統率の取れた魔物達


 五大魔境“オマウ”に足を踏み入れてから数時間後、俺とエレノアはいつもの様に視界に入った魔物達を次から次へと殺しては影の中にしまっていた。


 と言っても、数時間歩き回って見つけた魔物は全てハイオーガ。


 正直、この程度の相手では適当に魔術をぶっぱなすだけで全てが終わる。


 貫通力こそ高いものの、俺たちが使う魔術の中では比較的周囲へ被害が少ない“超連射魔道砲ガトリング”をばら撒くだけで終わるのだ。


 へゲスの時は立体的な戦闘を求められたし、魔物がかなり近くまで来ないと姿を表さないからやりにくかったが、平面な上に視界もそこそこ通っている場所での戦闘で苦戦することなど無い。


 要は、イージーゲームだと言うことだ。


「最後の魔境だから少し期待していたけど、余裕ね。適当に魔術を撃つだけで全てが終わるわ」

「どこの魔境も似たようなもんだったけどな。へゲスだけは少し特殊だったけど、ほかの魔境は魔術ブッパで直ぐに終わる」

「ふふっ、確かにそうだったわね。それにしても、このハイオーガ達は少し変ね。オーガは基本的に群れない魔物のはずだけど、最初の1匹を覗いて他は全て集団で行動しているわ」


 エレノアの言う通り、この魔境で出会うオーガ達は少々おかしい。


 オーガ種の魔物達は基本的に群れない。


 子供を作るために一時的に集まるなんてことはあっても、明らかな成体のオーガが5~6体で集まって行動しているなんてことはそうそうないのだ。


 1度や2度なら偶然だと思うかもしれないが、10組以上のオーガ達が群れを作っているとなると怪しさ満点。


 明らかに統率の取れている動きや、連携を見るにギルドマスターが言っていたことが現実味を帯び始めている。


「ハイオーガよりも上位の統率者が出たと見るべきだろうな。ハモンでスタンピードがあった時もハイオーガがオーガを統率していたし」

「ハイオーガよりも上位となると、最上級魔物以上の強さよね?グレイトオーガかしら?」

「かもしれんな。グレイトオーガならハイオーガ達を統率していてもおかしくは無いが、この魔境をオーガ一色に染め上げられる程の兵力を持てるかと言われると怪しい。もしかしたら、それ以上の個体かもしれんな」

「オーガに破滅級の位を持つ魔物なんていたかしら?少なくとも、私たちが読んできた魔物の資料の中にはなかったわよね?」

「ないね。あったら覚えてる」


 今まで読んできた資料の中には無かっただけで、存在していることはあるだろう。


 オーガ種の破滅級か。経験値がかなり貰えそうだな。


 レベル100になってから、さらにレベルが上がりづらくなっている気がするし、破滅級魔物を狩って大きな経験値を手にしたい。


 と言うか、レベル100が上限とかないよな?


 レベル99が上限でないというのは、俺がレベル100になったので分かっているが、レベル100が上限でないという確証はない。


 多くのゲームではレベル100がキリのいい数字の為、そこを上限として設けることがあるが、この世界が青天井である事を祈るしかないな。


 超インフレ系のゲームみたいに。


 インフレ系ゲームって、ダメージとかめっちゃ出る癖に敵もインフレしまくってるから一撃必殺!!みたいな爽快感があまりないんだよなぁ。


 まぁ、ゲームバランス的にそうしないといけないのは分かるが。


 一撃必殺の爽快感が欲しいなら、バカゲーとかやってた方がまだ楽しいだろう。


 ともかく、今はレベル上限が100でないことを祈るしかない。


 あぁ、神様。普段は祈りも信じもしないが、頼むからこの世界のレベル上限が青天井であってくれ。


 レベルを上げることこそ俺の生き甲斐なのだ。


 もうずっとレベルを上げていたい。


 そんなことを思いつつ歩いていると、またハイオーガの群れに出会う。


 ハイオーガ達は一瞬“なんでこんなところに人間が?”と言いたげな顔をしたが、その一瞬が命取り。


 俺もエレノアも即座に魔術を行使し、三体は闇の地獄に誘われ、残り三体はガトリングによって頭の上を吹っ飛ばされた。


 俺もエレノアも、魔物早打ち大会とかあったら上位を取れそうなぐらいに反応がいいな。


 誰かそんな感じの祭りを行ってくれないだろうか?


「魔境を吹っ飛ばせたら狩りも楽になるのだけれど、それが出来ないのはやっぱり退屈ね。隕石を落としまくっていた頃が懐かしいわ」

「ダンジョンでは火力ブッパが正義だったからな。脳死でメテオしてた時は楽しかったよ。今ならもっとやべーのも撃てるけど」

「私も火力重視で作った第九級魔術を早く撃ちたいわね。ジークが前に試しで撃った時は破壊力が凄まじすぎて、魔境を壊しちゃったし」

「さすがにアレは反省してる。ここなら村にも被害が行かないだろとか思ってた俺を殴ってやりたいね。まさか魔力の残滓が村に被害を及ぼすとは思ってなかった」

「あの惨状を見たら気軽には使えないわよね。相手の国を吹っ飛ばしていいならともかく」

「戦争じゃあるまいし、滅多なことでは使えんわな。破滅級魔物が出たんだ!!って言っても、グランドマスターに“お前らなら普通に殺せるだろ”って言われそうだし」


 魔境を壊すなと言われているにもかかわらず、魔境の1つをぶっ壊しているのだ。


 1つなら多少小言を言われるだけで済むだろうが、さすがに2つ目はガチで怒られそうである。


 だから、カール皇国にある魔境もぶち壊したりはしなかったし。


 ちょっと悪ノリが過ぎて、毒の魔境になってしまった事は反省しているが。


 まぁ、一般人は魔境に寄り付かないし、カール皇国も祭りの時以外は魔境に近づかないらしいから大した被害はないと思う。


「あの異端者共は元気にしてるかな?魔境はかなり安全な場所になった思うけど」

「どうせ今日もお互いの理論を話し合って喧嘩してるわよ。容易に想像できるわ」


 少し呆れたように言うエレノアと、その言葉を聞いて想像する俺。


 確かにバディエゴの爺さんとカエナル辺りが今日も喧嘩していそうである。


 それはさて置き、俺たちはさっさとハイオーガを影の中にしまうと次の獲物を探しに行く。


 オーガは色んな場所で狩ってるから飽きが来るのが早いな。


 魔境くん、もう少し魔物のラインナップを増やしてくれよ。


「そう言えば、オークをまだ見かけてないな。オークも出るって話だったのに」

「そう言えばそうね。2年前からオークとオーガが幅を聞かせていると言う割には、オークを全く見ないわ。もしかしたら、縄張りみたいなのがあるかもしれないわね」

「上位種の魔物ほど縄張りを持つ傾向にあるし、確かにそれは有り得るな。俺たちはオーガ達の縄張りに足を踏み入れている訳だ」

「オーガ達からしたらたまったもんじゃないでしょうね。自分たちの家に土足ではいられた挙句、仲間を殺されるのだから。金品目的の強盗よりもタチが悪そうだわ」

「金品は経験値だな。そう考えると俺達ってヤベーな。オーガを人間に置き換えたら稀代の殺人鬼だぞ」


 家に勝手に入り込んだ挙句、命と経験値を奪っていくヤベー奴。


 オーガが人間だったら大問題だが、オーガは魔物。


 どんな扱いをしようが、俺のルール上は問題ない。


 それこそ、拷問とかしても問題ないのだ。


 まぁ、拷問したとしても得られる経験値は変わらないからさっさと殺すが。


 できる限り人間は殺さないのがルール。俺が知らずに巻き込んでいたなんて事があるかもしれないが、少なくとも目に映る人々を殺すことは滅多にしない。


 明らかにこちらを殺意を向けてきた奴や、盗賊のように人の形をしたクズは例外だけど。


 そこのラインを超えたら正真正銘の化け物だろうしな。


 ちなみに、エレノアはここら辺のラインが割と緩い。特に俺関係になるとガバガバだ。


 優しい人や普通に暮らしている人には危害を加えてないから、俺も何も言わないけどね。死んだやつの大体は自業自得だし。


「ふふっ、私達が殺人鬼なら、今頃20位の国が滅んでいるわよ」

「........それは恐ろしい」


 優しく微笑みながらも、目がマジなエレノアに軽く引きつつ、この後も日が暮れるまで魔境でレベル上げに勤しむ俺達であった。

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