第38話 組分けの結果



「あはは、まあ元気出しなって」


 組分け、そして【代表者】の発表があって。

 理事長たちが去った後、賑やかになる中庭で、私は地に膝をつきうなだれていた。


「うぅ、こんなことって……」


「いいじゃない、【代表者】が集まって定例会議……

 要は交流会、親睦会みたいなものだろう?

 ボクは楽しみだけど……」


「あいつがいなかったら、私だって楽しみだったよ」


 他の組との情報交換会、なるほどそれは楽しそうだ。

 ただ、そこに居てほしくないやつが居るだけで。


「フィールドさんがここまで拒絶反応を起こすとは……

 どんな相手なのか、逆に興味が湧いてきましたわ」


「ボクやエランくんと同じ、【成績上位者】なんだろ? それに、例の魔導具壊しの二人組の一人……純粋に興味があるけどな。

 あ、エランくんって呼んでいい?」


「う、うん、じゃあ私もナタリアちゃんって……

 ……待って、今なんて? 私、あいつとひとくくりに呼ばれてるの?」


 そりゃ、魔力や知識に関しては、ナタリアちゃんが言うように興味のある人物ではある。

 少なくとも、技量面では。


 私が問題としているのは、目には見えない部分……

 内面だ。


「ほら、そろそろ移動しないと。

 キミのことずっと眺めてるのも、退屈はしないけどさ」


「全員同じ組ではないのは、残念ですけど……」


「おほほ、しばしの別れというやつですわね」


「そだね……」


 みんなの言う通り、いつまでもここで落ち込んでいるわけにはいかないか。

 ようやく、私は立ち上がる。


 えっと、改めて私たちの組は……



 「ドラゴ」クラス

 エラン・フィールド


 「デーモ」クラス

 ノマ・エーテン


 「ラルフ」クラス

 ルリー


 「オウガ」クラス

 ナタリア・カルメンタール



「……見事に、全員別れましたわね」


「まあ、これはこれで面白いんじゃない?」


「でも、私心配だよ……

 ルリーちゃん、くれぐれも、くれぐれもあの変態には気を付けて!」


「わわ、ゆ、揺らさないでください」


 私の心配事は、ルリーちゃんの正体がバレないかどうかという点と、それと同じくらい……いやもしかしたら、それ以上に心配なこと。

 ルリーちゃんの組には、あのヨルがいるってことだ。


 あいつは、私に異様な執着を見せた……だから、ルリーちゃんには危害はないかもしれない。

 でも、私とルリーちゃんが友達だと知ったら、どうなることか。


「心配し過ぎよ、ねぇルリーちゃん」


「そうですよ、クレアさんの言う通り、私だって……

 って、クレアさん!?」


「やほ」


 この場にいなかったはずの、聞き慣れた声が聞こえた。

 ふと首を動かすと、そこにはクレアちゃんの姿。


 いつの間にか、そこにクレアちゃんが……!?

 いったいどこから!?


「ていうか、どうやってここがわかったの?」


「いやぁ、なんか騒がしいところがあるから、エランちゃんかなって」


「トラブルメーカー扱い!?」


 騒がしいところイコール私の認識なの!?

 ちょっと納得いかないんだけど!


 とはいえ、そのおかげでクレアちゃんとも会えたわけで……


「クレアさんは、どのクラスだったんですか?」


「私? 私はドラゴクラス。

 エランちゃんと一緒だね」


 おぉ、クレアちゃんとは同じクラスなのか!

 やっぱり、仲のいい子が居ると嬉しいなぁ。


 だけど、そんな私の態度とは裏腹に、クレアちゃんはなんとも複雑な表情。


「どしたん?」


「いや、エランちゃんと同じクラスなのはもちろん、嬉しいのよ?

 嬉しいんだけど……組分けって、魔力量が均等になるようにって、話じゃない?」


 私と一緒なのは嬉しい、それでも素直に喜べない理由……

 それが、組分けの方法にあった。


 組分けの方法は、魔力量が均等になるように。

 私やナタリアちゃん、ヨルが別々の組になったように。

 【成績上位者】且つ魔導具を破壊した私たちの魔力量は、まあずば抜けていると言ってもいいだろう。


 そんな私と、同じ組に振り分けられたということは……


「私、エランちゃんよりかなり魔力量が少ないってことなんじゃ……」


「か、考えすぎですよ!」


「そうだよ、魔力の高い人間が三人もいるなら、そのどこかに配置されても不思議じゃないし」


「でも、それならエランちゃんたちの誰もいないデーモクラスに配置されてもいいじゃない?」


「……」


「だ、だから考えすぎですって!

 そんなことを言ったら、私だってヨルって人と同じ組ですし」


 クレアちゃんはどこか考えすぎな面があるのかもしれない。

 私と同じ組だからって、劣っているってことではないのに。


 ……でも、そうかぁ。

 クレアちゃんがそう感じるってことは、他のみんなもそう感じている可能性があるわけか。


「まあ、いいじゃない。

 二人は仲良しなら、間近でエランくんからいろいろ盗めるってことだよ」


「そうですわ。

 お手本となる方が側にいるというのは、羨ましいですもの」


「お手本って……照れるなぁ」


「そ、そうなのかしら……」


「そうですよ!」


 みんなでなんとか、クレアちゃんを丸め込む。

 今まで気づかなかったけど、この子いろいろ溜め込んじゃうタイプだ。

 時折発散させたり、こうして落ち着かせてあげないと。


 とりあえずクレアちゃんも落ち着いたところで、移動する。

 向かう先は、もちろんそれぞれの教室。


 いよいよ、自分と同じ年の子たちと、切磋琢磨していろいろ学べるんだ!

 テンション上がってきたぜ!

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