魔王が可哀想
グランドマスターに30分程コッテリと怒られた俺達。
カール皇国は自業自得だけれども、それはそれとしてお前らも悪い。と言うスタンスで怒られるとぐぅの音も出ない。
ぐぅ........
正論パンチはどうしてここまで強いんだ。ガード不可の攻撃はゲームのバランスを崩すことを知らないのか?
「........少しは反省したか?」
「少しは。でも、次は三大ダンジョンを目指すつもりだから問題ない。今まで暴れられなかった分、きっちり暴れてくるわ」
「そうね。威力が高すぎて第九級魔術とか使えなかったもの。私もそろそろ本気を出したいわ」
「........欠片も反省して無さそうで何よりだ。つくづくお前達がオリハルコン級冒険者である事がよく分かるよ。それで、魔王についての報告は?」
元々、このギルドに顔を出したのは魔王についての報告をする為。
決してグランドマスターに怒られに来た訳では無い。
「ザリオルのギルドマスターから聞いているとは思うが、五大魔境“オマウ”にて2体の魔王を確認した。言葉を話す魔物が出てきたから、ちょいと
「なんか、お話の意味合いが違った気がするんだが........まぁ、いい。それで?」
「流石に魔王に関してはギルドに報告をした方がいいと思ってな。ギルドマスターに報告。次いでに魔境を吹っ飛ばしていいかの許可も取ってくれと頼んだわけだ」
「相手は魔王。環境に気を使う余裕なんて無いだろうからな。まだ魔境の様子を把握できてないが、どんな感じになってる?」
「そこらじゅう穴ボコだらけだよ。魔境“ケルト”で空けた穴の小さい版があちこちに空いてる」
天使ちゃんも堕天使君も滅茶苦茶張り切っていたからか、加減を一切せずに大あばれしていたからな。
第七級魔術を連発するもんだから、魔力が一瞬ガクッと減るのがよく分かった。
天使ちゃんも堕天使君も容赦が無い。多分、五大魔境“オマウ”で1番破壊行為をしていたのは天使と堕天使達だ。
なんなら今も魔王軍の残党狩りをしているからな。偶に魔力が一気に減る感覚があるという事は、第七級魔術を楽しくブッパしているのだろう。
グランドマスターは何か言いたそうな顔をしていたが、許可を出した手前“やりすぎだ”とは言えない。
一般市民にも被害は出てないから、これに関しては怒られる筋合いは無いのだ。
「魔王はどうした?」
「両方とも捕まえて魔物を量産させてた。楽しかったぞ。何もせずともあれよあれよと魔物を産んでくれるから、レベル上げがとても捗る」
「魔物を探さなくてもいいと言うのは楽よね。魔王が魔物を生産する時はその素材となる物と“なにか”を消費するらしいから、永遠に魔物を作り続けさせるなんてことが出来ないのが残念だけれど」
俺はその“なにか”を魂や精神的要素のあるものだと考えているのだが、どうなんだろうね。
体力を削るのであれば、つぎのひにはある程度戻っていそうだし、回復も早い。
だが、魔王を見る限りその“なにか”の回復はかなり遅いらしい。
となると、体力では無い。体力や魔力以外に消耗し回復が遅そうな物と言えば、魂やら精神的な何かでは無いのか。
俺はそう予想している。
今度魔王を捕まえた時は、そこら辺の実験をしてみてもいいかもな。人の魂を覗き見る事が出来る師匠とか連れていけば、何かわかるのかもしれない。
そんな事を思っていると、グランドマスターが“何を言っているんだお前は”と言いたげな顔で話を止めてきた。
「待て待て待て。魔王を捕まえて魔物を生産させた?何を言ってるんだお前達は」
「そのままの意味だけど?せっかく最上級魔物を作ってくれる魔物が居るんだから、使わない手は無いだろ」
「魔王はレベル上げの為の道具じゃねぇんだよ、普通は!!そもそも二人で討伐出来る時点でかなり滅茶苦茶だってのに、生け捕りにした挙句配下を作らせるだァ?頭どうかしてんのか?!........いや、元からそんな奴らだったか」
どっと疲れた顔をするグランドマスター。
今までの魔王って多くの犠牲を払ってやっと討伐出来る相手だもんな。そんな魔王をたった二人で二体も討伐するというのは、確かに滅茶苦茶である。
こういう時、なんて言えばいいんだっけ?
あれ?俺なんかやっちゃいました?だったかな。
「生け捕りってことは、かなり大きな実力差があった訳だよな?お前らどれだけ強くなってんだよ........」
「レベルの話か?この前三桁超えたぞ」
「私も超えたわね」
「マジかよ。レベル100を超えたって事か?初めて見たぞ、レベル100を超えた人類なんて」
「他のオリハルコン級冒険者はレベル100を超えてないのか?1人ぐらいそういう奴が居てもおかしく無さそうだけど」
「居るわけないだろ。レベル15でベテランと言われるんだぞ?その7倍近いレベルを持った奴なんか、何百年に一度レベルでしか現れねぇよ」
その何百年に一度の逸材が俺たちな訳か。
と言うか、この言い方からしてグランドマスターは他のオリハルコン級冒険者のレベルをある程度知っているように思えるな。
冒険者ギルドのトップなんだから、ある程度自分たちの戦力を把握しておくのも仕事か。
「ちなみに聞くが、どうやって魔王を捕まえたんだ?」
「普通に手足を切り飛ばして、その後洗脳魔術を使った。心をへし折る必要があったから、ちょいと
「洗脳した後は楽だったわよね。こちらの言うことを絶対に聞くから、あとは配下の魔物を生産させるだけよ」
「........やっぱお前ら頭がイカレてるよ。オリハルコン級冒険者の中ではピカイチだな」
「失礼な。俺はオリハルコン級冒険者の中では1番まともだと思ってるぞ」
「私もよ」
「オリハルコン級冒険者は皆そういうんだよ。俺達から見れば大差ないってのにな」
あのオカマ野郎とアル中爺さんと同列に扱われるとは、何たる屈辱。
俺もエレノアも、そこら辺の男に色仕掛けを仕掛けることも無ければ、酒の為に一般人と喧嘩することも無いと言うのに。
あ、そう言えばマリーは冒険者ギルド本部に身を置いていたな。
この後、顔を出してやるとしよう。
性に関してはかなりマイノリティーな武神だが、それ以外は割と普通のおっさん........お姉さんだし。
「しかし、そこまで行くと魔王が可哀想に思えてくるな。手足を切り飛ばされた挙句、限界まで魔物を作らされたんだろう?家畜じゃん。いや、家畜の方がまだ愛情を持って育てられるから、家畜以下じゃん。魔王に同情するぜ」
「相手は魔物なんだから、何やっても犯罪にならないだろう?なら、人間様の為に有効活用してあげないとな。慈悲は無い」
「そうね。レベル上げの方が重要だもの。魔王に人権は無いわ」
「生まれ変わっても魔王には生まれたかないな。少なくとも、お前らが生きている時代には」
寿命では死ねない体になってるから、未来永劫魔王には生まれ変われないな。
もちろん、不死鳥云々の話はピィーちゃん達に迷惑が掛かるかもしれないので何も話さないが。
と、ここで部屋の外から大きな魔力を持った者と、よく知っている気配がこちらに近づいてくる。
グランドマスターもその気配に気づいたようで、軽く頭を抱えていた。
「お前たちの話があまりにも現実離れしすぎて忘れていたが、今“武神”の他にももう1人オリハルコン級冒険者が本部にいるんだよ」
「へぇ、俺達の先輩か」
「そうなるな。ただ、ちょっとマリーがしくじってな........」
武神がしくじる?
一体何の話だ?
「まぁ、その。目の敵にされてるから頑張ってくれ、“炎魔”」
「え、私?」
一体何があったのか。
俺とエレノアは首を傾げつつも、世界に7人しか存在しないオリハルコン級冒険者の1人がやってくるのを少し楽しみにするのだった。
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