皆まで言うな

「あの……」


「分かってる」


 男は出会った頃から妻の全てを理解し、何か言いかければ、それを最後まで聞かずともすぐに察しがついた。


 男の最期を看取る時、妻が口を開く。


「貴方……」


「分かってる」


 男は微笑み、事切れた。


「……何も分かってない馬鹿な人。愛されていないことにすら気づきもしないで」

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