毒林檎と石榴
①作中に登場するのは全て同一人物。
全ての小説が並行及び平衡世界をテーマとしているため、年齢や立場は違えどその容姿や特徴が類似している同一人物を諸処に登場させている。
ネタバレせずとも周知のことだろうが、昼下がりのプールの主人公は随所に登場する。
②シリーズ連載には必ず
有象無象の化身であるモナドを始めその他モチーフに必ずと言っていい程登場させている。
さて、物語の随処に登場する
豊玉(桜水晶)石榴という実を御存知だろうか。
実は西瓜程ある巨大な石榴
皮は光沢のある桜色
割れ目から裂いていく
肉厚な白い綿が溢れ
透き通った紅玉の果実が露になる
一粒一粒が硝子玉のように大きく
口にすれば瑞々しさと甘酸っぱさが広がり
豊潤な果汁を貪る度
秘めていた欲望が剥き出しになる
そんな恐ろしい魅惑の果実だ。
時は大晦日。
私は熱を出し意識が朦朧としていた。
家族団欒をしながら年末の歌番組が流れる中、祖母が歳末市で自作の野菜を見知らぬ婦人と交換したと嬉々として話す。引っ張り出して来たのは巨大なピンクルビー色の石榴。
「石榴酒にでもしようと思ったが、やるわ。」
熱に浮かされながら体力を奪われる私が果物を欲していたせいか、その見慣れぬ果実を率先して食べさせてくれた。
真冬の最中に石榴。
外は大荒れの雪模様。
かなり不釣合かつ異常な光景だ。
その日を境に私の身辺では不可思議なことが続いた。
私が大学生で二十歳を迎え間もない頃だった。
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