第89話 告白

 「そう言えば、聞いた感じだと『暴力的なことを受けた』みたいなことは無かったのか?」


 「ただの馬鹿ならやりそうな事ですけど、あいつは悪知恵が働くんですかね?暴力を振るうと、その跡が残ってしまったり、周りの奴等に『手加減して殴れ』みたいなことを言っても、下手すると死んじゃう場合もあるじゃないですか?あの頃のあいつは、出来るだけリスクを負わないように行動してましたよ。実際、あいつの取り巻きが、俺へのいじめを自慢げに言いふらそうとした時、めちゃくちゃキレてましたからね。後日、言いふらそうとした奴は転校していきましたけどね。」


 「リスクを負わないって、下駄箱を破壊してか?・・あぁ、学校関係者に身内が居たのかもしれないのか。面倒な奴だな!」


 「そうですね。それと、学校内で一番可愛いと言われていた女の子から告白された日があったんですけど、確かその翌日ぐらいから。俺に対してのいじめがエスカレートしましたね。」


 「お前、告白されたことあんのか⁉で、OKしたのか?じゃなくて、雅紀はその女の子のことが好きで、告白されたお前が許せなくなったと。雅紀は告白しなかったのか?」


 「色々な方法で、何度も告白したみたいですよ?『俺の家はお金持ちだし、俺は優秀だから一生安泰だ!だから俺と付き合え!!』とか『俺と結婚してくれたら、1000万円やる!だから俺と付き合え!!』とかね。」


 「結婚詐欺師の良いカモだな。その子も可哀そうに。」


 あいつにとって、他人にお願いすることは『馬鹿のやること』だと思っているだろう。だから、普通の告白さえできない。

 標準の告白の言葉は『俺(私)と付き合ってください』が多いだろうが、あいつにとって『付き合って』が受け入れられなかった。その結果、圧倒的上から目線での告白になった。自尊心の塊みたいな男でもあるからな。


 「そうだ、告白されたって言ったけど、お前はその子と付き合ったのか?」


 「いや、普通にフッた。特に気になる子でもなかったし、何より、付き合った場合その子も一緒に狙われるだろ?流石に可哀そうだ。」


 「なるほどな。お前がその子をフッたことは、雅紀の奴にも伝わってたのか?」


 「伝わったと言うか、告白された場所の近くで見てたから、フッた場面も確実に見てるな。」


 「そうだろ?付き合ったならまだしも、断った結果、俊隆に対してのいじめがエスカレートするのはおかしくないか?あっ、別にエスカレートしなければ、他人を傷つけて良いって言いたいんじゃないぞ!」


 「それは分かってるよ。あいつがエスカレートした原因は、から告白されたことが原因だと思う。あいつが何度告白しても断られるだけだったのに、その女の子俺に告白してきたんだからな。自ら。しかも、告白した相手は、普段から下に見ていた俺だ。それが許せなかったんだろう。あいつが許した場面は見たこと無いが。


 「逆恨みのようなもんか。その学校、絶対通いたくは無いな。

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