空色自販機

青空を突き抜けるような爽快さ…と言えば何を思い浮かべるだろうか。


個人的な思想を吐露するに変わりないが、学生時代の多くを受験勉強と部活動で過ごしたせいか帰宅時の水分補給に身も心も潤された記憶が色濃く残っている。

真夏の部活動終了時、顧問の先生が非常に良心的で時たま冷たい飲み物やアイスを振る舞ってくれた。勿論、其がなくとも練習は毎日あるため必ず学校に赴くのだが…。


日増しに上昇する気温。

ジリジリと肌を焼く熱射が運動後の身体を一層弱らせる。茹だるような夏の盛り…自転車通学で友人達と連れ立つ帰り道に大きな自販機が一台。

強烈な熱線を物ともせず、まるで猛暑を吹き飛ばすかのように涼やかな顔で閑静に直立していた。


自転車ごと吸い寄せられるまま彼の前へ。

選択の余地なく各々のポーチから小銭を取り出し飲み物を選ぶなりボタンを押した。

疲弊した身体に渇ききった喉。

取り上げるや否や、冷えた缶を惜し気もなく火照った額や首筋へ押し当てる。

求めていた冷たさに幾分表情が弛んだ。


涼むのも束の間、プルタブを引き上げソーダ水が噴き出すのと同時に口を付ける。即座に喉を駆け抜ける爽快感。口内が痺れ鼻の奥がつんと痛む。

目が潤む頃には一口二口と飲み進め、僅かに薬臭い柑橘類の薫りが余韻を遺す。


舗装された田んぼ道。

周囲を取り囲む青い山々。

青空に羽ばたく数羽の白鷺。


ジャージ姿で自転車に股がったまま立ち止まり、缶ジュース片手に夏を謳歌していた。

向かい風が蒸した頭皮を優しく乾かす頃、のろのろとペダルを漕ぎ始める。



鮮明に蘇る夏の思い出。

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