帝都防衛戦
窓から飛び出し帝国の市民を守るために爆発した場所に向かうと、そこは
流石に大通りで爆発を起こした訳では無いが、どこに行っても人で溢れているのがこの帝都の街である。
既に多くの人が爆発に巻き込まれ、死体となって転がっているのが分かった。
「死ね!!」
「ヒッ........!!」
黒いローブに身を包み、剣を振りかざして近くにいる人々を殺そうとする混沌たる帝の構成員。
先手を取られ街の人に被害が出てしまったが、これ以上被害を拡大させるのは俺達冒険者が許さない。
俺とエレノアは素早く分かれると、目に付く混沌たる帝の手下達を一切の慈悲もなく殺した。
エレノアはトンファーで相手を殴り飛ばし(威力が高すぎて破裂)、俺はアダマンタイトの剣で首を切り飛ばす。
俺達が本気で動けば、5秒足らずでその場にいた混沌たる帝達は殲滅されてしまった。
「大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます」
「歩けるなら、急いで冒険者ギルドへ逃げ込め」
「は、はい........」
最後に助けた女の人は、チラリと目の前で両断され臓物を撒き散らす混沌たる帝の1人を見て顔を青くしたが、慌てて立ち上がるとその場から立ち去る。
人の死体を間近で見て、錯乱しない辺りこの世界の人達は強いな。
流石は少し旅をしているだけで、盗賊やら野盗に襲われるのが常識な世界なだけある。
念の為に闇狼の護衛も付けておこう。
流石に天使ちゃんの何体かは闇狼に変えて、街の中で暴れる混沌たる帝を殲滅させるか。本陣に攻め込むなら、そこまで人数はいらないし。
俺はそう思いつつ、闇狼(強化バージョン)を200体近く召喚し、人々を守るように命令を出す。
こういう時、数を揃えられるこの魔術は便利だな。
「かなり悲惨ね。急いで街中に蔓延る混沌を排除しないと、帝都が火の海に変わるわよ」
「そうだな。今、闇狼を200体ぐらい街中に放った。これである程度の被害は防げるだろうが、もっと増やした方がいいか?攻め込む天使たちの数を減らして、防衛に回すべきかな?」
「そっちの方がいいかもしれないわね。今は数を揃えた方が懸命よ」
俺達は冒険者。
冒険者としての心得は最低限守るつもりではある。
“弱き民の為に”。この心得を守っている限りは、冒険者なのだ。
できる限り、人々は守らなくてはならない。
「だよな。魔道具探索用の天使達とボスを叩き潰す用の天使達、それと出入り口を固める天使達を残して、残りを回収。エレノアも堕天使を回収して闇狼に回せ」
「了解よ。こんな時でも魔道具を探す方に数を割く辺り、最高にジークしてるわね。ま、さっさと終わらせればいいわ。少し本気でやりましょう」
「出入口は塞いであるし、今外に出ている分だけを倒せば何とかなるか。なら、久々に本気で動くとしよう。帝都をグルっと回るのにどのぐらい時間がかかる?」
「空から見た感じ、長くても1時間ね。残党は闇狼と他の冒険者たちに任せて、大まかに全て掃除しましょう」
「オーケー。んじゃ行くか」
大体の方針を決めた俺とエレノアは、“また後で”と拳を合わせると本格的に混沌たる帝の面々を殺しに動き出すのだった。
【剣帝、魔帝】
ジュラール帝国軍の最高位に与えられる称号。剣帝は剣術、魔帝は魔術に優れた者であり、帝国の絶対的な強者として君臨している。
その強さは圧倒的で、オリハルコン級冒険者にも並ぶほどの強さ。
しかも、オリハルコン級冒険者のように問題児でも無いのでかなり扱いやすい。
先手を取った
幾つもある出入口から出没した彼らは、爆発と共に行動を開始し既に多くの人を殺して回っている。
その中にはもちろん幹部の姿があり、子供の泣き声を聞くことが喜びである“鞭”がこの混沌を指揮していた。
「子供は殺さず捉えなさい。大人共は殺していいわぁ........」
「「「「「はっ!!」」」」」
現在、帝都で暴れているのは“鞭”が持つ部隊。
混沌たる帝は確かに組織ではあるものの、それぞれの自我があまりにも濃すぎるため連携など取れるはずもない。
その為、その部隊が消えたら次の部隊。次の部隊が消えたらさらに次が........と言う方針を取っていた。
でないと、彼らは仲間内で殺し合う。
ジャンケンに勝ち、先鋒を任された“鞭”は実に楽しそうに殺戮を楽しんでいた。
「冒険者共と帝国軍が出てきたら引くわよぉ。その後は、他の奴らに任せるの。そうすれば、私達の部隊の損失は少なくて済むわぁ」
「鞭様!!この子供はどういたしましょう?!」
「もちろん確保よぉ。可愛い子は私の為に泣くのよぉ」
そう言いながら、連れてこられた少年の髪を雑に掴んで持ち上げる鞭。
子供は泣き叫びながら“お父さん!!”と叫ぶものの、既に死にかけている父親にその声は届かない。
「うふふ、いい泣き声だわぁ........あぁ、癒されるわぁ........でももっと聞きたい。我慢できないわぁ!!」
そう言って、更に泣き声を聞きたくなってしまった鞭が、少年の爪を剥がそうとしたその時。
鞭の腕がごとりと落ちる。
「........へ?」
もちろん、子供を掴んでいた腕が落ちたのだから、子供も地面に落ちた。
「なにg──────」
何が起きたのか。そう思い視線をあげると、つい先程までいたはずの部下たちが全員真っ二つに割られて死んでいる。
意味がわからない。
自分たちが気づくよりも早く全て切り刻まれたと言うのか?
気配も姿も見えぬ暗殺者がこの場にいたとでも言うのか?
死神の鎌がいつの間にか自分の首元に迫っていると感じた鞭は、慌てて武器を取り出すがもう遅い。
体は動かず視界がぐるりと回る。
鞭が最後に見た光景は、鮮血を吹き出しながら地面へと崩れていく自分の身体であった。
「大丈夫。もう坊主を痛めつける悪いやつはやっつけた」
「お、お父さんが!!お父さんが!!」
「焦るな坊主。お父さんはもう治した。気絶してるがな」
助けられた少年は、青髪の冒険者に連れられて父親の元に行く。
冒険者が何度か父の顔を叩くと、少年の父は目を覚ました。
「う、うん........?俺は........」
「お父さん!!」
起き上がった父親を見て、抱きつく少年。
父親は少年を抱きしめた後、その目の前に広がる光景を見て何があったのかを大体察する。
どうやら、目の前の少年が全てを片付けたのだと。そして、自分を治してくれたのだと。
「あ、ありがとうございます」
「礼はいいから、さっさとここから離れろ。冒険者ギルドの場所は分かるな?急いで向かえ。まだこの帝都に蔓延る連中を片付けてないからな」
「は、はい!!」
「それと、そことそこに倒れている奴も治したから起こして連れて行け。護衛は付けてやる」
少年はそう言うと、何も無いところから光り輝く天使を召喚する。
その姿はあまりにも神々しく、目の前の冒険者が天使を司る神の使いにも見えてしまった。
「ここにいる人たちを守ってやれ。冒険者とは敵対するな。もし、受け入れられるようなら、ギルドで負傷した人を治せ。あとはお前の判断に任せる」
「........(了解)」
天使に命令を出し、最後にもう一度親子を見た少年は少しだけ笑って父親に呟いた。
「次は、その手を離すなよ」
「え、あ........」
返事をする前には既に目の前から消えてしまった青髪の冒険者。
彼こそが英雄。物語に語られる様な英雄の姿なのだと、親子は感じていた。
「........(行きましょう)」
「あ、はい」
無言ながらも、分かりやすいジェスチャーで親子を急いで避難させようとする天使。
あの少年は一体なんだったのか。その正体を親子が知るのは、全てが終わってからである。
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