第55話 幸せが奪われる時(二度目)

午後23時

 配信を終え、布団に横になり虎居 みこさんの『歌ってみた再生リスト』を開く。

 『虎居 みこ』はOOさんじ所属のVTuberで、歌が上手い。とにかく歌が上手い。茶色の髪の毛と黄色と黒の浴衣が特徴だ。マイペースな性格と正反対のキリッとした歌声は、多くの人を惹きつけ、OOさんじ内の歌唱力では一、二を争うレベルらしい。


 「早くも新曲が600万再生を超えたな!!この調子で行けば1000万に届きそうだ!」


 みこさんの歌を聴きながらネットニュースを見る。


 「ブラックハッカー関連のニュースが多いな。『ブラックハッカーの構成員二名を逮捕』とか『ブラックハッカーによる被害拡大』とか、なんかあったんかな?」


 一番上の記事から調べてみると、個人勢の配信者を中心に、『ブラックハッカーによる情報漏洩』や『個人情報が流れる』などの事件が多発しているらしい。

 配信者の中には本名を隠している人が多い為、自分の名前や住んでいる場所等がバレてしまうのは大問題だ。しかもその中には、企業所属の人も含まれていた為、一部企業ではメールや電話が殺到し、対応が遅れた企業は株価が大暴落したところもあるらしい。

 とは言え、流石に大企業レベルの内部情報を盗むことは出来ないのか、中小企業ばかりが狙われているようだ。ただ、これからも同じような事が続くのならば、対応策を考えるぐらいの事はした方が良いだろう。


 「これは、今回の被害に遭った人達のリストか!んー、チャンネル登録者が10万人~30万人ぐらいの人が多いんだな。」


 そう言いながら下にスクロールしていくと、ユリさんや荒野さんの名前があった。

 二人の事件にブラックハッカーが関わったと言う情報は聞いたことが無かった為、名前の下にある『詳細』の部分をクリックする。すると、最初の文にはニュースでも言われていた事件内容が書かれていて、一番最後の文には情報提供者からの供述が書かれていた。『ユリさんの自宅に押し掛けたストーカー事件や荒野さんのチート行為が発覚した事件の裏に居たのがブラックハッカーだった事が判明した。』と。

 更に細かい情報では、ユリさんの自宅を特定し、侵入する作戦などを考えて費用などを負担したのはブラックハッカーの一人らしい。また、ユリさんと荒野さんの自宅から盗聴器と小型カメラが発見したらしい。

 犯人から供述で判明したのは『ブラックハッカーの支援があった』と言うだけらしい。要は、盗聴器やカメラを仕掛けた覚えは無いと言う事だ。


 「そのブラックハッカーの人は、事前に侵入していたって事なのか?チートが発覚したのも、カメラからその現場を見ていたから?分からんな。」


 ブラックハッカーの目的や犯行理由を俺なりに考えてみたが、一切分からなかった。まぁ、ブラックハッカーの手口にまとまりが無い為、ブラックハッカーの仕業だと判断するのも難しいらしいしな。

 事件の詳細について考えながらスクロールしていくと、見覚えのある顔があった。


 「・・・・俺?」




 鬼道 奈落

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