
おいマジかよ。ついに左ジャブで“パァン!!”出来るようになったぞ。
今まではかなり本気で殴っていたように見えたが、今回は本当に軽くジャブを放っただけ。
それだけで、魔物の頭が破裂するとかどんな威力で殴ってんだよこれ。
通りで手合わせした時のパンチが重いわけだ。ストレートなんてまともに食らった日には俺がパァン!!するぞ。
頭が弾け飛んだ魔物はエレノアのジャブによって発生した余波に吹き飛ばされ、木に激突する。
木の枝が揺れ、木の葉が幾つも落ちてきた時には全てが終わっていた。
「こんなもんね。弱すぎて話しにならないわ」
「ねぇ。デモット。私は夢でも見ているのか?強そうな魔物が飛んできたかと思ったら頭が急に消えて破裂音が鳴り響いたぞ」
「夢じゃないですよ。相変わらず無茶苦茶なパンチ力ですねエレノアさんは。どうやったら魔物があんな風に弾け飛ぶんですかね?」
「慣れよ。レベルを上げれば誰でも出来るわ。ジークだってできるわよ」
「いや、流石に軽いパンチでパァン!!なんて音は鳴らないよ?本気で殴れば行けるかもしれないけども」
初めてエレノアの強さを目の当たりにしたポートネスは自分の目を疑っているのか、メガネを外して何度も目を擦っている。
だよね。普通そうなるよね。
俺も初めて見た時は“えぇ........”と思ったものだ。
おかしいだろ。どうやったらパンチで魔物を爆発させられるんだ。
俺はそんなことを思いつつ、死体となった魔物を回収。当たり前だが、首から上は何一つ残っておらず、その顔をまじまじと見ることはできない。
「今の魔物はなんて言う魔物なんだ?デモット」
「この骨格はアロルスですね。肉食系の魔物であり、基本どこにでもいるような魔物です。この子は子供なのでそこまで大きくありませんが、大人となれば7~12メートルぐらいにはなるかと思います。言っておきますが、子供の個体でも普通に強いですからね?そこら辺の悪魔なら、為す術もなく死にますからね?」
アロルス........あぁ、アロサウルスか。
大きな頭、短く太い首、長く重厚な尾、後肢に比べて短い上肢といった特徴を持つ典型的な大型獣脚類で、確か恐竜が出てくるゲームにもいた気がするな。
へぇ。これがそのアロサウルスか。いや、正確には違うんだけども。
そしてこれは子供の個体。子供は風の子と言うし、こういう狭い森の中を駆け巡るには適していそうだな。
「大人はそんなに大きいのね。殴りがいがありそうだわ」
「個体によってはティノルスともタイマンを張れるような強さですよ。お2人からしたら五十歩百歩でしょうが」
「馬鹿言えデモット。強いってことはそれだけ経験値を持っているってことだぞ。効率という面では大きな差さ」
「そうよデモット。強いやつをぶっ飛ばすほどレベルは上がるの。もちろん、囲まれても死なない程度の相手を多量に殺す方がレベルの上がる速度は早いけど、ダンジョンでもない場所では強い方がありがたいわ」
「君達、本当に狂ってるね。これが人間か........」
ポートネス、俺たちを基準に人間と言う種族を推し量ったら人間は戦闘民族になってしまうぞ。
俺は、ポートネスの中で人間という種族がヤベー奴になりそうだなと思いつつ、今日の昼ごはんを確保してちょっと料理をするのが楽しみになるのであった。
この肉、美味しいかな?
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