ラジャー‼︎


 天輪で全てを吹き飛ばしたら、海が荒れに荒れてしまいエレノアに軽く怒られた後。


 俺達は海が静かになるのを待ってから再び狩りを再開した。


 地上で魔術を使うのとは訳が違うな。もっとしっかりと考えて魔術を使わないと俺達まで巻き込まれかねない。


 自然の抵抗力と言うのは凄まじく、ガトリングをぶっぱなしても威力減衰が凄すぎて使い物にならないし、海の中で使える魔術というのはかなり制限されてしまうのかよく分かる。


 本当にやばそうな相手が来たら、そんなことも言ってられないので躊躇無く天鱗とか威力が高い魔術を使うつもりだが。


「また来たわね。少し進むと大量に現れて襲ってくるのがこの階層の仕組みなのかしら?」

「毎回トラップを踏んでいる気分になるな。まぁ、さすがにトラップよりは数が少ないけど」


 フラフラと海の中を漂うと、またしても急に幾つもの気配が俺たちの前に現れる。


 どうやら本当にこの階層は少し進むと敵が出てくると言う仕様だったらしく、今までのダンジョンとはかなり違った仕組みをしていた。


 俺たちからすれば、向こうから勝手にやってきてくれるので寧ろ有難いぐらいだが、接敵を避けながらダンジョンを攻略しようとする冒険者からしたらいい迷惑だろうな。


 攻略不可能ダンジョンと言われるだけあって、コソコソと隠れながら移動する奴の対策もバッチリという訳だ。


「もう面倒だし、二人でやるか」

「そうね。また海を消滅さたりしないでよジーク?」

「分かってる分かってる。ちゃんと反省したから。本当にヤバそうなやつが出てきたら使うかもしれんけど、それ以外はちゃんと考えながら魔術を使うよ」


 俺なら楽しくなって再び海を消滅しかねないと思っているのか、心配してくるエレノア。


 俺はエレノアじゃないんだから、楽しくなりすぎて魔術をブッパする様なことはしないよ。


 さっきのは事故だ事故。


 正直、ちょっと楽しくなってブッパなした感は否めないが、そういう事にしておこう。


「ふふっ」


 俺の事をよく見ている相棒に全てを見透かされている気もするが、俺は知らないフリをしておいた。


 少し待つと、こちらに迫って来ていた気配の主が見えてくる。


 ピノキオのように長く伸びた鼻(違う)を持った魚。カジキに物凄く似た魔物の群れが大量に押し寄せてきたのである。


 しかも、滅茶苦茶海の中を泳ぐのが早い。


 急カーブとかは出来なさそうなので、軽く避けると隙だらけになるのだが、如何せんスピードが早すぎて避けるのも結構難しい。


 コイツに近接戦を挑むのは少々無謀と思える程に、このカジキ達は海のスピードスターであった。


 しかし、耐久力はそこまで高くないため、“水中刃カット”一撃であっという間に絶命する。


 スピードにステータスを全振りしたかのような魔物。それが、このカジキである。


 ちなみに、名前は分からない。昨日捕まえたウツボもここら辺では見られない魔物だったらしく、俺たちの話を聞いてその特徴を持つ魔物をあれこれ探したらしいしな。


 海の中に潜む魔物は種類が多すぎて管理するのが大変そうだ。


「久々にあの魔術でも使うか。向こうから飛んできてくれるなら、そこに魔術を置いてあとはやって来るのを待つだけでいいし」

「私は炎系魔術が使えないから普通に殺るわ。半分こでいいわよね?」

「そうだな。それじゃ出てこい“地獄門ヘルゲート”“天門ヘブンズゲート”」


 俺は自分の後ろに2つの門を設置する。


 普段は地獄へ誘う為に地面に設置したり、天へと誘うために上空に設置したりするが、別にどこにもんを開いても問題は無い。


 あくまでもイメージに合うように魔術を行使しているだけ。今回は、海の中で天も地もクソもないということで自分の後ろに設置するとにしたのである。


「あら、随分と久々に見た気がするわ。一時期はよく使っていたけれど、最近は第九級魔術を実験的に使うことの方が多かったものね」

「魔術は使わなきゃ練度が落ちるからな。偶には使わないと腕が鈍る」

「あぁ、残念。私も“獄炎煉獄領域ゲヘナ”を使いたかったわ。使う場所が限られている中でも、ダンジョンは周囲に気を使わなくていい場所だと言うのに........」

「いや、ついこの間も帝国のダンジョンのボスを焼き殺してたよね?森ごと焼き尽くして笑ってたじゃん........」

「あー、そういえばそうだったわね。ねぇ、ジーク、今日は少し早めに切り上げて帝国のダンジョンに行きましょう?ちょっと魔術を乱発したい気分だわ」


 海神のダンジョンの攻略を初めてからは、帝国のダンジョンに足を踏み入れていない。


 放置狩りをしてくれている天使ちゃんと堕天使くんが第九階層で大暴れしているが、俺達が直接乗り込んで暴れることは無かった。


 と言っても旅の間もほぼ毎日通っていたので、まだ三日四日程度しか間が空いて居ない。


 が、ずっと海の中で狩りを続け好き勝手に魔術を放つことが出来ないのはエレノアにとってストレスなのだろう。


 エレノアはとにかく気持ちよく魔術を撃ちたそうにしていた。


 この火力おバカのストレスを溜めるのは非常に宜しくない。エレノアと長い間一緒にいるからこそ分かるが、エレノアはストレスが溜まりすぎると後先考えずにブッパなすタイプだ。


 適度に発散させてやらないと何時どこで爆発するのか分からないので、今日は少し早めにこっちのダンジョンは切り上げて帝国のダンジョンに行くとしよう。


 効率面でもまだまだ帝国のダンジョンの方がいいしな。


「エレノアがそう言うなら、必要数だけ狩って後は帝国のダンジョンに行くか。どうせ誰も来ないし、あそこなら好きに魔術を打ってもいいしな」

「なら、第八階層を消し飛ばしたいわね。氷の世界を“蒼炎の雫”で消し飛ばしたら、きっと楽しいわよ」

「お、おう。そうだな。程々にな」


“蒼炎の雫”って滅茶苦茶広範囲高威力の馬鹿げた魔術じゃ........


 俺は帝国のダンジョン君にご冥福をお祈りしつつも、迫ってくるカジキたちを逃さない。


 海の中で若干手の動きが遅いとは言えど、相手は直進しかして来ない闘牛の様な存在。


 しっかりと突っ込んでくる場所に手を置いておけば、あとは向こうから勝手に入り込んできてくれる。


 大量大量。自分から経験値になりに来てくれるなんて、なんで良い奴なんだ。取れる素材の中にはちゃんと食べられる部分があるし、個人的には結構好きな魔物である。


 ちなみに、俺が一番好きな魔物は“魔王”である。


 オリハルコンゴーレムやオーガディザスター、オークエンペラー等、経験値を生産してくれる素晴らしい魔物の事は大好きだ。


 また会いたいなぁ。


 今後はダンジョンがメインの狩場になるだろうから、滅多に会うことはないだろうが。


 ........そういえば、魔王が支配する大陸があるってエレノアが言ってたな。本当に存在するのであれば、いつの日か行ってみたいぜ。


 だってほら、俺の大好きな魔王君達がいるんでしょ?仲良くしようぜ。お前は経験値な!!


 そんな事を思いつつ、地獄の門と天への門の中にカジキをホイホイと投げ込んで狩りを終わらせる。


 実に簡単な狩りだ。狩りっていうか、向こうから経験値になりに来てくれているからな。


 素材も素材回収用に作った小さめのサメ“黒鮫ブラックシャーク”が頑張ってくれる。


 この子には自己判断用の魔術を組み込んであるので、大まかな指示を出しておけば後のことはやってくれた。


「回収よろしくね」

「........(ラジャー!!)」


 ヒレを上手く動かして、ピシッと敬礼をするサメちゃん。第一階層のサメは可愛くなかったが、これは可愛い。


 ぬいぐるみにしたら売れそうだ。


「毎度思うけど、ジークの魔術ってちょっと可愛いわよね」

「分かる。話し相手にもなってくれるし、癒しだよな」


 その後、エレノアが魔術を好き勝手打てないストレスを発散するかの如く帝国のダンジョンの第八階層が再び消えたのだが、それはまた別のお話。






 後書き。

 エレノアマッマいいよね。あの時のエレノアは、ジーク可愛いと思ってます。いつもの事。

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