父の手紙


 親父の母親、アン婆に迎えられた俺達は泊まる部屋を案内された後リビングで手厚い持て成しを受けていた。


 部屋は二人部屋。別々の部屋も用意出来るとは言われたが、俺もエレノアも普段から一緒に寝ているので同じ部屋にしてもらう。


 多分、ベッドも1つしか使わないんだろうな。


 実家に帰っていた時も、俺を抱き枕代わりに寝ていたし。


「この子がバカ息子の息子か。確かにデッセンと似ているところも多いなぁ」

「初めまして。ジークです」

「そして礼儀正しい。あのバカ息子が人に礼儀を教えられるとは思えんし、奥さんの頑張りのおかげかねぇ........儂はビル。ビル爺と呼ぶといい」


 親父と同じ髪型であるオールバックの白髪と、オッドアイの綺麗な目。


 親父は赤と青だったが、ビル爺は青と緑色のオッドアイだった。


 老人と呼ぶには少々体がガッチリしすぎており、60代だと言うのにそこら辺のチンピラ程度なら殴り殺せそうな体格をしている。


 流石は親父の父親。


 体の作りがそっくりだ。


「デッセンは元気かい?と言うか、今はどこで何をしているのだね」

「父さんはシャールス王国のエドナスっていう小さな街で料理屋を営んでるよ。少なくとも、俺が見た限りでは元気そうだったね」

「料理屋........?あのデッセンが?」

「ほっほっほ。昔は料理の“り”の字もしたことが無い子だったのにねぇ。あ、シャルルと言う奥さんがメインで料理を作っているのか」

「いや、父さんがメインで料理を作ってるよ。仕込みから調理までほぼ全部父さんがやってる。もちろん、母さんも手伝ってるけど」

「........婆さんや聞き間違いか?あのワルガキのデッセンが真面目に料理をしていると聞こえたのだが」

「聞き間違いでは無いだろうねぇ。あの子が真面目に料理をする光景が想像できないけれども」


 一体親父はどんな幼少期を過ごしたんだ。


 ビル爺とアン婆がこの世のものとは思えない顔で俺の話を聞いているぞ。


 俺の知っている親父は、息子に剣を教えたり親父の威厳を保とうとこっそりレベル上げする様な人なんだけどなぁ。


 時間は人を変えるとは言うが、この2人の反応を見るに正しくその通りなのだろう。


「ねぇ、ジーク。デッセンさんから手紙を預かってたわよね?」

「あ、忘れてた。ビル爺、アン婆。父さんから2人に会ったら手紙を渡してくれって言われてたんだ」

「ほう?今の今まで手紙なぞ出したこともなかったバカ息子からの手紙か。一体どんな言い訳が飛び出すか楽しみだなぁ」

「ほっほっほ。内容によっては呪うことも考えなければならんかもしれないねぇ。ジークちゃん達も一緒に見るかい?」

「........見てみようかな。父さんがどんなこと書いたのか気になるし」

「私も見させてもらおうかしら。デッセンさんの手紙とかちょっと気になるわ」


 実の息子からの手紙にちょっと嬉しそうにしつつも、照れ隠しをしているのか“呪う”と言うアン婆達。


 俺は影の中から(アン婆達には分からないようにローブの中から取り出したように演技している)手紙を取り出すと、机の上に置く。


「綺麗に折りたたまれておるな。奥さんのお陰か?」

「早速読むとしようじゃないか。ジークちゃん達もこっちに来なさい」


 アン婆に呼ばれ、俺達は2人の後ろに移動する。


 さて、親父はどんな手紙を書いたのだろうか。


 ビル爺が手紙を開くと、俺達は少しワクワクしながらその内容を読む。


 手紙に書かれた内容はこんな感じだった。


“親父、お袋、元気にしてるか?


 この手紙を読んでいるということは、俺の息子であるジークが2人の元を尋ねてきたんだろう。


 俺は今、シャールス王国のエドナスという街で、妻のシャルルと一緒に料理店を営んでいる。


 シャルルとの出会いとか書くのが面倒なので省くが、ともかく、17~8年前に結婚して冒険者を引退したんだ。


 ジークの親になってようやく親父とお袋の大変さが分かった。勝手に家を飛び出してごめん。そして、今までありがとう。


 ジークは俺と違っていい子だ。ちょっとレベルを上げることに執着しすぎているところもあるが、贔屓目無しに天才だと思っている。


 出来れば、村にいる間はジークの面倒を見てやってくれ。後、その隣にいるであろうエレノアの事もな。


 エレノアはジークのパーティーメンバーであり、我が家の娘的存在だ。シャルルがとても可愛がっているし、ジークの良き理解者だと思ってる。


 もし時間があれば、いつか故郷に帰るよ。


 それじゃ、死なない程度に生きててくれ。弟にもよろしくな。


 追記、家出した日に親父の気に入っていた花瓶を割ったのは俺だ。親父達からの目を逸らすためにわざと割った。反省はしているけど後悔はしてないから、呪わないでくれ。


 デッセンより”


 ........うん。途中まではいい話だなと思って読んでいたが、最後の最後で台無しだな。


 親父が親としての大変さを理解し、ビル爺達に謝罪と感謝を告げているところまでは良かった。


 でも、最後で全て台無しだよ。


 12歳の時に家を飛び出したとは聞いたが、花瓶を割って目を逸らした後家を飛び出たのか。


 街の人々から祝福されて旅に出た俺達とは大違いだな。


「フッフッフ。やはりあの花瓶を割ったのはデッセンか。あんのバカ息子。今からでも呪ってやろうか?」

「まぁまぁ、爺さんや。既に過ぎた話だし、デッセンもジークちゃんを育てて人の苦労を知ったのだから許してあげなされ。全く、少しは成長したのかも思えば、そんなことは無かったねぇ」


 口ではそう言いつつも、やはり実の息子からの手紙が嬉しかったのか少し口角が上がっている祖父母。


 昔のことは知らないが、かなりのワルガキだった親父と言えど可愛い息子なのだろう。


「嬉しそうね」

「だな。口では文句言ってるけど、全身から嬉しさが垣間見える。俺が手紙を送った時も父さんと母さんはこんな感じだったのかな?」

「きっとこんな感じだったわよ。しかも、シャルルさん達のことだから大号泣していたはずだわ。あの二人はジークの事が大好きだからね」

「........俺が初めて自分の力で稼いだ金で買ったアクセサリーも未だに大事に付けてるしな」

「ふふっ、私、シャルルさんに自慢されたわよ?“ジークが初めて買ってくれたプレゼントなのよ”って。私もちょっと対抗して、このネックレスを自慢しちゃったわ」

「........子供か?」

「それだけど嬉しかったって事よ」


 エレノアはそう言いつつ、さりげなく俺の後ろに回って抱きつく。


 未だに頭一つ分以上のの身長差があるお陰で、俺の頭はエレノアの顎を載せる場所になっていた。


 俺が知らない所で、お袋とエレノアの自慢大会が開かれていたんだな。


 プレゼントをあげた側からすれば嬉しい限りだが、少し恥ずかしいのも事実。


 俺は少しだけ顔を暑くしながらも、頭に顔を乗せるエレノアの頬を撫でた。


「ねぇ、ビル爺。この弟って言うのは?」

「む?聞いてないのか?デッセンには弟がいるのだよ。あのバカ息子とは違って真面目で優秀な弟がな」

「デッセンの一つ下の子がいるの。明日この家に来るから、その時に紹介するかね。私達の可愛い孫であり弟子の子も来るから、仲良くしてやってくれ」

「孫........って事は、俺の従兄弟になるのか?」

「そうなるわね。デッセンさんの弟とジークの従兄弟........どんな人なのかしら?」

「普通だよ普段。ちょいと孫は元気が良すぎるが、それ以外は普通さね。さて、今日はデッセンの話を聞かせておくれ。ジークちゃん達も聞きたいだろう?小さい頃のデッセンの話を」

「聞きたい聞きたい。父さんはどんな子だったの?」

「そうだな──────────」


 こうして、その日は親父の話をして一日が過ぎ去る。


 親父は想像していたよりもやんちゃで、大分ビル爺やアン婆を怒らせていたらしい。


 それでも、文句を垂れながら楽しそうに親父のことを語る二人を見て、親父はなんやかんや愛されているんだなと思うのだった。




 精神世界の考察コメが多く来ていて嬉しいです。ニヤニヤしながら見ていていました。

 後、混沌君達が毎回経験値配達員な訳ないだろ‼︎今回は違うって‼︎(今までの事に目を逸らしながら)

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