第153話 退院
午後9時
約3週間もの間、入院することになってしまったが、無事回復することが出来た。
意識を取り戻してから、自分の怪我の状態を医者から説明して貰ったのだが、簡潔に言うと、ほぼ無傷。
どうやら、軽自動車との衝突の際、奇跡的に車のボンネットの上に乗るような態勢だった為か、正面衝突、特に足に対しての怪我を負わずに済み、綺麗に弾き飛ばされるだけで済んだ。てっきり、車の事故=最低で骨折と考えていたから、ちょっと予想外だったな。
しかし、弾き飛ばされた場所が悪く、一階に設置されている花壇のレンガに、頭を強くぶつけてしまったらしい。
そのせいで、脳に異常が無いかの精密検査と経過観察が行われ、ここまで入院期間が延びてしまった。まぁ、後から問題が起きるよりは、今の内に解決出来ただけマシだろう。
「それで俊隆、配信は何時から始めるんだ?色々、やることもあるんだろ?」
「取り敢えず、、今回の件で心配かけたことについての謝罪と、事件に関しての情報を出す事かな?」
「ああ、なんか面倒そうなやつばかりだな!無茶だけはすんなよ?医者にもそう言われたろ?」
隣で車を運転しながら話しかけてくる、伸二さんの顔を見れば、それほど心配したような表情を見せていない。
どうせ、事件に関する情報って言っても、既にネットニュースで流れている情報と同じものだから、それ程問題にはならないだろうからな。
「それにしても、この荷物どうするんだ?」
そう言って、ミラー越しに後ろの座席を見れば、様々な果物や食品、服などが置かれている。
これは、入院中に城東さんや腹一さん、嬢ノ内さんなど、スペースオペラ在籍のライバーから送られて来た物だ。中には、コラボ企画などで知り合った、関係スタッフさんからの送り物もあるようで、俺自身もめちゃくちゃビックリした。
結構、社内の雰囲気も良くなって来たような気がしていたが、気のせいでは無かったようだ。
「ははっ、流石に悪くなる前に全部食べ切れないから、会社に着いたらスタッフさん達に分けるか、伸二さんが全部食べるか?」
「バカ野郎!!何で、俺一人で全部食わなきゃいけないんだよ!!結果的に、食べきれないのは変わってねぇじゃねぇか!!」
「あれ?最近、知り合った女性と食べたら良いんじゃない?なんか、上手くいってるようだし!!『家に来て、一緒に食べないか?』とか、送ってみれば?」
「はっ⁉おま、何処でそれを!!」
とある伝手で、伸二さんの近辺情報を仕入れていた際、『最近、伸二さんが好意を抱いている女性が居る』と言う情報が入った為、思い付きで今、鎌をかけてみたが、どうやら図星らしいな。
車が止まり窓を見れば、入り口のガラスが元通りになっている、スペースオペラが見える。
「それじゃあ、頑張ってもろて!!」
急いで車から降りると、スペースオペラに入っていく。
後ろの方で騒いでいたが、無視だ、無視。
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