竜のダンジョン第十一階層
ついに理想の立地を見つけた俺達は、その日から毎日その場所に行っては少しずつ家を建てる準備をしていた。
家が出来上がるのはあと一ヶ月後。建築オタクのギルドマスターとその仲間達が一切の妥協なく頑張ってくれており、家の完成がとても楽しみである。
家を建てる場所の整備も順調であり、改めて魔術の便利さを知った。
魔術と言えば魔物を倒すための手段として捉える人が多いが、元々は人々の生活を豊かにするために作られたとされているもの。
木を切り倒したり、土を掘り返して根っこを取った後に土を固めたりと、前の世界ならば重機が必要な作業が魔術一つで出来てしまう。
大抵のものが魔術出来てしまうから、この世界は科学分野があまり進歩しないんだろうな。
そんな未知なる世界を探求するよりも、魔術の研究をした方が確実でノウハウがあるから。
世界によって文明の進化の仕方が異なる。地球にも魔力が存在していたら、この世界のようになっていたのだろうか?
そんなことを思いつつも、ダンジョン攻略がメインなので毎日レベル上げをしながら攻略に勤しむ。
まとめ狩りがとてしやすい第八階層を吹き飛ばし、氷を操るブルードラゴンが蔓延る第十階層を攻略し終えた俺達は、遂に第十一階層へと足を踏み入れたのであった。
「予想はしていたが、ここが最終階層らしいな。竜のダンジョンの最深部。円形闘技場のような場所だ」
「しかも、既にボスが見えているわ。急に現れるのではなく、既に待機しているとは思わなかったわね。お陰でこのダンジョンのボスがどんな魔物なのかはすぐに分かるけど」
「“黒竜”ブラックドラゴン。かつてこの大陸で暴れ回り、幾多の国を滅ぼしても尚討伐されることが無かった絶望級魔物。まさか、このダンジョンから抜け出して暴れてたとかそういうことは無いよな?」
竜のダンジョンの最下層。
第十一階層へとやってきた俺達の目に入ったのは、圧倒的な広さを誇る円形の闘技場とその中心で眠る真っ黒な竜だ。
円形闘技場の空は暗く、星々だけが天を照らしているというのに円形闘技場の中は昼間のように明るい。
空もかなり綺麗だな。この世界は排気ガスとか出ない世界な上に、街から少し離れれば真っ暗だから山の上で星を見るような綺麗さがあるのだが、この場所はそんな空よりも何倍も綺麗で幻想的だ。
闘技場に眠る黒い竜がいなければ。
“黒竜”又の名をブラックドラゴン。
ブッセルのポンコツギルドマスターに聞いたあの伝説とも言われる竜であり、この竜が飛んだ国では全てが崩壊したと言われている。
もちろん、人類も総力を上げて討伐に向かったが、結果は惨敗。
当時のオリハルコン級冒険者が一人を残して全員殉職し、更には数え切れないほどのアダマンタイト級冒険者が共に旅立ったとされている。
かなり有名なドラゴンでもあり、御伽噺のラスボスとしてこのブラックドラゴンはよく出てきていた。
俺も、架空の冒険譚を読み聞かせされていた時に何度もこの竜の絵を見えきたものだ。
「昔、絵本で読んだ悪しき竜の絵とそっくりね。少し感動を覚えるわ」
「その絵本、“ガラムゴの英雄譚”って言う絵本じゃなかったか?正義感の強い男が街の問題を解決しつつ、悪しき竜を倒す物語の」
「そうそう!!よく知ってるわね!!ジークも読んでいたのかしら?」
「お袋が“魔術の本ばかり読んでないで偶には冒険譚とかも読みなさい”って言われて読み聞かせさせられたよ。絵本だからか滅茶苦茶な話が多くて覚えてる。竜を討伐するのはまぁ良しとしても、圧政を敷く王を倒して改心させる話は当時聞いていて“ないわー”と思ったね。殴られて改心するような王なら、最初から圧政なんてしないだろって」
「あぁ、大きくなって読んだら同じことを思ったわね。小さい頃、お祖母様に読んでもらった時は何も感じなかったけど、偶々絵の整理をしていた時に見つけて読み返したらツッコミどころが満載だったわ。それでも個人的には面白かったけどね」
同じ本を読んだいた事が発覚し、盛り上がる俺達。
あまりエレノアの過去に触れるような話はしないため、こういう昔読んだ絵本の話とかはしなかったんだよな。
そもそも俺は魔術の本ばかり呼んでたし、本を読んでない時は魔術の実験しかしてなかったし。
後、少し失礼だが、エレノアが絵本の冒険譚を読んでいたのは意外であった。なんと言うか、俺のイメージだとエレノアは幼少期から小難しい本を読んでそうだもんなぁ.......
ほら、俺と出会った時なんてクールにツンツンしてたし。いつの間にか火力絶対正義の放火魔になってしまったが。
いつからそんな子に育ってしまったんだ.........アレだな。初めてダンジョンに潜った時からだな。
アイアンゴーレムを笑いながら燃やして喜んでたわ。割と最初から放火魔じゃねぇか。
「今、失礼なことを考えていたでしょ」
「エレノアが放火魔になって悲しいよって思ってた。ほら、初めて俺と出会った時は“1人が最も効率がいい”とか言って人の話を聞かなかったのにさ」
「いつの話をしてるのよ。私にだって幼い時期はあるのよ。今はもう20歳よ?全く見た目が変わらないけど」
そうか。エレノアってもう二十歳なんだな。
エレノアと出会って五年。時の流れとは早いものである。
ゴブリンに奇襲を仕掛けられて泣いていたあのころのエレノアはもう居ないんだよなぁ。今では、頼もしい相棒となってくれた訳だ。
「幼い時期って、エレノアと出会った時はもう大人だっただろ。当時は15だったよな?」
「もう出会ってから五年も経つのね。ジークを見ていると15歳のままだと錯覚してしまうわ。ほら、ジークは外見が成長しないから」
「喧嘩売ってんのか。俺ももう17歳なんだぞ。少しは成長しているはずだ」
「鏡を前に同じことが言える?」
「........言えない」
クソう。この話題になるとどうやっても勝ち目がない。
外見は親父の血を濃く継いだと思ったが、どうして中身はお袋の血を濃く受け継いだんだ。
というか強すぎやろ。12歳ぐらいで成長が止まっているんだが?なんでお袋は全盛期の状態で止まって、俺は成長過程で止まるんだよ。
........もしかして、12歳の頃が全盛期だったのか?やばい、気付いてはならない真理にたどり着いてしまった気がする。
もしかして、俺は12歳で成長期が終わってしまったのか?だとしたら最悪だなオイ。
気付いてはならない真実にたどり着いてしまった俺は、頭を抱えたくなる気持ちを我慢しながら拳を握る。
よし、この鬱憤はブラックドラゴン君で晴らすとしよう。絶望級魔物だから、結構厳しい戦いになるだろうが、バカスカ特大魔術をぶっぱなしてやるからな。
「ふふっ、ジークは可愛いままでいいのよ。だからこそ、カッコイイ時とのギャップが凄いんじゃない。ほら、ここのギルドマスターも可愛いでしょう?それと同じよ」
「褒めているのか貶してるのか分からないフォローをどうもありがとう。男としては、カッコよくありたいんだけどねぇ........どうも母さんの血には逆らえなかったみたいだ」
「ジークもシャルルさんの前では大人しいものね。あの師匠ですら手懐けるシャルルさんなんだから、格が違うわ」
言うてエレノアも手懐けられてるだろ。
あれ?もしかしてお袋がこの世界で一番最強なのでは?
オリハルコン級冒険者である俺達を手懐け、更にはその師であるエルダーリッチ(絶望級魔物レベルの強さ)すらも手懐ける。
この大陸では世界トップクラスの三人が手懐けられてしまっているのだ。あれ?お袋が魔王なんじゃね?
俺は、そんなアホなことを思いながらもここまでのんびりしていても寝ているブラックドラゴンに視線を向けるのであった。
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