あの人は微笑みながら、見惚れるように月を眺めていた。

 その横顔はとても美しい。

 憎い。

 あの人を美しく照らして、独り占めにする月が憎い。

 私に出来る精一杯の抵抗。

「月が綺麗ですね」

 あの人は少しだけ驚いて、でもすぐに微笑んだ。

 その姿に見惚れるしかなかった。

 そこに輝く、二つの月が綺麗だった。

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