悪魔の弟子
最上級魔物アンキロルスに何とか勝利したデモットは、達成感溢れる表情でニッと爽やかな笑顔を浮かべていた。
今回も少し苦しい戦いではあったが、最上級魔物に二回も勝ち越し。デモットは既に、人間基準で言うオリハルコン級冒険者の強さに匹敵すると言っても過言では無い。
魔術を教え、戦い方を教えてから僅か一ヶ月ちょいでここまで成長してしまうとは。デモットが凄いのか、それとも悪魔という種族の上がり幅が大きいのか。
まだまだ俺たちの足元には及ばないが、弱めの準男爵級悪魔相手ならば勝ててしまうだろう。
もういっその事、デモットを本気で育てて悪魔の王にでもしてみようかな。
そしたら、事実上魔界は俺達のもんだ。その気になれば、不労所得がいっぱい入ってくるぞ!!
........いや、隠居した後とかに喧嘩を売られそうだから辞めておこう。流石に隠居したあとはゆっくりしたいし。
「よく頑張ったわね。中々いい戦いだったわ」
「魔術を覚えてからの成長が著しいな。後、エレノアにタコられてるのもいい経験になってそうだ」
「そんなにボコボコにしてないわよ。軽く撫でてるぐらいよ。ね?デモット」
「あ、あはは。ソウデスネ」
デモット、目が笑ってないぞ。
オリハルコン級冒険者に近い実力を手にしつつあるとはいえど、デモットはまだまだ弱い。
悪魔君には勝てないし、近接戦でエレノアに敵う筈もないのだ。
デモットの本気のパンチを、エレノアは人差し指一本で止めるからな。
ラスボスか何かかな?
そして、エレノアの攻撃方法はデコピン。
小さな隙を潰すように、ダメな場所があるとその部分を正確にデコピンで弾く。
レベル300に近いエレノアのデコピンは、ちょっと力を入れるだけでそこら辺の魔物が吹き飛ぶ。
流石にデモットの腕が吹っ飛ぶなんてことは無いが、結構痛いらしい。
魔術は俺が教え、格闘はエレノアが教える。
デモットも強くなる気があるから、必死に食らいついてきてくれるし教えていて楽しいよな。
「最上級魔物程度の魔物が倒せるようになったって事は、準男爵級悪魔ぐらいの強さはあるのかもな。あとは単純にレベルの問題か。レベルを上げつつ、もっと高みを目指せばデモットはさらに強くなれるぞ」
「そうね。結局はレベルが全ての世界だものね。ちょうどいいし、ここでレベリングをしたらどう?」
「それはいいな。これを機に、デモットにもレベリングの楽しさを味わってもらうか」
「まとめ狩りの爽快感はすごいわよ。迫り来る魔物達を一撃で全て弾き飛ばした時が、1番爽快だわ」
「レベル上げですか........」
俺達がレベル上げを進めてみるも、あまり乗り気ではなさそうなデモット。
どうした?レベル上げが面倒だと思うタイプか?
大丈夫。慣れれば心を無にしてレベリングできるよ。どうしてもつまらなかったら、闇狼や分身君と話しながらでもいい。
どうせレベル差がありすぎて俺達とは狩場も被らないしな。せっかくダンジョンが大量の経験値を用意してるんだから、有効的(友好的)に使わなきゃ!!
「乗り気じゃなさそうだな」
「あ、いえ。レベル上げ自体はやってみたいですけど、お二人の案内が出来なくなるじゃないですか」
なんだ、そんなことを気にしていたのか。
もう知りたいことは大抵知れたし、魔物の情報は少し欲しいけどこのダンジョンは恐竜ばかりだろうからそこまで困ることは無い。
完全初見殺しの魔物が出てくるなら別だが、それでも本能的にヤバいかどうかは判断できるしな。
俺とエレノアは既にデモットは弟子にして弟分の、魔界攻略パーティーメンバーみたいな感じで居たが、デモットは俺達と出会った最初の印象が強すぎるのかもしれん。
人の印象って第一印象が七割とか言うしな。仕方ないと言えば仕方がない。
俺は、下を向くデモットの方に手を置くと、ニッと笑う。
大丈夫、お前はもう身内だよ。じゃなきゃ知りたい情報を知った時点で殺してる。
最初こそ馬鹿な悪魔かと思ったが、意外と博識で礼儀正しくそして素直で真っ直ぐな性格をしているのだ。
意外とノリもいいし、空気も読める。
そんなやつを俺とエレノアが気に入らないわけが無い。
「安心しろデモット。お前はもう案内人じゃない。弟子みたいなもんだ。やりたいこたがあったら、そっちを優先してもいいんだぞ。俺たちのレベル上げに支障が出ない程度には手を貸してやる」
「そうね。前にも言ったけど、今更あなたを殺す気にはならないわよ。貴方はもう、案内人じゃないわ」
「弟子........?俺、ジークさんとエレノアさんの弟子なんですか?」
どこか不安そうに、そして何かその言葉が欲しそうに俺たちを見るデモット。
その表情を見て“え?弟子じゃないけど”と言うほど俺達も馬鹿じゃなければ、空気の読めないアホじゃない。
それに、弟子だと思っているのは事実だしな。
「もちろん、俺達の弟子だよ。最初は悪魔が魔術を使えるかどうかの実験をする為だけに魔術を教えていたりもしたが、今じゃデモットが強くなって欲しいと思って教えてるしな」
「私もね。悪魔の限界を見せて頂戴デモット。貴方が何処まで強くなれるのか、とっても楽しみだわ」
「そうですか........弟子。弟子........」
“弟子”と言う言葉を何度も小さく繰り返すデモット。
そんなに弟子にして欲しかったのか?そりゃ悪魔の中でも変わり者と言われるわけだ。
人間に教えを乞う悪魔なんて聞いたことがない。最初は半強制的にやらせていたけども。
「俺はジークさんとエレノアさんの弟子。デモット........なんか語呂が悪いですね」
「........名乗りでも考えてるの?」
「名乗りは大事ですよ。あ、そうだ。お2人に言い忘れてましたが、悪魔の名乗りを最後まで聞かずに攻撃するのはマナー違反です。悪魔はその名前を大切にし、相手に名乗る風習があるんですよ」
いや、俺もエレノアも悪魔じゃないし。
と言うか、そんなに悪魔にとって名前って大事なものなのか。
俺はあまり気にしたことがないんだけどな。
「ルールでは無いんだろ?」
「ルールではなくとも、マナーです。ちゃんと聞いてあげてください。名乗りが終わった瞬間ぶち殺すのは問題ないですから」
普段全く意見をしないデモットが滅茶苦茶真剣な顔で“名乗りは聞いてやれ”と言ってくる。
ま、まぁ。漫画やアニメでの覚醒シーンや変身シーンでは攻撃しないのがお約束だもんな。
そこで殴ってたら確かに“なんだこいつ空気読めねぇな”とはなるか。
今度から余裕がある時は聞いてあげよう。ただし、街そのものを一撃で滅ぼす場合は却下で。
名乗りたければ、最初の一撃を耐えてどうぞ。
「わかった。デモットがそう言うならそうするよ。ただし、最初の一撃をきっちり耐えられた奴だけだけどな」
「そうね。街を滅ぼす時に毎回出てくるのを待つのは効率が悪いしダルいわ」
「それでいいですよ。せめてチャンスはあげてください」
デモットはちょっと不満そうにしながらも、そこが落とし所だろうという事で折れてくれる。
俺達の性格をよくわかってるじゃないか。さすがは弟子である。
「それで、名前はどうするの?」
「天炎魔の弟子とかでいいんじゃないか?俺達が纏めて呼ばれる時はそう言う呼ばれ方をするしな」
「確かにそれでいいわね」
「天炎魔?なんですかそれ」
「オリハルコン級冒険者にもなると、二つ名が付けられるんだよ。その冒険者の特徴を表した名前がな。俺が天魔で、エレノアは炎魔って呼ばれてるんだ」
「何それカッケー!!俺もそんな二つ名が欲しい!!」
素で反応しないでくれよ。今でこそ慣れたけど、この名前をつけられた当時はかなりムズ痒かったんだぞ。
デモット、お前結構厨二病患者だな。やっぱり魔力が闇だからか?
俺はそんなことを考えながら、正式に弟子となったデモットがどこまで強くなれるのか少し楽しみに思うのであった。
後書き。
デモット、正式に弟子になる。
悪魔(ジーク達)の弟子なのか、悪魔の弟子(デモット)なのか......
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