第87話 自制心が効かない奴
俺の話を聞きながら、伸二さんは難しい顔をしていた。
「それは・・昔からか?何らかの精神的病気とかでも無く?隆弘達に相談とかはしたのか?」
「一回だけ、父さん達に話したことはあるけど、周りに味方が居なかったからね。やりたい放題だったよ。」
「・・なるほど。ちなみに、同じような被害にあった奴等は他に居たのか?」
恐らく、『後先考えず嫌がらせをしていたのなら、他にも被害者は居るのでは?』と考えたのだろう。それに、他の被害者からの証言が取れれば、こちらにとっても有利だしな。ただ・・。
「・・残念ながら、表立って嫌がらせするのは俺だけでしたよ。時々、あることないこと吹き込んで、他の人が争っているのを見るのが好きだったようでしたが。」
「何故、お前だけなんだ?近藤家の奴ら全員が、隆弘達のことを見下しているのを見て育ったせいか?それとも、個人的な恨みがあるとか?」
「運が悪いことに、俺、昔からあいつの心の動きが読めるんですよ。まぁ、思いっきり顔に出ますからね。確か、一番最初に嫌がらせを受けたのは、学校でのテスト結果が良かった時だった筈です。」
「なんとなく俺にも分かったぞ!近藤家は『エリート』を着飾って歩いているような家だ。そこの奴が、下に見ていた俊隆にテスト結果で負けたことが許せなかった、とかだろ?」
「概ね正解です。ただ、普通に成績で上回っただけなら良かったんですけど、全教科満点だったせいで、余計に目を付けられたのかもしれないですね。次の日には、不正行為を疑われて、学校で面談が起きましたからね。まぁ、教室内の防犯カメラが設置されていた御蔭で、難なく済みましたけど。」
「はは、大変だったな。てか、教室内に防犯カメラって普通、仕掛けられてんのか?それに、隆弘の仕事の関係上、一時的に転校した学校でそんなことになるとは。俊隆もついてないな。」
「元々は、別の学校に転校する筈だったんですけど、近藤家に邪魔されて、ほぼ強制的にその学校に入れられましたけど、学費が免除されたのはラッキーでした。」
「それで、他には?すこしでも違和感を感じた事はないか?」
「嫌がらせの回数が多すぎて、どれもこれも当てはまってしまうんですよ。」
「そんなにも嫌がらせを受けたのか。嫌がらせと言うか、ほとんどいじめみたいなもんだろ。回数で言うと大体、10回とか20回とかか?」
「50回以上ですね。最新の自転車を川に沈められたり、教科書を全部燃やされたり、大変でしたね。それだけ、あいつの中の嫉妬心?みたいなものが強かったんだと思いますよ?それか、人生で何かを我慢したことが無いか。」
「・・・だからって、そこまでするか?我慢したことが無さそうなのは、なんとなく感じるけどよ!」
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