五大魔境
グランドマスターから依頼を受けた2日後、依頼を全て終えた俺達は纏めてグランドマスターに報告をしていた。
狩った魔物は既にギルドの解体所に運ばれており、今頃数多くのギルド職員がヒィヒィ言いながら査定してくれているだろう。
上級魔物を狩る際に取り巻きも倒しまくってたから、ざっと100近い魔物の死骸があるからな。
いつもお疲れ様です。
「........速すぎだろ。最低でも1週間はかかると思ってたぞ」
「上級魔物如きに今さら手こずらないからな。こちとらオリハルコン級冒険者なんだよ」
「俺の知ってるオリハルコン級冒険者は、男をナンパしたり酒を飲んだくれる様な奴しか知らないからな。依頼に対してやる気がないんだよ」
武神と剣聖の事だな。
確かにあの二人は依頼をほっぽり出して別の事をやりそうではある。というか、間違いなくやるだろう。
「まぁ、依頼が早く終わってくれる事に越した事は無い。ご苦労だった。報酬は査定は終わり次第受け取ってくれ」
「そうするよ。ところでグランドマスター、話は変わるんだがいい狩場を知らないか?」
俺がそう質問すると、グランドマスターは心底嫌そうな顔で俺を見る。
その目は、武神や剣聖に向ける目と同じものであった。
「これだけ魔物を狩ったと言うのにまだ狩りがしたいのか?仕事熱心すぎて涙が出そうだ」
「そう思うなら少しはその嫌そうな顔を隠せよ。本音が顔に書いてあるぞ」
「俺に迷惑しかかけんオリハルコン級冒険者共に気遣いは不要だ。で、ここら辺にそんな狩場はないぞ。少なくとも、お前達が求めているような狩場はな」
「それは分かってる。俺が聞いてるのは、ここら近辺の話じゃなくて世界の話だ。あちこちに支部を持つ冒険者ギルドなら、上級魔物や最上級魔物が溢れてるような狩場を知ってるだろう?」
「あぁ、なるほど?そういう意味で聞いてたのか」
グランドマスターはそう言うと、ゴソゴソと机の棚を漁ってある紙束を取り出した。
そして、それを俺に向かって放り投げる。
「これは?」
「“五大魔境”と呼ばれる危険でランクの高い魔物が多く溢れる場所の資料だ。それを見れば、お前達が求めてる狩場も見つかるだろ」
グランドマスターから渡された紙束をペラペラ捲ると、そこにはこの大陸の中でも危険度の高い“魔境”の情報が書かれていた。
冒険者ギルドだから把握しているとは思っていたが、想像していたよりも詳しい事が乗っている。
魔境の位置とその魔境に出てくる魔物の種類。もちろん全てが分かっているわけでは無いだろうが、どのような魔物が出てくるかを知っているのと知らないことでは狩りのしやすさも変わるだろう。
エレノアも“五大魔境”とやらに興味があったのか、俺の持つ紙束を覗き込む。
「“五大魔境”、名前では聞いたことがあったけど、こうして情報で見るのは初めてね」
「知ってるのか?」
「魔境と呼ばれる魔力が濃くて魔物が多く集まる場所の中でも、最も危険な魔境よ。五つあるから“五大魔境”と呼ばれているわ」
「へぇ、魔境の定義とか知らんかったな」
「普通は知らないわよ。私も学園でチラッと聞いた程度だわ」
何となく魔境という言葉を使っていたが、ちゃんとした定義があるんだな。
何となく“魔物が多く集まるところ”と言うことは知っていたが。
今まで俺は近くに狩場がないかとしか聞いてこなかったから、“五大魔境”の話が出てこなかったのだろう。
師匠に魔術を教わるまでは徒歩の旅だったから、あまり遠くには行けなかったしな。
師匠に関しては生きてきた時代が違いすぎるので、なんとも言えない。知っていたかもしれないし、知らないのかもしれない。
興味深くペラペラと紙束を捲っていると、グランドマスターが声をかけてくる。
「五大魔境には破滅級魔物まで居るって話だ。もし行くなら気をつけろよ」
「破滅級魔物と言うと、魔王でもいるのか?」
俺達が唯一遭遇した破滅級魔物“オリハルコンゴーレム”は、“魔王”の名を冠する魔物であった。
もし五大魔境に魔王がいるのであれば、狩りが捗りそうだな。
自ら魔物を生み出してくれるとか、俺達にとってはただの経験値以外の何物でもない。
もし居るのであれば、真っ先に狩りたいな。
俺とエレノアのワクワクがグランドマスターにも伝わったのか、グランドマスターは人では無い何かを見るような目でこちらを見ながら呆れ果てる。
「なんでワクワクしてんだよ........魔王かどうかも分からん。如何せん、危険すぎて近づけないんだ。その情報も隠密が得意な冒険者が、その場所にしか生えない希少な薬草なんかを集めていた時に目撃した物を纏めただけだしな」
「つまり、いる可能性もいない可能性もあるわけだ」
「俺としては居ない事を祈りたいね。魔王の対処なんてしたくねぇ」
グランドマスターも暇じゃないし、魔王が現れたとなればギルドの総戦力を持って対処に当たらないといけないからな。
オリハルコンゴーレム君の時はあまりにも相性が良すぎた為討伐されてしまったが、本来は冒険者ギルドのみならずドルンの総戦力も合わせて戦う相手である。
それでも、過去にオリハルコンゴーレムが出現した際はオリハルコン級冒険者が二人も殉職しているのだから恐ろしい。
やっぱり、戦いにおいての相性差も重要だな。
俺がそんな事を思っていると、エレノアがある場所を指差す。
それは、次に俺達が向かうジュラール帝国より最も近い魔境だった。
「1番近いし、ここにする?」
「そうだな。近い順に潰してくか。1番遠い魔境は真逆だしな」
「まぁ、近いと言っても、国を五つ程跨いでるけど」
「それはしょうが無い。でも、ダンジョンで放置ゲーが出来れば移動中もそれなりの効率で経験値を稼げると思うぞ」
「そうね。そうと決まれば、さっさと準備しましょう。まだ見ぬ新天地で荒稼ぎよ」
「いいねぇ。この街は狩場がなくて退屈だったし、その鬱憤をダンジョンで晴らすとするか」
そうと決まれば早速行動あるのみ........なのだが、この五大魔境の情報は貴重である。
忘れる可能性も大いにあるので、写書きを作っておくとしよう。
「グランドマスター。この紙に書いてある事を写してもいいか?」
「いいぞ。別に機密情報という訳でもないからな」
グランドマスターに許可をもらった俺は、紙を貰うと魔術を発動させる。
第三級補助魔術“
これは移動中の暇潰しに俺が作った魔術であり、簡単に模写ができるというものだ。
風景なんかもやろうと思えば出力できるが、正直あまり使い道がなくて出番のなかった魔術である。
こう言う“普段使わないけどあったら便利”な魔術って意外と誰も作らないんだよな。
それを作る時間があるなら、もっと汎用的な魔術を皆作りたがるのだろう。
俺が模写している様子を見たグランドマスターは、目を見開きながら口を開く。
「ナニソレ」
「俺が作った魔術。風景や紙に書いてある事をそのまま出力できる魔術だ」
「クッソ便利じゃねぇか。こちとら書類の複製とか全部手書きだぞ」
「教えてやろうか?第三級補助魔術が使えれば使えるぞ」
「マジで?是非とも教えてくれ。ギルドから使用料払うから」
割とガチな雰囲気で迫ってくるグランドマスター。
俺達は書類仕事をしないから分からないが、書類仕事が主なグランドマスターからすれば喉から手が出るほど欲しい魔術なのだろう。
ここで少しいい顔をしておけば、後で何か問題を起こしてもグランドマスターが味方してくれるかもという打算の元、俺はグランドマスターに使用料を貰って魔術を教えてやる。
タダで教えてやろうとしたら、“タダより高いものは無い”と言われた時は思わず“分かってるじゃん”と思ってしまった。
グランドマスターに借りを押し付ける機会だったのに残念だ。
尚、次いでとばかりに魔境の調査と魔物の排除の依頼を押し付けられた。ちゃっかりしてやがる。
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