草食恐竜ダンジョン第四階層
デモットと別行動でレベリングを始めてから2日後、俺達は毎日楽しそうに“レベルが上がった!!”と報告してきたり今日あった事を話してくれるデモットを微笑ましく思いながらも草食恐竜ダンジョン第四階層へと足を踏み入れた。
第三階層はトリケラトプスやその亜種の宝庫であり、区別するのが少し難しかった。
俺も別に恐竜博士では無いので、トリケラトプスの亜種の名前まで知っている訳では無い。
名前だけはちょっと知りたかったのでデモットを連れて第三階層に潜り、色々と教えてもらった。
デモット、やはり知識が凄いな。悪魔の中では常識なのかもしれないけど。
「予想通り、またしても森の中ね。しかも、どんどん木々の間隔が広くなっているわ」
「って事は、今度はさらに大きい魔物が出てくるってわけだ。ボス階層でも無さそうだし、これは期待できるぞ」
「ふふっ、そうね。遂に絶望級魔物が溢れる階層を見つけたかもしれないわ」
上級、最上級、破滅級と来れば、次にやってくるのは絶望級。
ダンジョンもまさかここで、破滅級魔物をもう一度挟んでくるなんてことはしないだろう。
もしそんなことをした日には、ぶっ壊すからな。
そんな悪ノリ要らんねん。普通に空気を読んでどうぞ。
いつもの如く、黒鳥ちゃんを放って適当に階層を散策を始める俺達。
どんな魔物が出てくるのかなと思ったその瞬間、地面を揺らすほどの足音が森の中に響き渡る。
ドシン、ドシン。と。
「とんでもなくデカイ魔物が歩いてんのか?足音がここまで聞こえるぞ」
「体重もとんでもなくありそうね。あちこちから音が反響して、どこにいるのか分からないわ」
「少なくとも俺達の警戒区域には入ってきてない。歩くだけで足音が鳴り響く魔物なんだから、空から普通に見つけられそうだよな」
「そうね。ちょっと飛んでみましょうか」
足音の主を探すため、魔術を使って空を飛ぶ俺とエレノア。
そして、俺達は見た。
草食恐竜最強とも言われる質量の暴力を持ったバカでかい首長竜。
あのブラックドラゴンよりも大きく、全長約25m。体重50トンと言う規格外の化け物。
「な、何あれ........」
「ブラキオサウルスだ。すげぇ」
ブラキオサウルスが見えた。
しかも、あまりにも大きすぎるために、頭が飛び出ていてどこにいるのか把握するのがとても簡単。
ぱっと見える範囲だけでも100体以上も存在している。
いつかは出てくるだろうとは思っていたが、ここで出てきたかブラキオサウルス。
その大きさは人をありのように踏み潰せるほどに大きく、どうやってあの恐竜時代を生きていたのか不思議でならないほどの大きさ。
かつてはその巨体を支えるために水中生活していたのではないかと言われていたが、横隔膜を持っていなかった為説が否定。
近年まで地上で最も背の高い生物として、語り継がれていた恐竜である。
あの動物園で見るクソでかい象ですら、体長3~5m程度だからな。その5倍近くもあるとなれば、その想像し難い大きさも何となく分かるだろう。
「ブラックドラゴンよりも大きいわ。こんな魔物が世界にはいるのね」
「人間なんてそこら辺の草と変わらないだろうな。と言うか、魔界にはこんなやつも住んでんのか?街に来たら歩くだけで踏み潰されるだろこれ」
「間違いなく踏み潰されるでしょうね。圧倒的な質量を前に、なす術もなく死んでしまうわ。大きい魔物は動きがゆっくりに見えても、かなり早いから逃げることも難しそうね」
「確かに。悪魔からしたら相当厄介だろうな。俺達はそんな魔物を狩ろうとしている訳だが」
俺はそう言いながら、早速1番近いブラキオサウルスに向かって魔術を行使する。
第九級白魔術“
圧倒的な質量だろうがなんだろうが、関係ない。一撃で全部吹っ飛ばしてやるよ!!
天に現るは天使の輪。四つに重なりその一撃は天使の奏でる不協和音。
「消し飛べ」
キィィィィン!!と、黒板を爪で引っ掻いたような不愉快な音が鳴り響き、ブラキオサウルスを白い光が包み込む。
さて、これで倒せるといいが果たしてどうかな?
相手は推定絶望級魔物。ただし、ブラックドラゴン程大きな力の圧は感じない。
一撃で死んでくれるとその後の狩りも楽になるんだけどなぁと思ったが、どうやら現実はそこまで甘くないらしい。
光の中、高速で横切る一筋の黒い線。
俺はその線に反応して、反射的に防御魔術を展開する。
第九級白魔術“
物理、魔法、共に優れた防御魔術がその一瞬ブレた何かを防いだ。
「反撃してきたな。一撃で殺せなかった」
「魔術耐性が高いのかしらね?それとも、白魔術に対しての耐性が高いのかしら?」
「狩りをする前に色々と実験してみる必要がありそうだ。だが、ブラックドラゴンよりは耐性が低いな。全身ズタボロだ」
「今の攻撃は尻尾を高速で振ったことによる衝撃波かしらね?」
「多分そうだろうな。この距離じゃ、直接殴るのは難しいし」
光が切り裂かれ、そこから現れたのは全身がボロボロとなったブラキオサウルス。
ブラックドラゴンよりは弱いが、それでも俺の一撃を耐えるとはかなり耐久力が高い。
やはり、このレベルの魔物を相手に余裕を持って一撃で倒せるようになる為には、第十級魔術を使えるようにならないとダメそうだな。
未だに至ることの出来ない第十級魔術。出来ればこの魔界で習得したいものだ。
あちこちが削られ、血を流すブラキオサウルスは、今にも死にそうになりながらも決死の反撃を仕掛けてきた。
こちらを見ながら、口を大きく開けるブラキオサウルス。
その口に魔力が集約しているのが、見てわかる。
「ブレスか。あれを撃たれると面倒だ」
俺は呟くと、ブラキオサウルスがブレスを放つよりも先にもう一度天輪を放つ。
タメの必要なブレスと、ほぼノータイムで撃てる天輪。
早撃ち勝負をしたら、間違いなく俺の方が勝つに決まっている。むしろ、勝てない要素がない。
こういう時のために、無詠唱で魔術を使える練習をしてんだからな。
無詠唱、こそ最強。対人戦、対魔物戦両方における、最強のにして最も基礎的な要素だ。
天の裁きに耐えたはずのブラキオサウルス。しかし、天の裁きから逃れることは許されない。
再び不協和音の中に飲み込まれたブラキオサウルスは、今度こそ消滅しその場に素材を残して経験値となってしまった。
お、レベルが上がった。これでレベルは303。放置ゲーのかいもあってか、今回は少し上がるスピードが早かったな。
「レベルが上がったのかしら?」
「上がったな。暫くはいい狩場になってくれそうだ」
「ふふっ、私もそろそろレベル300になりそうだし、頑張らないといけないわね。ところで、あの首長の魔物の素材は何なのかしら?」
エレノアはそう言うと、素材を探しに地面におりていく。
多分、お肉が落ちてないか気になってるんだろうな。
恐竜の肉はエレノアの口に会うのか、結構エレノアが気に入って食べている。
腐るほど在庫がある中で、恐竜の肉を食べるものだから俺の影の中は今肉で埋め尽くされてしまっているよ。
結構冒険者ギルドで売り払ったはずなのに、まだどんどんと溜まり始めてるからな。
パーティーでもかなりの量を使ったはずなのにどうして溜まる一方なんだ。いや、俺達が狩りをしまくるから溜まるのは仕方がないんだけどさ。
「あ、お肉もあるわ。それと、皮と骨ね。一体どこの骨なのかしら?」
「この大きさなら首の骨か?流石にそこまでは分からんから、適当に言ったけど」
「デモットに聞けば分かるのかしら?」
「無理じゃないかな。デモットは確かに博識だけどなんでも知ってるわけじゃないんだぞ」
こうして、俺達は絶望級魔物が沢山狩れる素晴らしい狩場を見つけてしまったのであった。
レベリングが捗るぞー!!
後書き。
ダンジョン君。ジーク達に玩具を与えてしまう。
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