窒息死(毒殺)
“粉塵爆発”。
粉末は表面積が大きいので、酸素や火と触れ合う面積が大きく、一定濃度の可燃性粉末が空気中でまっている中で火がついていたりすると引火し、爆発的な燃焼が起こる。
一般的に危険とされていない小麦や砂糖ですら、条件が整えば粉塵爆発を起こすことがあるのだ。
つまり、条件さえ整えれば一般人であろうが粉塵爆発を起こすことが出来るのである。
もちろん、大規模なものはそれなりの準備が必要だろうが。
「ふんじんばくはつ?またジークの変な知識が出てきたわね。詳しく話してみなさい」
「簡単に言えば、魔術を使えない人であろうと条件さえ満たせば起こせる爆発だ。可燃性の粉末を空気中にばら蒔いて火をつければあら不思議。ボカーンと爆発して周囲のものが吹き飛ぶ。実に愉快だと思わないか?」
「へぇ、見たことないけれど面白そうね。それで?その粉塵爆発とやらをどうやって狩りに使うのかしら?」
俺の話に興味を持ったのか、楽しそうに聞いてくるエレノア。
狩りの最中だと言うのに、俺もエレノアも余裕だな。
その物語に出てくる粉塵爆発の使われ方は様々だが、基本的に力のない奴が逆転の一手として使われることの多い粉塵爆発。
周囲の小麦をぶちまけて自分は巻き込まれない位置から点火。その業火で相手を焼き尽くすというのがよくある方法だ。
........某有名ロリータはゴリゴリの強者でも使ってたけど。
それは一旦おいておいて、俺は逆転の一手を考えている訳でもないしそもそも粉塵爆発で魔物を狩ろうとすら思ってない。
いや、粉塵爆発で魔物を狩るつもりではあるが、その爆発で魔物を倒す気は無いのだ。
「エレノア。火はどうやって燃えていると思う?」
「旅の途中でジークが教えてくれたわね。空気を燃やしているのでしょう?魔術で火を発火する場合、魔力を用いて火を付けるけど世界の法則からは逃れられない。空気が一切ない場所では全く火が燃えなかったわ」
厳密には違うが、まぁ、合っていると言っていいだろう。
火が燃えるのに必要な要素の1つだし、何よりこの後の説明で使うからな。
「そうだ。よく覚えているな。では次の質問。生き物が生きるのに必要な物ってなんだ?ゾンビやスケルトンなどの死霊系魔物を除いての話だがな」
「........水や食料。後は睡眠辺りかしらね?」
「他にももっと重要なものがあるだろう?火ですらそれが無いと生きていけない物がな」
「........ジーク、貴方まさか」
とんでもないことを言い出す相棒に若干引き気味なエレノア。
察しが良くて助かるよ。エレノアのこう言う賢いところなんかも俺は好きだぞ。
「そう。空気だ。空気がなければ人も魔物も植物だって生きていけない。さて、最終問題。この魔境の通路全てに粉塵爆発を起こして、空気を燃焼させた場合魔物はどうなるでしょう?」
「死ぬわね。要は水の中に放り込まれるのと同じでしょう?しかも、何も知らずにその水を飲み込む。最悪だわ」
「そうだエレノア。閉鎖的で空気が入ってくる入口が限られているからこそ行える“窒息による死”。実に楽しそうじゃないか」
魔物の研究を主にしていた幽霊から面白い実験の話を聞いた。
儀式魔術を用いて作ったほぼ真空状の空間に魔物を放り込んだらどうなるのか?
答えは簡単で、死あるのみ。
実験に使ったのはゴブリンだったらしいが、ほぼ全ての魔物は呼吸をして生きている。
この魔境は死霊系魔物が幽霊達しか居ない様なので、粉塵爆発一発で簡単に狩りをする事が出来るだろう。
狩りの効率を考えたら、これ程にまでいいやり方などない。
それに、粉塵爆発程度なら魔境を吹き飛ばすこともないだろう。
問題は、このクソ広い魔境全てに粉をばらまく必要があるという点だが、これに関しても既に答えを出している。
趣味でこの魔境の地図を作っていたという幽霊から地図を借り、魔術を用いて粉をあちこちに振りまくのだ。
これに関してはやってみないと分からないが、多分できると思う。そのための魔術なのだから。
「どうだエレノア。たまには一撃で全てを吹き飛ばす狩りってもいいだろ?」
「実に楽しそうじゃない。今までとは違った狩りというのも一興だわ。それに、爆発させるのでしょう?とっても楽しいことになりそうね」
ニッと笑いながらガトリングをブッパなすエレノア。
運良く灼熱の中に入らなかった魔物達をサクサクと処理していくその姿には似合わない笑顔を見た俺は、“流石は相棒。こんな時でも狩りに抜かりがない”と感心するのだった。
【粉塵爆発】
粉塵爆発とは、可燃性の粉塵が大気中に浮遊した状態で着火し、爆発を起こす現象のこと。条件さえ整えば誰でも起こせるものであり、瓶の中に小麦粉とロウソクを立て、ストローを刺して下の小麦粉を巻き上げるように息を吐きかけると割と簡単に出来る(
さて、エレノアに粉塵爆発で魔境の魔物を殺せるんじゃね?と言う提案をしたのはいいのだが、ここで少し問題が発生した。
その理由は簡単で、幽霊達がこの話を聞いてやる気満々なのだ。
魔術を使わずとも起こせる爆発というのは、研究者たる彼らの魂に火をつけたようで、少し話しただけでそれはもうポンポンと“あれも入れてみようこれも入れてみたらいいんじゃないか?”という案が飛んでくる。
その中でも、薬草や毒等に詳しい異端者カエナルがとにかく煩いのだ。
「なぁ、その爆発の粉を毒に変えよう。そしたら爆破の後に毒ガスが撒き散らせて確実に魔物を殺せるぞ」
「だったら最初から毒ガスを撒けばいいだろ........」
「そう!!その通り!!だが、私の作った薬品の中には、固形物で摂取した場合一切毒にならないのに燃やして気体に変えると毒となるものがある。それを魔術に落とし込んでやってみてくれないか?絶対楽しくなるぞ!!」
「........やはり異端者はぶっ飛んでるわね。生前にそんな毒を作ってたってことでしょう?」
「ん?あぁ、暇つぶしに遊んでたら出来た代物でな。実用性は無かったが、暗殺なんかに使えるなーと思って取っておいたんだ。どうだ?薬草から作る知識を教えてやるから、毒の粉を混ぜてくれないか?」
........と、まぁこんな感じでずっと毒ガスを勧めてくるのである。
実際問題、酸欠や一酸化炭素中毒で魔物が完全に死ぬかどうかは分からない。実験をするつもりではあるが、保険を掛けておくという意味ではいい案なのかもしれないな。
それに、レシピを教えてくれれば使う日が来るかもしれない。
しかし、この提案を許すと、ほかの幽霊達が“俺も俺も”と言い出すのが目に見えているのだ。
全く、研究者というのはどうしてこうも自分勝手なんだ?俺を見習え俺を。
「よし、なら、カエナルの後ろでほかの提案を持ってきてるヤツらを黙らせろ。そしたらその提案を受けてやってもいいぞ」
「ほんとか?!待ってろ、今すぐ黙らせてくる!!」
お手伝いをしたらお小遣いを上げると言われた子供のように、目を輝かせながら裏に控えていた幽霊達と喧嘩を始めるカエナル。
本当に実験したいんだろうな。魔物を殺すとかどうでも良くて、自分の作った作品に似た魔術がどのようなものなのか知りたがっているようにも見える。
「ハッハッハ。あのバカがここまで必死になるとはな。実に愉快だ」
「バディエゴの爺さんはいいのか?無理のない範囲なら頼まれてやってもいいぞ?」
「儂はジーク殿がレベル100になれるのであれば他はどうでもいい。むしろ、確実性の増すカエナルの提案を押しているほどだ。儂の仮説を証明してくれよ?」
「........もし俺が人として進化したらどうするんだよ」
「なんとしてでも君をここにと止めて色々なことを聞くだろうな!!」
“ハッハッハ!!”と笑いながら、カエナルの加勢に行くバディエゴ爺さん。
俺は、頼むから進化しないで欲しいと願いつつ、俺達を手伝ってくれる幽霊と今後の話を進めるのだった。
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