竜のダンジョン第六階層
自分で作るのが難しいなら、誰かに作ってもらってから移動させればいいじゃない。
そんな天才的な考えが浮かんだ俺は、ギルドマスターと建築仲間の方々にマイホームの建設をお願いした後再び竜のダンジョンへと戻ってきていた。
たった数分で丸太から椅子を作り出してしまうギルドマスターとは言えど、家を建てるにはかなりの時間が掛かる。
しかも、あの人はギルドマスターとしての仕事もあるのでかなり忙しくなってしまう事だろう。
毎日差し入れとか持って行ってあげるか。極上のドラゴン肉と海の幸を大量に持って行けば、少しは身体の疲れが取れるかもしれない。
高級品を毎日持っていくことによりある種のプレッシャーが掛かってしまうかもしれないが、それは我慢してくれ。
「大体二ヶ月ぐらい掛かるらしいな。その間に家を建てる場所も決めておくか」
「そうね。最悪他に良さそうな場所を見つけらた移動させたらいいわ。どんな場所に立てるつもりかしら?」
「そうだな........先ずはエレノアの要望通り魔術の実験ができる場所が欲しいな。ダンジョンとは言わずとも、広い庭は欲しい。後、自然に溢れた場所がいいな。流石にゴツゴツとした岩が蔓延る山岳地帯に家を建てるのは嫌だろう?なんというか........落ち着かない」
「確かにそうね。出来れば、緑溢れる自然の中に家を建てたいわね。となると、森の中かしら。そこを切り開いて、家を建てるのが1番無難かもしれないわ」
「後、欲を言うなら温泉が欲しい。自分の家で温泉が出てくるとか、最高じゃないか?」
「温泉?聞いたことないわね」
おっと、日本人の俺からすれば馴染み深いのだが、どうやらエレノアは温泉の存在を知らないようだ。
そう言えば、エレノアと旅をする中で“温泉”の話をした覚えがないな。
故郷は平野が広がる場所で活火山が近くにあるとか無かったし、火山地帯であったピィーちゃん達の住む魔境では温泉に入る前に溶岩の存在があったし。
しかも、火山がある地帯に必ずしも温泉がある訳でもない。
最悪、魔術でそれっぽいものを作れればいいやとは思っている。
「簡単に言うとお湯が出てくる場所の事だ。火山がある場所の近くによく出てきて、ただのお湯に比べて色々な成分が混ざっている。疲労回復や肌にいいってよく言われるぞ」
「へぇ、それはちょっと興味があるわね。疲労回復をしてくれるなら、次の日の狩りも元気に行えるわ」
ここで肌の話に行かずに疲労回復の方に興味を向ける辺り、実にエレノアらしい反応だ。
エレノアの肌は滅茶苦茶綺麗だもんな。お袋が羨ましいと言うほどにはエレノアの肌は美しい。
そして何より、決して老いる事は無い。
全世界の女性が羨む不老の存在。それなエレノアなのだ。
何故人々がフェニックスの血を求めるのかが、よく分かる気がする。
「まぁ、温泉に関しては“あったらいいな”程度だ。それよりも、魔術実験ができる場所の方が欲しいな」
「最悪適当なダンジョンに転移すれば簡単に実験できるけど、家の中にあるのと無いのとでは勝手が違うものね。少しだけ試したい時に態々転移して移動するのは疲れるわ」
「そういう事だ。だから、先ずは管理されていないダンジョンを探す事になりそうだな」
そんなことを話しながら、俺達は竜のダンジョン第六階層へと降りていく。
俺たちの予想では、そろそろ破滅級魔物が出てきてもおかしくないと思っているのだが........どうなんだろうな?
第六階層へ降りると、その答えがやって来る。
見渡す限り開けた平野に空には幾つもの魔物の影。
うーん。この光景は見た覚えがあるな。具体的には、第一階層辺りで。
エレノアも同じ事を思ったのだろう。俺と全く同じ感想を口にした。
「見覚えのある光景ね。第一階層で見た光景と全く同じだわ。違う点があるとするならば、空を飛ぶ魔物の影が少し大きい事ぐらいかしらね?」
「........あー、グレイトワイバーンか。ワイバーンの上位種にして、炎を吐き出す竜。竜のなり損ないとは言われてないけれども、ワイバーンの名前を持っているからそこまで強くなさそうだな」
空に飛ぶ魔物の影を見ると、確かにワイバーンよりも少し大きい。
空を飛ぶ高度の問題でそう見えるだけかもしれないが、心做しか大きく感じた。
グレイトワイバーン。
その名の通り、ワイバーンの上位種に位置する魔物であり、竜のなり損ないであるワイバーンの進化系。
その強さは破滅級魔物に位置しておりどこかのギルドで見た資料によれば、このグライトワイバーンが大陸に現れた時はオリハルコン級冒険者3名が対応に出て一名が殉職したとされている。
その間に国が三つ滅び、魔王のように配下を生み出すことは出来ずとも圧倒的な力を持つのがグレイトワイバーンであった。
俺やエレノアが毎回ボコスカにする為忘れがちだが、本来破滅級魔物はたった一体で幾つもの国を滅ぼすことができる存在なのだ。
しかも、討伐するにはオリハルコン級冒険者が必須とされており、そのオリハルコン級冒険者ですら単独での討伐は厳しいとされている。
俺とエレノアの場合は例外だけどね。
「ここなら水に動きを邪魔されることもないから、気持ちよく狩りができそうね。早速行きましょう」
「そうだな。久々にちょっと本気で暴れられそうだ」
ニッと笑いながらトンファーを取り出すエレノアと、何時でも魔術を放てるように準備をしておく俺。
そして、階層の出入口から少し離れた瞬間、待っていましたと言わんばかりにグレイトワイバーン達は俺たちに向かって急降下してくる。
「自分達から殴られに来てくれるなんて、空を飛ぶ手間が省けて楽ね!!
「全くだ。ノソノソと歩いてくるだけのどこぞのカニにも見習って欲しいものだね!!
急降下して襲ってくるグレイトワイバーンに対し、エレノアは巨人の腕(炎属性付)を出現させると、カウンター気味にグレイトワイバーンの頭を吹き飛ばす。
カニ相手には何発か殴る必要があったものの、今のエレノアはレベル200越えであり、一撃殴るだけで海が荒れ狂う程の破壊力を生み出せるのである。
そんなエレノアの一撃をモロに食らってピンピンできるような破滅級魔物は存在せず、グレイトワイバーンの頭はパァン!!と弾け飛んで素材へと姿を変えてしまった。
あれ、まともに受けると滅茶苦茶痛いんだよな。ガードの上から強引にダメージを与えてくるとか言う脳筋パンチはやめてくれませんかね?組手をしている時が大変だよ。
対する俺は迫り来るグレイトワイバーンに対して魔術を乱射。
一撃ドカーンでも良かったと言えば良かったのだが、最近ビームで相手を撃ち抜く事にハマっているのでこちらの方法で確実に脳天をぶち抜いていく。
一応、空間斬の魔術が通用するのかとかも試すために様々な魔術を織り交ぜながらグレイトワイバーンのシューティングゲームをしていた。
「余裕だな。海の中じゃないと言うだけでここまで楽になるとは思ってなかった。やっぱり人間に適した狩場が1番だよ」
「海の中はそもそも人が生きる為に設計されている訳では無いものね。こっちの方が戦いやすくて助かるわ。拳を振りやすいし、何より一撃の威力が増してるわね。頭だけを吹き飛ばすつもりが、体半分吹っ飛んでるわよ」
「そもそもパンチ一発でドラゴンの体を吹き飛ばすってなんだよ........俺でもそんな真似できないぞ」
「慣れよ慣れ。ジークもコツを掴んだら行けるわ」
いや無理だよ。そもそものパンチの火力が違いすぎるわ。
俺は、規格外すぎる肉体を持つエレノアに呆れつつ、グレイトワイバーンのシューティングゲームを楽しくやるのであった。
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