第137話 新たな問題

午後1時


 「あぁ~、久しぶりの二日酔いは、結構堪えたなぁ。」


 昨日、城東さんと別れ、軽い食事やお風呂を済ませた後、倒れるようにベットに辿り着き熟睡した。

 そして今日の朝、目が覚めた俺に襲い掛かったのは、一度しか経験が無かった『二日酔い』の症状。

 ベッドの上で苦しみながら耐えて耐えて、気付いたらこんな時間になっていた。


 「ふうぅ、ちょっと自己管理が甘くなってるのか?今日は配信があるのに、こんな状態になってたら、いつか動けなくなるかもな。幸いにも、今日の配信は夜だから良かったけど。」


 洗面台の鏡の前で身だしなみを整えながら、最近の、自己管理の甘さに呆れていると、ポケットに入れていスマホに通知が来る。どうやら、緒恋さんの昼配信が開始した通知のようだ。


 「毎日、二回行動とか凄いなぁ。俺も見習った方が良いのか?・・・三日坊主で終わりそうだな。」


 デビュー配信から一度も休まず、一日に二回の配信を目標としているようで、スペースオペラのスタッフからの評価は、尊敬と心配が半分ずつらしい。まぁ、一度の配信時間が長くて二時間と言う事もあり、そこまで疲労が蓄積していない筈だが、精神的疲労までは分からないからなぁ。

 高太郎さんの方から、適度な休みを取るように呼び掛けて貰う必要もあるかもしれない。この辺の事も、俺らの誰かが教えられれば良いのだが、顔合わせ以来、緒恋さんを会社内で見掛けることも少なくなり、緒恋さんの方も会話を望んでいないように感じる。


 「高太郎さんから、『好き勝手やって貰って良い』と言われてるから問題無いのだろうけど、他の企業と比べて『同期』って感じがしないよなぁ。」


 普通、デビューから一か月もすれば、【同期コラボ!!】やら【一期生企画!!】みたいな、大型企画配信をするんだろうが、現状は100%無理だろう。せめて一人だけでも、緒恋さんとコラボが出来れば、それぞれのリスナーの中から、緒恋さんに興味を持つ人が現れたり、緒恋さんおチャンネル登録者が伸びると思うのだが、それ自体も難しいと考えて良いだろう。


 「ここまで必死に配信してるって事は、何か目標があると思うんだよなぁ。」


 一期生の中でも、配信に一番熱が入っているのは、観ていれば分かることだ。だが、空回りしているように見えてしまうのも、事実だ。そのせいなのか、昼の配信と夜の配信では、視聴者数が半分近く変化している事が分かる。特に、夜の配信を観ると、若干の疲労が感じ取れてしまっている為、ちょっと可愛そうに見えなくもない。


 「配信内容もほとんどが、雑談をメインにやっている事も原因なのかもな?マンネリってやつか?ただなぁ、配信慣れしていない現状でアドバイス出来るほど、俺だって経験がある訳でも無いし、他の人にアドバイスを求めても、碌なことにはならないだろ。」


 一度、緒恋さんが嬢ノ内さんにアドバイスを求めた時には、『女の武器を使いなさい!!』って、言われただけのようだし。


 「この問題も、どうにかしないとなぁ。」


 ライバーの問題を解決するために色々と考えていたら、いつの間にか着替えも終わり、約束の時間になっていた為、急いで部屋を出る。









 「?そう言えば、俺も一応この会社のライバーなんだよな?・・・・やってること、ほとんどマネージャーの仕事だよな?・・・・・・・だよな?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る