天炎魔vs子爵級悪魔×2


 邪悪なる気配を感じた俺達は、慌ててベッドから起き上がるとその気配がする場所へと急行した。


 大きな気配が突如として出てきただけではなく、その気配に邪悪さも混ざっているとなれば俺達も動かざるを得ない。


 師匠のように頭のおかしな存在ならまだいいが、この国を滅ぼす存在が急に現れても困るのだ。


 あの街には世話になった人が多く存在しており、出来れば死んで欲しくはない。


 それに、俺達はオリハルコン級冒険者。人々の安寧を守るのが、俺たちの仕事でもある。


「........なんだあれ」

「翼が生え、頭には2本の角。物語で見たことがあるわ。あれは悪魔よ」


 竜のダンジョンからさらに北側に離れ、ゴツゴツとした岩が散漫する崖の向こう側。


 そこには漆黒の翼を持ち、2本の角を生やした、人型の悪魔が空に浮かんでいた。


 俺が作った悪魔くんとは違い、ちゃんと物語に出てきそうな邪悪な気配を纏った悪魔だ。


 それも二体。


 全く可愛くなければ、仲良くできる気がしない。


 そういえば、少し前にもジュラール帝国に悪魔が出現したな。気配を少しだけ感じた気がするが、あれとは比べ物にならない程の圧を感じる。


「ふむ。呼び出されてみれば下等種族が住む場所か」

「む?貴様も呼び出された口か。我らを呼び出すとは、とんだ無礼者がいたものだ」

「全くだ。そして、この私の姿を見て頭を垂れぬとは無礼千万。死に値する」


 1人の悪魔が態々俺たちに聞こえるようにそう言うと、指先から漆黒の光線を放って俺達を貫こうとする。


 俺は、第七級土魔術堅牢なる盾ファランクスを行使すると、その一撃を防いだ。


 気配的に、堕落した精霊(大)より少し強い程度か?ギリ絶望級魔物と同じぐらいの強さがありそうだな。


「ほう?防いだか。何者だ人間」

「それはこっちのセリフだ。急に現れたかと思えば、殺しに来やがって。何者なんだ?」

「我は子爵級悪魔ボルセル。そこにある裂け目に呼ばれてここへ来た」

「私は子爵級悪魔デルゲン。同じく、そこにある裂け目に呼ばれてこの地へと来た。さぁ、私は名乗ったぞ?貴様らは何者だ?」


 あ、ちゃんと答えてくれるんだ。


 話はできるけど仲良くはできないタイプっぽいな。俺はそんなことを思いながら、静かに戦闘の準備だけはしておく。


 エレノアも影の中からトンファーを取り出していた。


「オリハルコン級冒険者“天魔”」

「同じく、オリハルコン級冒険者“炎魔”よ」

「オリハルコン級冒険者........あぁ、確か、下等種族の中で最も強いと呼ばれる存在がそのような地位を持っていたな。では、貴様らを殺せばこの大陸は終わるわけだ」

「できるもんならやってみろ。人類を甘く見るなよ悪魔風情が」


 俺がそう言うと同時に、戦闘が始まる。


 先制攻撃を仕掛けてきたデルケンという悪魔は、バッ!!と翼を広げると黒い弾丸の雨を振らせてくる。


 闇弾ダークバレットか?いや、魔術にしては魔力の動き方が違うように見える。


 となると、別の法則で動く何かか。


 ドラゴンが魔術を必要とせずに口から火を噴くように、悪魔にも何らかの能力が最初から備わっているのかもしれない。


 俺は悪魔の攻撃を先程と同じく堅牢なる盾ファランクスで防御。そして、天への門を開いた。


「開け天門」

「む?!」


 天から開かれるは楽園への階段。


 天へと誘う白き手が、悪魔を捕らえようと襲いかかる。


 さすがの悪魔もこれはまずいと思ったのだろう。悪魔は翼をはためかせると術者である俺に向かって突っ込んできた。


 魔術はその術者が殺されれば魔力の供給が途絶えて消滅する。


 この悪魔は、それを理解しこの手からは逃れられないと理解した上で俺に襲いかかってきたのだ。


「ヌゥゥゥゥゥン!!」

「聖なる盾よ」


 また何かを使ったのか、黒い魔力を腕に纏わせて強引に殴ってくる。


 俺は第九級白魔術堅牢なる聖盾ホーリーファランクスでそのパンチをガードすると、悪魔の顔面に向かって同じく第九級白魔術聖なる一閃ホーリーバーストを行使。


 悪魔はギリギリでその攻撃を避けたが、僅かに頬を掠めた。


「悪魔の血も赤いんだな」

「このッ下等種族が........!!」


 怒りに満ちた悪魔はもう一度殴りかかろうとしてくるが、それは白き手が許さない。


「チッ!!」


 悪魔は白い手が迫っていることを察知すると、手から逃げるように空へと飛び立つ。


 本当なら天輪でも撃って終わりにしたいのだが、ここは割と街から近く俺の魔術で周囲へ被害を出すことになってしまう。


 やっぱり、ダンジョンこそ正義だ。周囲への被害などお構い無しに暴れられるんだから。


「貫け」

「グッ?!」


 俺は戦うならやっぱりダンジョンしか勝たんと思いつつ、聖なる一閃を乱射しまくる。


 悪魔は白い手に追われながらもかなり上手く攻撃を避け続けていたが、遂に大きく広げていた翼を貫かれて一瞬動きが鈍ってしまった。


 それと同時に、白い手が悪魔を捕まえる。


 さて。悪魔はこの手を引きちぎれるのかな?


「クッ!!なんだこれは!!」

「天へと誘う手だよ。良かったな悪魔。あの世は地獄じゃなくて天国かもしれないぜ?」

「グゥゥゥゥゥ!!吹き飛べ!!」


 悪魔は白い手から逃れようと黒い弾丸を撃ったり槍を放ったりするのだが、圧倒的に数が足りない。


 物量勝負なら負ける気は無いし、何より白い手に意識外向きすぎていて俺の事を完全に視界から外してしまっている。


 ダメだよ。戦闘では常に相手のことを見ておかなきゃ。


「貫け」


 俺は再び聖なる一閃を行使。白い手に意識を割いていた悪魔はこの一撃に反応ができず、頭を撃ち抜かれた。


「........!!」

「まぁ、強かったけど所詮はこんなもんだよな。だって堕落した精霊より少し強い程度だし」


 抵抗が無くなった悪魔達に白の手が群がり、天への門へと連れ込んでいく。


 そして門が閉じると悪魔は消滅してしまった。


 お?レベルが上がったな。


 前にレベルが上がった時からそれほど経っていないのにレベルが上がったぞ?


「グゥ!!」

「中々頑丈ね。殴りがいがあるけど、そろそろ終わらせるわよ」


 もう1人の悪魔と戦っていたエレノアの方も終わりそうだな。終始素早い動きで悪魔の行動を潰しつつ、的確に急所を殴っていたし。


 強いと言えば確かに強いが、今の俺達の敵ではない。


 エレノアは自身の魔力を最大限トンファーに乗せると、思いっきり拳を振り抜いた。


「シッ!!」


 パァン!!


 アッパー気味に放たれた一撃は悪魔の頭を破裂させ、振り抜いた拳によって巻き上がった風が髪を揺らす。


 今日は新月。月が見えない日。


 僅かな星あかりの中でも、その血は美しく舞い散る。


 そして、頭を吹っ飛ばされた悪魔はピクピクとしなが、塵となって消えていった。


 あんなん食らったら俺でも普通に死にそうだな。エレノアの本気のパンチを喰らうのは絶対に避けなければ。


「寝る前の運動にしては激しすぎたわね。軽く汗をかいたわ」

「温泉に入るか?いや、その前にこの悪魔達がどうやってこの場所にやってきたのかを探らないとか」

「確か、呼ばれたとか言っていたわね」


 悪魔がの存在云々は一旦置いておくとして、問題は彼らがどこからやってきたのか。


 近くに大きな魔力を感じる場所がある。先ずはそこに行ってみよう。


 今は2体しか出てこなかったから良かったものの、さらに溢れてくるような事があれば街への被害は計り知れない。


「子爵級悪魔って言ってたよな?貴族の階級と同じなのか?」

「だとしたら、かなり下の方の悪魔になるかもしれないわね。国によって違うけれど、準男爵、男爵、子爵の順番だったはずよ。騎士爵なんかもあるかもしれないわ」


 下から三番目辺りの弱さで絶望級魔物レベルの強さがあるのか。


 俺は悪魔達が本格的に攻め込んできたら不味いなと思いつつ、魔力の反応がある場所へと向かうのだった。

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