第246話 厄災マジック


 『厄災マジック』

 主人公の女子中学生を中心として巻き起こる、数多くの厄災を耐え忍ぶ主人公の姿に感動したと言う意見と、惨過ぎて途中から読むのを止めたと言う意見に分かれている作品だと言われている。

 この作品の特徴は、作者は主人公に対して恨みでもあるのかと言うほど、過酷で救われない不幸の数々や、ストーリーが進むに連れて現れるキャラ達が、軒並み酷い死に方をする事だ。

 特に、トラウマなシーンとして挙がっていたのは、主人公宅の近くに住む女子小学生(小学校3年生)が、主人公の頭上に落ちて来た鉄筋コンクリートを回避した主人公の代わりに、犠牲となってしまうシーンらしい。


 ここまでの情報を見ると、似たような報われない小説や漫画が、他にも数多くあるように感じられるのだが、問題はここから。

 どう考えても、普通の女子中学生が耐えられないような仕打ちを受け、精神状態がボロボロの状態で迎えた最終章にて、主人公の目前へと謎の存在が現れると同時に、今までの厄災が起こる直前にまで時間を巻き戻された。

 目の前の現象に理解が追い付かない中で、今度こそ被害者を救う為にと、希望を取り戻し動き出す主人公。

 そして、読者が僅かに抱く『最後はハッピーエンドだよな?』と言う思いを、筆者はすぐに打ち砕いた。


 機転を働かせ厄災を回避しようとしても、自分が犠牲となって救おうとしても、何をやっても操作されているかの如く、厄災は必ず主人公の周りに被害を与えた。

 例えば、先程の女子小学生なら、落ちて来る鉄筋コンクリートをあらかじめ回収したり、破壊したりしても、その近くにある建物や障害物が代わりに落下、倒壊し、女子小学生が主人公の目の前で死亡してしまうのだ。

 その情景が何度も何度も何度も書かれた後に残ったのは、俳人寸前とも言えるほど弱り切った主人公の姿のみ。簡潔に言うなら、バッドエンドだ。


 「・・・・一切、幸福を感じているシーンや主人公が助かる表現がありませんね。」


 「・・これ、読んだ人まで病んじゃうかも?てか、これが人気作として売れてるとか、ある意味凄いよね!!」


 周りを見ると、俺と同じように調べたのだろう、顔を顰めている人や目頭を押さえている人まで居る。いや、この短い時間の間に、心に来るシーンまで読み進められたのか?・・・それとも、涙脆い人だったのか?


 ともかく、この本の内容には賛否両論の答えがあり、今回は運悪く、筆記さんとアメスタさんの意見が分かれてしまったようだ。

 しかも、口数の少なさと簡潔過ぎる言い回しのせいで、言い争いと討論の区別が現場で付かなくなってしまい、緒恋さんとエキセントリックさんが置いてけぼりだ。


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