第九階層
第九級黒魔術“
俺は破壊力に優れた炎系統の魔術が得意という訳では無いので、自分の得意な黒魔術で第九級魔術を作ったのだが、エレノアの“蒼炎の雫”以上の火力が出ているな。
俺が作る魔術は実用性重視で場所を選ぶ魔術をあまり好まないが、この爽快感は凄まじい。
エレノアが狩りに爽快感を求める気持ちがよく分かる。
「........何もかもが無くなったぞ。闇の海に囚われて、全てが水の泡と化した。私はこんな奴に喧嘩を売ろうとしていたのか」
「は、ハハハ。少しは先生に追いつけたかもと思っていたけど、追いつくどころかそもそも背中すら見えてなかったみたい。こんな事ができる人類が、先生たち以外に居るのかな?」
第九級黒魔術の惨状を見たアーランとリーシャは、何もかもが無くなった第八階層を見て乾いた笑みを浮かべる。
氷で出来た地面すらも溶かすこの闇の海の中で生き残れる魔物は居るはずもなく、死した魔物たちが残した素材も全て闇の中へと消えていった。
と、ここで俺の体に変化が訪れる。
全身から力が湧き上がってくるこの感覚。どうやらレベルアップしたらしい。
放置狩りが上手くできていなかったこともあり、この旅の途中でレベルが上がることは無かった。
今のレベルは105。
次の目標はレベル200なので、まだまだ先は長いな。
「おめでとうジーク。流石に最上級魔物まで居ると言われる第八階層を丸々と吹き飛ばせばレベルは上がるわよね。コレでレベル105だったかしら?」
「久々にレベルが上がったよ。放置狩りが上手くできてなかったし、早いところ天使たちの狩場を見つけてやらないとな。第九階層が最上級魔物で溢れる素晴らしい狩場なことを祈るよ」
「ふふっ、ダンジョンもいい迷惑でしょうね。何百年と侵入者のいなかったこの階層が、わずか一撃で消し飛ばされるんだから。私がダンジョンだったら、やってられないわ」
「きっとスライムダンジョンも同じことを思っていただろうよ。ただ、このダンジョンは運がいい。豊富な資源が取れるから、国が管理している。下手に壊せば帝国に追われる羽目になるから、壊すにこわせない。人間に価値を示すことが、ダンジョンが生き残るための手段となっているわけだ」
「こういう生存の在り方もあるのね」
人間に利用価値を示し、人間によって保護してもらう。
ダンジョンは意外と強かな性格なのかもしれない。
俺はレベルが上がったことによる体の変化を少し確かめながら、自分が破壊したダンジョンの跡地へと降り立つ。
エレノアがスライムダンジョンを吹っ飛ばした時は、まだ熱が残っていて熱さを感じたが、俺の魔術は熱を発することは無い。
先程ダンジョンに入ってきた時のように、まだ寒いままであった。
「地面も溶けてるっぽいな。地形的に運良く生き延びられても困るから、地形すらも破壊できるようにしたら当たり前なんだけど」
「私の時は破壊できてない地形も多少あったわね。私の魔術よりも、ジークの方が優秀ってことかしら?」
「全身を焼かれる程の熱を発してるんだ。それに耐えられるだけの身体があれば別だが、ほとんどの生物は耐えられないだろうよ。地形を破壊せずとも相手を殺せるって訳だし」
「なるほど、たしかにそうね。ジークは普通に防ぐけど」
防ぐ手段を持ってないと、俺が死にますからね!!
エレノアの“
エレノアと共に旅をしたいなら、自分の身を守れる手段をいくつも持ってないとあの世行きになるからな。
全く、どうしてエレノアはここまで火力を追い求める破壊神になってしまったのだろうか。
杖を持って可愛らしく魔術を唱えていた頃が懐かしいよ。
「もう少し落ち着いた魔術も開発して欲しいな........」
「ふふっ、考えておくわ」
俺はエレノアの返事を聞いて“あ、無理だな”と察すると、頭を掻きながら深くため息を着くのだった。
【
第九級黒魔術。闇の海を広範囲に及び出現させ、闇に飲まれた者を全て消す。闇が水のようにうねるため、水魔術との複合と思うかもしれないが、あくまで見た目だけが水っぽいだけなので普通に黒魔術である。
破壊範囲はおよそ半径35km(海を出現させた時点では半径18km。しかし、その後全体に広がっていく)ほど。地形によって破壊できる範囲が+-5km程出る。
闇は地形すらも破壊し、逃げ場を全て奪っていく。更に、侵食していく速度も早いので武神レベルで足が早くないと逃げきれない。闇に飲まれても5秒ほどは形を保っていられるが、一度溶け始めると一瞬で消し飛ばされる。
弱点はエレノアの蒼炎の雫と同じく、自分をも巻き込む事。空高くから下に向かって放てば被害は無いが、地上で撃つには防御魔術が必要不可欠。その関係で、超高度を飛ぶ相手には効果がない。
さて、第八階層の魔物達は全て始末してしまったので、次は第九階層である。
第八階層まではどのような場所なのか把握しているが、ここから先は完全な未知なる世界。
誰もその目に触れることなく、ただ静かに眠っていた世界を見に行けるのだ。
世界を見て回る。
俺の旅の目的の1つであり、誰も到達したことの無い世界を一番に見られるのは少し愉悦感があった。
「ここから降りれば第九階層に行けるな。前人未到の地であり、そこがどんな世界なのかも分からない。冒険者ギルドの情報にもない世界が広がっているんだ。楽しみだな」
「ジークは、未知なる世界を見るのが割と好きなのよね。とは言っても直ぐに飽きるけど」
「そりゃ、同じ景色を何時間も見られるほど、俺はじっとしてられる性格じゃないからな。でも、見た時の感動は好きだぞ」
「それは分かる気がするわね」
そう話しながら、俺の魔術の影響で若干溶けている階段を降りていくとそこは真っ赤に染まった世界が広がっていた。
グツグツと煮えたぎる溶岩と、“ここを通ってね”と言わんばかりに足場となっている黒い岩石。
天は火山灰にでも覆われているのか少し暗く、余計に溶岩の明るさが目立つ。
第九階層はどうやら火山地帯のようだ。
寒暖差が激しすぎて風邪を引きそうだよ。
第八階層は氷の大地で、第九階層は溶岩が煮えたぎる灼熱の大地。
俺やエレノアは自分の周囲の温度を一定に保つ魔術を使用しているから大した影響はないが、この魔術を使えない人からしたらここは地獄だ。
溶岩の暑さによって力を奪われ、挙句の果てには魔物まで襲ってくる。
ダンジョン、結構えげつないやり方をしてくるな。
「ここが第九階層........初めて見たが、攻略なんてできる気が全くしないな。灼熱の中を歩き回る時点で、私には無理だ」
「僕もちょっと厳しいね。先生達が張ってくれた結界があるから平然としていられるけど、もしなかったら今頃汗をかき始めているよ。水魔術を使えるから水分にはさほど困らないだろうけど、その前に熱さで体調を崩しそうだね」
自分たちの能力ではこの階層を突破できないと悟り、少し顔を歪めるアーランとリーシャ。
対する俺達は、地形よりもここに出てくる魔物の方が大事であった。
「溶岩が支配する灼熱の大地。これが第九階層か。どんな魔物がいるんだろな?」
「最上級魔物がメインで出てきてくれると助かるわね。また吹き飛ばす?」
「いや、第十階層まででダンジョンが終わってたら、ここが天使たちの狩場になる。先ずは色々と見てみよう。その後、狩り方は決めればいいさ」
「分かったわ。いつものって事ね」
「そういうこった」
俺とエレノアはそう言うと、早速灼熱の大地に足を踏み入れるのであった。
ダンジョン君、数百年かけて色々と試行錯誤した第八階層が5分で消しとばされる。
ダンジョン「解せぬ」
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