恩返し

 その人は散歩が日課だった。雨でも雪でも、毎日欠かさず歩いた。


 ある冬の晩。戸の向こうでドサッと重たい物が落ちるような音がした。


「お、雪の日に笠を被せた地蔵様の恩返しか」


 その人は無職だった。毎日方々で恩を売っては、そのお返しで生活していた。


「そろそろ罠に掛かった鶴を見つけたいもんだ」

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