ルリスの冒険者ギルド
五大魔境の1つ“グレイ”から最も近い街ルリス。
その街の近くに降り立った俺達は、早速槍を構えられて警戒されていた。
リベトの街でもこんな感じだった気がするな。槍を突きつけられて、かなり警戒されていた記憶がある。
この世界では、空を飛んで移動するという手段がかなり珍しい。
基本的な移動は馬車か徒歩なので、こうして空から舞い降りてくる光景を見て警戒してしまうのは仕方がないだろう。
それにしても警戒しすぎな気もするが。
「前にもあったわね。こんな感じの光景」
「空を移動する奴は珍しいからな。しかも、黒い鳥に乗ってやってきたとなれば警戒もするさ。まぁ、オリハルコン級冒険者と証明出来れば簡単に通してもらえるだろうけど」
「冒険者ギルドの最高戦力ともなれば、色々と融通が効くものね。本当に便利な身分よ」
槍を構えられ、殺気すら見せられていると言うのに普段通りな俺達。
相手は職務を全うしているだけだし、何よりこの程度の相手では何をどうされようが俺達を殺すことは出来ない。
俺達がこの門番達に脅威を感じることなどないのだ。
フハハハハ!!文字通りレベルが違うのだよ!!
「何者じゃ。貴様ら」
「見ての通りただの旅人さ。冒険者ギルド所属のね」
不審者を見る目でこちらを警戒する門番のドワーフの問い掛けに、俺は普段通り答える。
もちろん、自分が冒険者ギルド所属だと言うことを示すために冒険者カードも取りだして見せた。
「........動くなよ。少しでも変な動きを見せれば、貴様らの心臓を穿つからな」
「冒険者ギルドのカードが見たいんだろう?どうぞどうぞ」
警戒心剥き出しでジリジリとよってくるドワーフの門番は、俺が差し出したギルドカードをひったくる様に取り上げるとマジマジとカードを見つめる。
そして目を見開きながら高速で瞬きをすると、1度目を擦ってからもう一度ギルドカードを見直した。
このドワーフのおっちゃん、かなり面白い反応を見せるな。小柄な体格も相まって、見ていてちょっと楽しいぞ。
「お、オリハルコン級冒険者........じゃと?」
「その通り。オリハルコン級冒険者“天魔”ジークだ。もしそのカードが偽造だと疑うなら冒険者ギルドに言って検査に出してもいいぞ。どうせ本物だしな」
「私もオリハルコン級冒険者よ。“炎魔”エレノア。私のカードも調べたければどうぞ。でも、なるべく早くしてくれると嬉しいわ」
エレノアはそう言って、自分のギルドカードを門番のドワーフに渡す。
相手が相手ならパクられてギルドカードを紛失してしまいそうだが、相手は門番だし俺達から逃げれるわけもない。
それに、このギルドカードは本人の魔力が登録されているので、他の人が使える代物でもないのだ。
何度も目をパチクリとさせ面白い反応を見せる門番のドワーフは、どうしたものかと数秒悩んだ末にひとつの結論を出す。
ギルドカードを一旦俺達に返すと、槍を収めて若干震えた声で言った。
「そこまで会うなら検査してもらう。妙な真似をするなよ?もし、偽物なら捕らえるからな。おい、お前達も付いてこい」
「了解です」
「了解」
どうやら、俺達が本物かどうか決め兼ねているらしい。
それにしても真面目でいい門番だ。
俺達が子供に見えるからと侮らず、オリハルコン級冒険者の可能性が出てきてもキチンと対応する。
どこぞの事実を隠蔽しようとした門番や、金級冒険者と見間違えた門番とはエライ違いだな。
「真面目でいい人そうね。1度打ち解けれたらかなり友好的にしてくれそうだわ」
「そうだな。この人が門番なら安心できそうだ」
俺とエレノアは、“付いてこい”と言わんばかりに歩き始めるドワーフのおっちゃんの後ろについて行くと、ルリスの街に足を踏み入れるのだった。
ちなみに、空から降りてきたせいで門の前で並んでいた人達を思いっきり抜かしている。
なんというか、ごめんね?勝手に抜かしちゃって。
【ルリスの街】
五大魔境“グレイ”から最も近い街。最も近い街ではあるものの、火山の噴出物や魔物の脅威から逃れるためにかなり遠くに街を構えており、普通に歩いていこうとすると三週間以上もかかる(歩いて1日で魔境に着くリベトがおかしいだけ)。
魔境に鉱石を取りに行く物が多く居り、ドワーフがかなりの数を占めている。
街の中に入ると、そこはどこか見覚えのある街そっくりだった。
石造りの多い家達と、相当高度な技術で作られたであろう装飾。
かつて訪れ、鉱石の魔王と対峙したブルベンの街にそっくりである。
「ドワーフがかなり多いわね。ドルンを思い出すわ」
「そうだな。違う点をあげるならば、ドワーフ以外にも亜人やエルフもそこそこいるって所か。しかも、人間がかなり少ない。過去の差別によって起こった人間国家との戦争の亀裂がまだ残っているんだろ」
「となると、少し住みにくいかもしれないわね。戦争が終わり和解してから約500年だったかしら?たった500年程度で全ての人の考えを変えるのは難しいからね」
この国はかつて人間国家と戦争状態にあったと聞く。しかも、かなり苛烈な戦争だったらしく、死者は当時のルシウス連合国の人口の20%以上にも及んだそうだ。
それだけ死者を出せば、人間に恨みを持つ者も多くなる。さらにドワーフやエルフは長寿種であり、恨みを後世に伝えるには最適とも言えるだろう。
エレノアの言う通り、この国はいい国ではあるが人間か住むとなると住みにくいかもしれないな。
「よく勉強しているな。確かにこの国は人間が住みにくいとされている。しかしながら、過去の遺恨を乗り越えつつあるのだ。出来ればこの国を嫌って欲しくは無い」
「それは俺達が住んでみて決めることだろう?えぇと........」
「ゴンザレスじゃ」
「そうか。よろしくゴンザレス」
俺はそう言って門番のドワーフ、ゴンザレスに右手を差し出すが、彼はチラリとその手を見ただけですぐに前を向いてしまった。
「ふん。貴様らが本物だったならば手を握ろう。今はまだ本物のオリハルコン級冒険者か分からんのでな」
「仕事熱心で何よりだよ」
「ココ最近、不審な輩の話を耳にする。だからこそ、警備は万全にせねばなるまいよ」
「いや、ゴンザレスさんいつも真面目でしょ」
「そうだな。真面目だな」
「そこ!!うるさい!!」
しばらく歩けば、冒険者ギルドが目に入る。
このルリスの街も決して大きな街とは言えないので、床一面に大理石が張られた巨大さは無かった。
しかし、街の雰囲気に合わせて石で作られている。しかも、他の家と違ってかなり気合いが入っていそうだ。
冒険者ギルドに入ると、ドワーフやらエルフの冒険者たちが楽しそうに酒を飲んで話していた。
今日はオフの日なのだろう。
俺達が入ってくると、一斉に視線を集めて会話が止まることに目を瞑れば中々いい雰囲気の冒険者ギルドである。
「ゴンザレスさん。どうかされました?」
「こやつらのギルドカードを検査してもらいたい。流石の儂でも判断できんのでな」
「はぁ、ではそちらのお二方はギルドカードを提示してください」
俺とエレノアは言われた通りギルドカードを出す。
ドワーフの受付嬢は俺達からギルドカードを受け取ると、目を見開き大声でランクを叫んだ。
「お、オリハルコン級冒険者?!」
一瞬にしてザワつくギルド内。
オリハルコン級冒険者と言えば、この世界に7人しか存在しない人並み外れた戦闘力を持った者達なのだ。
その内の2人が来たとなれば、ザワつきもするだろう。
「人気者ね」
「ほとんどの冒険者は、オリハルコン級冒険者なんて見たことないだろうからな。正しく御伽噺の存在だし」
「目立つのはいいけど、面倒事が来ないようにしてもらわないといけないわね。後でギルドマスターに頼みましょうか」
「そうするか。偉い人が来ても疲れるだけだし、何より普通に面倒だ」
俺とエレノアはザワつくギルドの中でのんびりとそう話しながら、アワアワと慌てながら検査するドワーフの受付嬢を見るのだった。
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