初見だけ強くて攻略法が分かると弱い


 かつて数多の国を滅ぼし甚大なる被害を生み出した絶望級魔物“ブラックドラゴン”を討伐してから四日後。


 俺とエレノアは、再びこの闘技場の地に足を踏み入れていた。


 師匠レベルの強さを誇るブラックドラゴンだが、俺たちが苦戦した原因はブラックドラゴンに対して有効的な攻撃手段を持っていなかった事。


 特に、第九級魔術すらも弾くあの鱗がかなり悪さをしていたので、そのウロコすらも貫通する攻撃手段を獲得する事を考えていたのだ。


「さて、実験台となってくれたアースドラゴンには効果バツグンだったけど、ブラックドラゴン相手には効くかな?少し心配だな」

「効かなかったらまたジリ貧の勝負に持ち込まれるわね。特別厄介な攻撃とかは持たない代わりに、単純な体の強さだけで勝負してくる辺りブラックドラゴンの強さが垣間見えるわ。単純な“力”と言う点では私達や師匠よりも強いと思うわよ」

「だよな。一応、この一週間でさらにレベルもあげたけど不安だぜ」


 星々が見下ろす円形闘技場。そこには、以前と同じくブラックドラゴンが静かに眠っている。


 初めてブラックドラゴンと戦った時のレベルは234。絶望級魔物であるポセド君を毎日欠かさずリスキルしながら、破滅級魔物のドラゴンを殲滅しまくった事で一ヶ月半ぐらいでここまでレベルを上げた。


 そして、今のレベルは242。ブラックドラゴンの経験値は滅茶苦茶美味しかったようで、2人で倒した時でもレベルが5も上がったのだ。


 最近は絶望級魔物を倒してもレベルが二つ三つ上がることが減ってきた上でこの経験値量なのだから、ブラックドラゴンの強さがどれほどの物なのかよく分かる。


 エレノアのレベルも237にまで上がり、ここに来てレベルのインフレが始まっていた。


 多分300を超えるまでは順調に進むんじゃないかな。またどこかで停滞期間がやってきて、しばらくしたらフィーバータイムがやって来ると俺は思っている。


 と言うか、ポセドとブラックドラゴンの間にこれほどにまで経験値に差があると考えると、絶望級魔物の強さの振れ幅はものすごく大きいんだろうな。


 前にも思っていたことだが、多分レベル差100とかは余裕であるだろう。だってブラックドラゴンって別に竜種の中では最強という訳では無いのだから。


 ジークフリードの話が本当であれば、竜種最強は“竜神”と呼ばれるドラゴン。どれほど強いのかは想像が付かないが、おとぎ話によれば1歩大地を歩くだけで大陸の形が変わるだのなんだの書いてあった。


 全力を出してもこの闘技場の形すら変えられないブラックドラゴンなんざ、赤子扱いされているかもしれないな。


 そう考えると、このブラックドラゴンに苦戦していた俺達もまだまだこの世界の基準では弱いのかもしれない。


「それじゃ、第二回戦と行きますか。この日の為に開発した対ブラックドラゴン用の魔術で目を覚まさせてやろう」

「私は待機しておくわ。ひとりで倒せそうなら倒しちゃっていいわよ。無理そうなら手を貸すわね」

「頼むよエレノア。とは言えど、鱗さえ何とか出来れば何とかなるはずだ。要は、鱗を無視した攻撃が出来ればそれで勝てる。タフなことに変わりは無いけどな」


 俺はそう言いつつ、魔術の準備に入る。


 魔力が高まった瞬間にブラックドラゴンは目を覚まし、ゆっくりと体を起こした。


 さぁ、ブラックドラゴン。朝一番の超振動でその眠った脳みそを揺らしてやるよ!!


「震えろ“崩壊振動衝撃波バウンドクラッシュ”」


 特大の魔法陣から放たれたのは、魔力による衝撃波。


 目には見えない超振動がブラックドラゴンの全身を襲い、強靭な肉体そのものを揺さぶって内部を攻撃していく。


 第九級無魔術“崩壊振動衝撃波バウンドクラッシュ”。


 魔力によって作り出された振動を相手の内部に浸透させ、体の内部を破壊する魔術だ。


 今まで作ってきた魔術は相手の外部から強引に防御力ごと破壊する魔術が多かったが、今回はあの鱗が全てを弾いてしまうので内部に振動を届ける事によって相手を攻撃を攻撃する手段を作ったのである。


 現代でも使われる非殺傷兵器である“音響兵器”。


 音の振動によって相手の脳を揺らし気分を悪くさせたり、単純にうるさい音で相手の戦意を削ぐ兵器を参考に作った魔術。


 俺の作った方はゴリゴリに相手を殺す為に作られているので、人に向けて使ったら一瞬で死ねるけどね。


 実験台になってくれたアースドラゴン君はわずか1秒未満で死んでしまったし。


 そんな超振動による攻撃はブラックドラゴンに効果的なのか。


 最悪またジリ貧戦闘をする事になるかもしれないと思っていると、起き上がったブラックドラゴンはその場から1歩も動けずただひたすらに振動に耐えているだけであった。


「グガァァァァ........」

「おー、滅茶苦茶効いてるな。あのブラックドラゴンが1歩も動けてない。振動に耐えるので精一杯のようだ」

「しかも、体のあちこちから血が流れ出しているわね。体内が破壊されているいい証拠よ。と言うか、1秒も持たずにアースドラゴンを破壊したこの攻撃を耐えるブラックドラゴンがおかしいのよ。なんで当たり前のように耐えているのかしら?しかも、反撃しようと試みてるわよ」


 いや、エレノアも魔術と併用すれば耐えられるじゃん。


 この魔術、一見滅茶苦茶強そうに見えるが、実は1つ大きな弱点を抱えている。


 それは、一定以上の魔力量を持った魔術によって防がれると何も出来ないという点だ。


 魔術とは魔力の塊。しかも、身体強化のように自分の体を覆うただの魔力とは違い様々な変化が加えられている。


 この魔術はそれを貫通できるだけの力がないのだ。


 物理受けに優れた防御魔術(堅牢なる盾など)にはそれなりに強いのだが、魔術受けに優れた防御魔術(水の聖域など)には楽々防がれてしまう。


 なので、このように相手が防御出来ない状態での奇襲か、防御魔術を突破した上で使う必要があるのである。


 エレノアの場合は、パンチの衝撃で魔術を吹っ飛ばすとか言う荒業で防いでいたが。どうなってんだよ俺の相棒はよ。


「対策をしっかりと立てればブラックドラゴンも1人で狩れそうだな。もっと魔術のレパートリーを増やして、どうな相手にも友好的な攻撃手段を持つべきだと言うのがよくわかったよ。最初からこの魔術を使えていたら、この前戦った時はもっと楽に勝てたんだからな」

「そうね。これは反省するべき事ね。それと、もっと実践慣れが必要かもしれないわ。相手の弱点を瞬時に見極める能力や、それに対応する魔術選択なんかも重要になってくるのだからね。師匠が強いのはありとあらゆる場面に対応出来るだけの手札の多さと、長年の経験による適切な判断にあるし」

「あとは性格の悪さだな。常にいやらしい攻撃しかしてこない師匠は、本当に嫌いになりそうだよ。昔からあんな感じなんだから、師匠と一緒にいた人たちは胃に穴が開きそうだね」

「全くよ」


 そんなことを話しながら、ブラックドラゴンが何か動きを見せる度にそれを封じて内部を破壊し続ける。


 初撃を与えてから約15分もすれば、ブラックドラゴンも限界が来て素材へと姿を変えた。


 15分も耐えるとか、内部の耐久力も化物かよ。ずっと脳を揺らされ続けていた為か、殆ど動かさずに倒すことが出来たけどさ。


 お、レベルが7もう上がった。やっぱやべぇよブラックドラゴン。経験値だけで言えば過去一だな。


 後はリポップ時間がどのぐらいあるのかだな。場合によっては、あっという間にレベル300まで行けるかもしれん。




【ブラックドラゴン】

 絶望級魔物として分類されているが、実は竜種の中では下から数えた方が早い程弱い。圧倒的なフィジカルでごり押すタイプの魔物であり、一応第九級魔術も使えるが滅多に使うことは無い。

 鱗が凄まじく硬く、本体は鱗と言われても仕方がない程。魔術耐性物理耐性にかなり優れており、第九級魔術でも軽く傷つく程度で済んでしまう。しかし、本能的に戦い防御魔術なども張らないため内部への直接攻撃にはかなり弱い。

 エレノアやジークの言う通り、肉体的魔力的能力値は師匠と同等か少し下。しかし、戦闘技術という面においては師匠が圧倒している。師匠とブラックドラゴンがタイマンをすれば、一方的に師匠がブラックドラゴンをボコボコにできるだろう。




 後書き。

 某ブレイクスルーの展開を望む人が多くて笑える。私も好きで読んでたなぁ。最近はちょっと書くの忙しくて読んでないけど。

 ちなみに補足ですが、本気の師匠(最終兵器あり)とブラックドラゴン君がタイマンすると一分以内に師匠が勝ちます。強すぎぃ‼︎

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