五大魔境“グレイ”へ
次の目的地を定め、その計画を立ててから四日後。
遂にこのリベトの街ともおさらばする時が来た。
既に挨拶回りは済ませてあるのだが、この街の救世主が街を去ることが広まりに広まり、リベトの街の南門には防衛戦をしていた時ぐらいの人が集まっている。
下手をしたそれよりも多いかもしれない。
「随分と壮大な見送りだ。これだけの人に見送られるのは故郷のエドナス以来かもな」
「そうね。あの時は12年間の積み重ねの結果だったけど、今回は3ヶ月弱よ?街の危機を救っただけだと言うのにね」
「ハッハッハ!!それだけみんなお前達に感謝してるんだよ。見ろよ、あの子供達を。お前たちのことを何も知らない子供が、英雄を見るかのように目をキラキラとさせていやがる。正気とは思えないな」
「人を見る目がある将来有望な子達じゃないか」
街の危機を救った救世主と言うのは、相当な人気者らしい。
俺たちの見送りに来ていたスカーが俺の背中をバシバシと叩きながら盛大に笑い、俺もその笑いにつられて笑う。
街が魔物に襲われたり、何処ぞのクソッタレなファック野郎がエレノアに手を出そうとしてぶちのめしたりと、色々とあったが基本的にいい街だった。
今まで訪れた街も良かったが、故郷を思い出させるこの街はとても落ち着く。
木でできた小さなギルドに、小さなコミュニティを形成する街のおばちゃん達。隣人との距離が近く、家族同然のように話す人々の温かさは故郷と似たものがある。
「もう行くとはな。魔境の魔物はいいのか?」
「溜め込んでた魔物の死体を見ただろう?あれだけの数を狩れば、嫌でも魔境はただの森になるよ。魔境を歩く冒険者にとっては朗報だな。しばらくは魔物の脅威もなく、珍しい薬草を採取出来ると思うぞ」
俺がそう言うと、ギルドマスターがとても苦々しい顔をする。
これから始まる解体祭りを想像して、軽く嫌気がさしたのだろう。
「いつもとんでも無い数の魔物を持ち込んでくるとは思っていたが、それが氷山の一角だとは思わなかったぞ。なんだあの数は。冒険者ギルドの訓練場だけじゃ足りないから、あちこちの空き地まで使ったってのにまだ足りなかったぞ」
「早めに処理することを薦めるよ。なんせ10日前に狩った奴とかもあるからな。既に腐ってるやつは捨てて燃やしてはいるけど」
「ゴブリンたちの死骸を燃やすよりもやりごたえがあって楽しかったわね。ちょっと勿体なかったけど」
「勿体ねぇし、頭がどうかしてんるじゃないか?俺が今まで出会ってきたオリハルコン級冒険者の中でも、お前達は群を抜いて頭がおかしいよ」
失礼な。俺はどこぞの酒飲みと、ミニスカ履いた筋骨隆々な化け物よりは常識があるぞ。
俺達はただ魔物を狩っているだけで誰かに迷惑をかけたりしてないが、アイツらは平気で他人に迷惑かけるからな。
多分、剣聖とかがここに来てたらもっと面倒な騒ぎになっていたはずである。
ちなみに、この魔境で狩った魔物達は腐っている奴は全て燃やして処分し、残りは冒険者ギルドに寄付した。
さすがにこれ以上この街の冒険者ギルドの金庫を荒らす訳にも行かないし、かと言って他の街に持ち込んでも面倒になる。
そんな訳でお世話になったリベトの街に全て寄付したのだ。
決して処分が面倒だったから投げた訳では無い。うん。決して。
尚、気づいたら十万近いインパクトボアが影の中にしまわれており、丸一日かけて腐ったヤツをエレノアと一緒に処分していたりもした。
残った分だけでも大体6万体近くはおり、ギルドマスターの言った通り訓練場どころか空き地にすら収まらなかったので街の外に放置してある。
街の人々が総出で解体作業をしても、数日はかかる事だろう。
一応、血の匂いで魔物がよってこないように森の中も掃除しておいた。
これで、恩を仇で返すなんてことは無いはずである。
「やっと魔物の血の匂いが取れたと思ったら、また血の匂いに染まるのか........俺も数日は解体作業にかかりっぱなしになると思うと、嫌になるぜ」
「どうせタダでインパクトボアの肉が貰えるんだから文句言うんじゃねぇよスカー。それよりもインパクトボアの皮をどう捌くかを考えなきゃならん俺の身にもなれ。領主様も困ってたぞ。さすがに量が多すぎるってな」
「この街だと今、インパクトボアの皮がオーク肉より安いからな。どこぞの冒険者が狩りまくってくれたおかげでいい防具が買えたぜ」
そう言って笑い合うギルドマスターとスカー。しかしながら、ギルドマスターの目があまり笑っていない。
今後のことを考えると、笑うに笑えないのだろう。
でも、其れがギルドマスターの仕事だから頑張ってくれ。
その後も、関わりのあった人達に別れの声をかけられる俺達。
宿屋のおばちゃんは餞別としてフライパン武術用のフライパン(2つ)を渡してくれたし、“昼ごはんに”と弁当まで作ってくれていた。
フライパン武術は習ってないし普通に殴った方が強いので、このフライパンは料理用に使わせてもらうとしよう。
「天魔さん、炎魔さん!!僕頑張っておふたりの隣に立てるぐらい強くなります!!」
「頑張れよアーラン。だが、命あっての強さだ。先ずは死なないことを第一に考えろよ」
「そうね。死んだら元も子も無いもの。死なない程度に頑張りなさいアーラン」
「はい!!」
この4日間様々なことをしていたが、アーランにも色々と教えられることを教えていた。
狩りの基礎や森の歩き方なんかはさすがに知っていたので、アーランにとっての最適な戦い方を模索してあげていたのだ。
結果、武器が何故か剣から鉄糸に変わり、戦闘スタイルもガラリと変わったのだが、本人が満足しているし普通に剣を振っていた時よりも強いので良しとしよう。
後はそのスタイルで頑張ってくれ。
昨日はホブゴブリンを一人で倒したとも言っていたし、彼が高レベル冒険者になる日もそう遠くないかもな。
「この離れたらどこに行くんだ?」
「五大魔境の1つ“グレイ”に行こうと思ってる。ここから1番近いしな」
「また魔境かよ。まさかそのまま五大魔境全てを消すつもりか?」
「そのつもりだよ。出てくる魔物が弱すぎてレベル上げに適さないとかじゃない限り、ほとんどの魔物を狩り尽くすね」
「マジでぶっ飛んでるな。頭のネジが外れてやがる」
「全くだ。アーラン、さすがにこんな無茶苦茶なやつを参考にするなよ。人には人のペースってものが有るんだからな」
「流石にわかってますよギルドマスター。もっと強くなってから魔境に行こうと思います」
「いや、そう意味じゃなくて........」
“魔境に狩りに行くな”と言いたいギルドマスターと、“もっと強くなったら行け”と勘違いするアーラン。
わずか4日しかも教えていないが、いい感じにアーランもレベリング厨になり始めている。
これはウカウカしていると俺たちの獲物が掻っ攫われるかもしれないぞ。
アーランの成長が楽しみだなと思っていると、エレノアが肩を叩く。
「そろそろ行きましょうジーク。あまり長話していると、名残惜しくなってしまうわ」
「そうだな。この街は故郷思い出して居心地が良くなっちまう。そろそろ行こう」
「行くのか?」
「あぁ、世話になった。また近くを通ったら顔を出すよ」
「世話になったわね。楽しかったわ」
「オリハルコン級冒険者様にそう言われると悪い気はしないな。おい!!野郎共!!街の救世主様の旅立ちだ!!盛大に祝やがれ!!」
「「「「「「ウヲォォォォォォォォォォ!!」」」」」」
空気を、大地を揺らす歓声を背中に受け、俺達はリベトの南門をくぐる。
門を潜る際、俺たちに敬礼していたのは、最初に出会った門番だった。
「お気をつけて。私達は何時如何なる時でも貴方様方をお待ちしております」
「........悪かったな。オリハルコン級冒険者と名乗らなくて」
「いえ、気づけなかった自分が悪いので。それでは、良い旅路を」
門を潜り終えると、俺は黒鳥を召喚する。
その背中に飛び乗ると、最後に手を振って俺たちを見送る街の人々に視線を向けた。
「いい街だったな」
「そうね。とても楽しかったわ。街の人々との交流も多かったし、個人的にはかなり気に入った街ね」
「また来るか」
「そうね。でも、それはきっと遠い先の話よ。行きましょう。次の狩場に」
「行くとするか」
俺とエレノアは1度街の人々に向かって手を振ると、黒鳥に指示を出して空に舞いあがる。
本当にいい街だった。次来る時は、成長した街を見に来よう。
俺はそう思いながら、五大魔境“グレイ”を目指すのだった。
この章はこれにてお終いです。沢山のコメントいつも有難うございます。個人的には、ジークがエレノアを守る為にキレているシーンが好きだったり。
次は魔境グレイ‼︎また魔境が消えるだろうけど、ジークとエレノアからしたら関係のない話だから大丈夫。
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