壁の染み

 その人は、何年も部屋に閉じ籠もっていた。ある時、壁の染みが人の顔に見えるようになる。段々と愛着が湧き、やがて恋をして、毎夜吸い付くようにして眠った。

 部屋の前に置いた食事が手付かずなことを心配して、親が戸を開けると、中には誰もいなかった。壁には苦悶のような笑顔のような染みが、二つ。

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