頑張れデモット君‼︎


 ジークとエレノアが第四階層で大暴れし、何度も種を絶滅させていた頃。


 草食恐竜ダンジョンの第一階層では、二人の弟子となったデモットがレベル上げに勤しんでいた。


 ひょんな事から世界最強の人類達の弟子となり、教えを授けられる事となったデモット。


 悪魔の中でも異端中の異端児は、今日も魔物を相手に戦いを繰り広げる。


「貫け」

「キィィィィ!!」


 上級魔物ドラコレウスを相手に魔術を打ち込み、一撃で相手を素材へと変えるデモット。


 そして、その素材には目もくれず次の獲物を探しに向かった。


 デモットはジークやエレノア程魔力が多くないので、2人が使っている闇沼ダークマーシュを維持すると他の魔術を使いにくくなる。


 少し勿体ない気もしたが、レベルが上がればいつの日か使えるのようになるはずなので今は我慢の時だ。


「ふう。これで18体目。まだまだあの二人の速さにはついていけないね」

「........(あれは異常。僕達には無理)」

「レベル300を超えている人と、3桁も行かない俺じゃ比べ物にもならないけどね」


 デモットはそう言いながら、自分の分身とも言える分身悪魔と話す。


 分身悪魔は自分で考え、自分の意思を持っている。


 ジークから“コミュニケーションはちゃんと取っておいた方がいい”と言われていたデモットは、その教えの通り自分の分身とよく話すようにしていた。


 最初こそジェスチャーばかりで何を言っているのか分かりにくかったが、段々慣れてくると何が言いたいのかが分かってくる。


 今となっては、かなり普通に会話ができるようになっていた。


「今のレベルが43。2人に追いつくのはまだまだ先だね。それどころか、俺がヘマして死なないように護衛まで付けてくれているんだから」

「........(基本は手を出さないよ。頑張って)」


 ダンジョンでレベリングを始めるに当たって、ジークはデモットに悪魔の護衛を一人つけている。


 転移魔術や自らの身をしっかりと守れるだけの強さを持つまでは、悪魔君がデモットの保護者兼護衛をする事になっていた。


 折角仲良くなり、弟子にまでなったデモットがこんな所で死んでしまっては悲しい。


 基本は手を出さないが、万が一のために悪魔君を付けているのである。


「ありがとうございます。悪魔くんさん。すいません。俺なんかの為に」

「........(気にしてない。それに、主の数少ない弟子。何かあったら困る)」

「俺以外にも弟子が居るんですか?」


 デモットは悪魔君の言葉(ジェスチャー)に首を傾げる。


 ジークは、デモット以外に弟子がいるという話を1度もしたことは無い。


 別に隠している訳では無い。単純に言う機会がなかったから言ってないだけだ。


 特に問題があるとも思っていない。弟子が何人いようが、デモットが可愛いことには代わりないから。


 しかし、弟子であるデモットからすれば大きな問題だ。


 兄弟子がいる。


 自分が一番弟子だと思っていたデモットは、ちょっとだけショックを受けてしまった。


「........(一応弟子が居るね。とは言っても、ちょこっと基礎を教えただけだけど)」

「一応........って事は、本格的にこうして教えてもらった訳では無いという事ですか?」

「........(そうだね。教えた期間は僅か3日だったし、可愛がっては居たけどデモットみたいにここまで教えていた事は無いかな)」

「そうなんですね。弟子と言うよりかは、ちょっと戦い方を教えてあげた生徒みたいな感じですか?」

「........(そんな感じ。その子は主のことを“先生”と呼んでいたし、師匠と弟子と言うよりは、教師と生徒だったね)」

「へぇー、そんなんですか」


 デモットは普段通りのフリを装いながらも、心の中ではガッツポーズをする。


 デモットにとって、ジークとエレノアは絶対的な師匠であり憧れだ。


 二人と出会って二ヶ月弱。


 最初こそチンピラのような対応を取ったデモットにとって、二人の弟子と言うのは一種のステータスでありプライドなのである。


 兄弟子だろうが弟弟子だろうが、自分が1番可愛がられたい。


 そんなちょっとした独占欲が出てしまっているのである。


 他の悪魔が聞いたら笑うだろう。


 下等種族とも言われる人間に教えを乞うだけではなく、その心まで完全に屈した悪魔の恥だと。


 しかしデモットからすれば、今が何よりも大切で1番頑張らなければならない時である。


 デモットは知っているのだ。自分が楽しそうにレベルが上がったことを報告すると、二人の師匠は微笑ましそうに喜んでくれる事を。


 デモットは、その顔が見たくてレベル上げをしている節がある。


 たった一人で50年以上過ごしてきたぼっちの悪魔が、自分よりも強く可愛がってくれる人間に若干依存気味になってしまうのは仕方がない。


 そして、どの弟子よりも自分を見て欲しいと思ってしまうのも自然の道理と言えるだろう。


「よし、頑張るぞ!!」

「........(ファイト!!)」


 デモットは大きく拳を振り上げると、改めて自分が強くなることを決意する。


 動機はなんだっていい。むしろ、不純な方が頑張れる。


 デモットは“今日中にレベルをひとつ上げてやる”と心に決めると、ジークとエレノアに褒めてもらう為に魔物を探し始めるのであった。


「........(デモット、ちょっと可愛いかも。主やエレノア姐さんが気に入るのもわかる)」


 その後ろで護衛する悪魔君は、その様子を見て少し、いや、かなりホッコリしていた。




【ブラキオサウルス】

 体長(全長)は約25m、体高(頭頂高)は約16mに及び、近年まで最も背の高い恐竜とされていた。かつては「体重は80t(以上)と最も重い恐竜であり、その体重を支えるために池や湖など水の中で暮らした」と推測されたこともあったが、横隔膜を持っていなかったため水圧で肺が押し潰され、呼吸ができなくなるということが判明し、この説は否定された。竜脚類等の大型恐竜には鳥類がそなえるのと同じように気嚢によって体を軽くする仕組みがあったと考えられ、現在では23t程度という説もあり、大きく見積もっても50t程と推定されている。

 つまり、デカイ長い、カッコイイである(バカ)。




 人類大陸にある極東のとある島。そこにはジークとエレノアの生徒であるアーランと、元混沌たる帝カオスエンペラー幹部のリーシャがいた。


 今日の仕事を終え、宿でのんびりと過ごす二人。


 すると、急にアーランの体がブルっと震えて、窓の外を見る。


「........嫌な予感がする」

「どうした?」


 ミスリル級冒険者となったアーランとリーシャ。この二人の予感はよく当たる。


 リーシャは真剣な顔でアーランに聞き返した。


「私は何も感じないんだが........アーラン。何を感じたんだ?」

「先生達に新しい生徒ができた気がする。これは由々しき事態だよリーシャ!!」

「........は?」


 真面目な顔で訳の分からないことを言い出すアーランに、リーシャは思わず呆れ返る。


 先生と言えば、あの頭のイカれたオリハルコン級冒険者の2人だろう。


 その2人が新たな生徒を取ったとして、一体なんだと言うのだ。


「それだけ?警戒して損した........」

「僕にとっては大事件さ!!今すぐその生徒の顔を見に行こう!!僕の方が先生に可愛がられているということを証明しないと!!」

「アホかお前は。この国に来るのにどれだけ時間がかかったと思ってる。そんなアホな事を言う元気があるなら、仕事を増やすか?」

「リーシャは何も分かってないよ!!」

「私はお前のその思考が分からん。別に生徒が増えたからと言って、お前が生徒じゃ無くなる訳でもないだろうに」

「違わないけど違う!!」


 その後、アーランに色々と言われたリーシャだが“こいつ馬鹿だなー”としか思わずに、右から左へと聞き流すのであった。


 尚、そのアーランの演説に巻き込まれたクーちゃんは、途中から寝ていた。





 後書き。

 アーランのライバル、爆誕。でも、ぶっちゃけデモットがほぼ全て勝っている。

 読者人気でも可愛さでも。強さはまだアーランの方が上だけど(頭のおかしさも)。

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