第291話 参加者募集!



「そんなわけで、魔導大会への参加者を募りたいと思います!

 あ、私は出場するよ!」


 翌日、私は自分の役割をこなすべく、朝一番にみんなの前に立っていた。

 ホームルームの時間を使って、魔導大会の参加者を募るわけだ。ふむ、こうして教卓に立ってみんなを見る景色というのは、いい眺めだ……悪くない。


 さて、私の役割は、一年生で魔導大会に参加する人を把握することだ。

 一つ一つクラスを回って参加者を把握するわけだけど、まあまずは自分のクラスからってわけだ。


「魔導大会……誰でも出場できるって話だよな」


「でも私自信ないわ」


「俺も去年大会見に行ったけど、すごかったぜ」


 と、みんながやがやと話をしている。

 一年生で魔導大会に出場した人はいない……って話だったけど。それは実際にそうらしい。


 やっぱり、大会のレベルは相当高いのだろう。だから、みんな気後れしてしまう。

 その気持ちもわからなくもないけど、それよりも強い人と戦ってみたい、という凄まじい気持ちを持っている人はいないのだろうか。


 ……まあ、いないならいないで。一人でクラスを回るのは大変だなって思ってたけど、参加者がいないならこの作業もすぐに終わって……


「俺も出場する」


「!」


 ざわざわしていた教室内が、その言葉により静かになり……挙手した人物に、視線が集まる。

 自分も参加すると表明した人物、落ち着いた様子で手を上げているのは……


「ダルマス……」


 誰であろう、ダルマスその人だった。


 もしも私が、ダルマスと特訓をしていなかったら……意外だと思っていたかもしれない。ダルマスって、こういう大会にあんまり興味なさそうに見えていた。

 でも、考えてみれば……この魔導学園で学んでいる以上、魔導に関する全ての事には誰もが興味を持っているはずだ。


 ダルマスも、自分の力を試してみたいと思っているのだろう。そのための特訓だし、以前よりも格段に力を増している。

 彼は魔導剣士ってのに部類されるけど、魔力と剣の使い方が私と決闘したときより断然うまい。


 他のみんなは、ダルマスが手を上げ参加を宣言したことに驚いているみたいだ。


「なんだ、だめか?」


「ううん、大歓迎!」


 私としては、同じ一年生で、しかも同じクラスから出場者が出るのはとても嬉しい!

 ただ、他にはやっぱり出ようって子はいないか……ま、仕方ないかな。


 魔導に関する興味はあっても、それと国内外からいろんな人が集まる大会に出たいかと思うかは、また別の話だからだ。


「アレクシャン、貴様は出場しないのか?」


「? ワタシガ? ナゼ? そのような大会など、わざわざワタシが出る必要性を感じなイ」


「……ふん」


 他に誰かいないかなーって思っていたところで、ダルマスが一人の生徒に話しかける。それは、筋肉男だ。

 あいつまた手鏡見てるよ……どんだけ自分の顔好きなんだよ。


 なんでか、ダルマスが筋肉男に出場しないのか聞いている。でも筋肉男は、そんな質問どこ吹く風だ。

 取り付く島もない返答に、ダルマスはふん、と鼻を鳴らした。


 あいつ……今日まで一緒のクラスで過ごしてきたけど、いまいちよくわかんないんだよなぁ。なんか変な言葉遣いで、自分の顔が大好きで、制服の上からわかるくらい筋肉のある男。

 授業は一応真面目に……取り組んで入るようだけど。


「えぇと……じゃあ、このクラスは私とダルマスが出場ってことだね」


 確認のためにみんなの顔を見渡すと、他に意見はないようだ。

 私としては、他にも出場してくれる子がいると嬉しかったんだけど……ま、こればかりは仕方ない。

 むしろ、今まで一年生に参加者がいない中で私を除けば、ダルマスがいただけでもすごいことなんだろう。


 それに、受付期間終了までにはまだ時間がある。


「もし気が変わって出場したいって人がいたら、私に言ってねー」


 とりあえず、この場はこれでオーケー。また気が変わった人がいても、私に話を通してくれれば参加者に加えることができる。

 今は参加者を募るだけだから、細かい説明はまた今度。私はまた参加者を募るため、別のクラスに移動する。


 お次は、隣の「デーモ」クラス。ノマちゃんのクラスだ。

 それとコーロランもいるし、ゴルさんが出るならコーロランも出るかもしれない……


「はいはい! わたくし出たいですわ!」


「……」


 いの一番に、ノマちゃんが手を上げた。いやまあいいんだけどね?

 まさかこんな食い気味だとは。そういえばノマちゃん、あの事件以降魔力が増大したっていうし、もしかして実戦でそれを試したいのかな。


 ちょっと心配ではあるけど、大丈夫かな。あんなやる気に満ち溢れたノマちゃんにだめとは言えない。

 結局そのクラスでは、ノマちゃんとコーロランが参加することに。王族は参加しないといけない理由でもあるのか、それとも単純に力試しか。


 で、その隣の「ラルフ」クラス。


「俺、参加したいかな」


「……」


 ヨルが手を上げた。いやいいんだけどね。

 この学園で、私と同じ黒髪黒目の男。魔力量も相当あるみたいで、組分けのときに私と同じく魔導具を壊したという嫌な共通点のある男だ。


 やたらと私に馴れ馴れしく、イセカイがどうとかテンセイがなんだのと意味のわからない言葉を並べていた頭のおかしい男だ。

 あまり関わり合いたくないのに、クラスの【代表者】に選ばれたりなにかと縁がある。


「はいはい、一人、と」


「なんか雑じゃない!?」


 ルリーちゃんは最後まで悩んでいたようだけど、出場するのはやめたらしい。

 まあ、国をあげての大会だ……人の目も多い中で、認識阻害の魔導具を着用しているとはいえダークエルフのルリーちゃんがそこに立つのは危ないだろう。


 そして最後の「オウガ」クラス。


「ボクも参加を希望するよ」


「私もー」


 はい、と挙手したのは、ナタリアちゃんとコロニアちゃん。王族であるコロニアちゃんはともかく、ナタリアちゃんも参加するとは。しかも結構乗り気だ。

 これで、全クラス確認完了、っと。あとは、これをゴルさんに報告するだけ。


 ……結構人数集まったな。

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