愉快な公爵家


 顔面偏差値がバグりすぎて、居心地が悪くなるほどにはキラキラと輝くお袋の実家アルテル公爵家。


 神とは実に不平等な存在だと言うことが思い知らされつつも、俺とエレノアはアルテル公爵家から手厚い歓迎をされていた。


「ふふふっ、私もおばさんか。少し寂しい気もするが、こんなにも可愛い姪っ子と甥っ子が出来たとなれば仕方がないな」

「そうだよね。ジークちゃんもエレノアちゃんも可愛いよ。シャルルちゃんの血を受け継いでいるだけはあるねー」


 お袋が家に帰って来たというとこで宴会の準備を待っている間、俺とエレノアはガルエル叔母さんとフラン叔母さんにこれでもかという程可愛がられていた。


 背の高いガルエル叔母さんの膝の上に座らせれて頭を撫でられる俺と、後ろから抱きつかれてナデナデされ続けるエレノア。


 俺もエレノアも可愛がられることに慣れているから既に諦めているが、だとしても可愛がりすぎである。


 お袋がエレノアを可愛がる理由が分かった気がする。


 この人達の血を受け継いでいるのだから、そりゃエレノアを可愛がるわけだよ。


 しかも、お袋は末っ子。常に可愛がられる立場にあったことを考えると、エレノアの様な子を一度でもいいから可愛がってみたかったのかもしれない。


 試しに可愛がってみたら、本当に愛しくなっちゃったみたいな。


 エレノアは確かに俺と旅をするためだけに人としての限界を超えてしまう少しおかしい存在だが、話すと割と普通だし可愛いところも多いしな。


「それにしても、2人とも強いな。私よりも強いことがハッキリとわかる。この国では私もそれなりに強い方なのだが........」

「オリハルコン級冒険者らしいよ。ほら、ココ最近新しくオリハルコン級冒険者が二人入ったって話があったじゃん。多分、ジークちゃんとエレノアちゃんの事だったんじゃない?」

「ほう。それは凄いな。どちらが“天魔”でどちらが“炎魔”なのだ?」

「俺が天魔で」

「私が炎魔です」


 ガルエル叔母さんは俺達の強さを正確に測り取ったのか、自分よりも強いことを理解していた。


 ガルエル叔母さんもかなり強い方だと思うけどね。


 金級冒険者からガクッと人が少なくなるこの世界で、ミスリルからアダマンタイト級冒険者並の強さを感じるし。


 でも、今まで見てきたアダマンタイト級冒険者よりは弱く、ミスリル冒険者よりは強いから、下位のアダマンタイト級冒険者って言った方が正確かもしれんな。


「1度手合わせ願いたいものだ。私の実力がオリハルコン級冒険者とどれほど違うのか、その身を持って確かめてみたい」

「ダメだよガルエルお姉様。この前、結婚を申し込みに来た人をボコボコにした挙句、訓練場の壁を壊してお父様に怒られたじゃない」

「分かっているさ。と言うか、あれは自分の実力を勘違いして私に擦り寄ってきたあの男が悪い。私よりも強い者でなければ結婚はしないと言っているのに、なぜ金級程度の実力で行けると思ってたんだか」

「ガルエル叔母さんは自分より強い人じゃないと結婚しないの?」

「する気がないな」

「こう見えてもガルエルお姉様はかなりの乙女でね?白馬に乗った王子様に守ってもらいたいんだよー。可愛いでしょう?」

「フラン!!それを言うな!!」


 声を荒らげるガルエル叔母さんは、顔を真っ赤にしながらフラン叔母さんの耳を引っ張る。


 フラン叔母さんは“痛た”と言いながらも、全く反省する様子もなく話を続けた。


「昔、皇太子殿下から求婚されたこともあったんだけどね?この人、皇太子をボッコボコにして“私より強くなってから出直してこい”と言い放ったんだよ。凄いでしょ」

「........私の記憶が確かならば、皇太子はその国の王の子供にして継承権一位の方ですよね?そんな人に結婚を申し込まれたというのに、ボコボコにして婚約を拒否するとは他の国なら幾ら公爵家と言えど打首ですよ」

「ガルエル叔母さん、かなりやんちゃなんだね........ガルエル叔母さんより強いひとなんてそうそう居ないのに」

「お陰で未だに独身なんだよ。ジークちゃんが貰ってくれる?」


 おい。仮にも甥っ子に対してとんでもない提案をするんじゃない。


 それと、未だに独身なのはあんたもだろフラン叔母さん。


 それにしても、ぶっ飛んでんな俺の叔母は。


 この国の皇太子を殴り飛ばした挙句“出直してこい”と言い放つとは。


 俺は首を横に降ると、キッパリと断る。俺には相棒がいるんで間に合ってます。後、絶対荷が重いので勘弁してください。貴族になる気もないし。


「悪いけど遠慮しておくよ」

「当たり前だ。甥っ子になんて提案をするんだこの妹は。大体、独身なのはお前もだろ」

「私の恋人はこの家の庭だもの。愛情を込めてしっかりとお世話してあげてるんだよ?もはやこれこそが真の愛の形だよ!!」


 この人もこの人で何を言っているんだ?


 あれか。人に興奮しないタイプの人間か。庭に愛情込めていたら、その愛が大きくなりすぎてしまった感じの人か。


 やはりフラン叔母さんのキャラが濃すぎる。そりゃ、結婚できないわけだし、祖父母も頭を抱えたくなるわけだ。


 お袋が俺を産まなかったら、未だに祖父母は孫の顔を見れてないんだろうな。


「ジーク、エレノア、このバカは放っておけ。暇さえあれば庭の手入れをして、そのこだわりの強さから手伝いの人を辞めさせてしまうほどだ。後、庭は間違っても壊すなよ?フランが烈火の如く怒って止めようがない」

「流石にそんなことはしないよ。フラン叔母さんを怒らせたくは無いしね。そういえば、リルト叔父さんはいつ返ってくるの?」

「もう少ししたら帰ってくるはずだ。アイツは見た目こそ弱々しいが、この家の当主になるために頑張っている真面目な子でな。良ければ仲良くしてやってくれ」


 お母さんかな?


 リルト叔父さんの話をするガルエル叔母さんの声が、完全に我が子に向けるそれだ。


 リルト叔父さんもリルト叔父さんで苦労してそうだよな。こんなに愉快な家で、唯一の息子となれば期待も大きくのしかかる。


 早く会ってみたいものだ。一体どんな人なのだろうか?


「夕食の時には会えるはずだよ。きっとジークちゃんとエレノアちゃんの事をすごく可愛がってくれるはず。妹のシャルルちゃんの事を1番可愛がっていたのはリルトだもんね」

「私達がリルトを可愛がりすぎたせいか、リルトも誰かを可愛がりたかったのかもしれんな。お陰でリルトはシャルルに甘すぎる。シャルルが欲しい物があった時は、大抵リルトに買わせていたよ。リルトもシャルルのお願い事は全て聞いていたし叶えていたからな。冒険者になると言い出した時は流石に止めていたが」

「そういえば、結婚した報告を受けとった時もシャルルのお相手さんを見定めに行く!!とか言い出して家を飛び出そうとしていたよね。リルトはシャルルちゃんのことが好きすぎるよ」

「だから結婚相手を探すのも苦労したんだろうな。全ての基準がシャルルだから」


 あれ。叔父さんがもしかして一番ヤバイやつなのでは?


 お袋を1番可愛がっていたというリルト叔父さん。


 お袋が結婚したと知ると、家を飛び出してでも親父の顔を見に行こうとするぐらいだし相当お袋のことを可愛がっていそうだ。


 俺は、この家でお袋がどんな生活をしていたのか気になり、少し聞いてみる事にした。


「母さんはどんな人だったの?」

「シャルルか?シャルルはいい子だった。魔術や冒険が好きで、よく両親を困らせてはいたが元気で明るい子だったよ。流石に冒険者になると言った時は止まられていたがな」

「シャルルちゃん、すっごく可愛いんだよー!!初めて魔術ができた時なんて“フランお姉様!!見て!!”ってはしゃぎながら見せてくれたっけ。あの顔は忘れられないなー」


 こうして、食事の準備が終わるまで俺とエレノアはお袋がこの屋敷でどんな生活をしていたのか色々と聞いてみるのであった。


 結論。多分、お袋がこの家の中では1番まとも。話が美化されていなければ。



 後書き。

 皇太子君はすでに結婚(婚期が遅すぎて政略結婚)して王様になってます。なお、未練タラタラの模様で、死ぬ気で鍛えてる。残念ながら、弱いけど。頑張れ皇太子君‼︎この国の王族は多重婚OKだぞ‼︎

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