リベンジデート

第11話①

 デート当日、緊張した俺は待ち合わせの一時間前に約束の最寄駅まで来ていた。


 「よぉ、姉ちゃん。俺たちと一緒に遊ばないか?きっと楽しいぞ」


 すると、人が遠巻きに眺めている場所があった。どうやら、一人の女性が二人の大男にナンパされているみたいだった。周りの人も巻き込まれたくないのか、関わろうとしなかった。


 「遠慮します」


 女性の方はそっけない態度で断っていた。それでもしつこく声をかけられている女性に見てられなくなった俺は声をかけた。


 「…やぁ、お待たせ」

 「あぁ、なんだテメェ」


 すると、ナンパ男が俺に対してメンチを切ってきた。チラッと見た女性の方は目を丸くして驚いていた。


 「俺?俺はその子の彼氏だよ。…人の女に手ぇ出すんじゃねぇよ」


 最後はドスを効かせた声でそう言うと、ナンパをしていた二人はそそくさと帰っていった。


 「はぁ〜。…君、大丈夫?」


 肩の力が抜けた俺はナンパされていた女の子にそう声をかけた。それでも、女の子は熱に浮かされたように俺の顔を見ているだけだった。


 「じゃあ、俺はもう行くからね。君も気をつけてね」

 「まっ、待ってりゅー君!」


 その言葉に俺はとっさに振り返った。俺をりゅー君なんて呼ぶのは幼馴染みの彼女しかいないはずだった。


 「…はーちゃん?」

 「う、うん。ちょっとだけ待ってね」


 そう言ってはーちゃんは何度も深呼吸をしてから俺に向き直った。


 「よしっ!もう大丈夫。……ありがと、りゅー君。か、カッコよかった、よ」

 「〜ッ!そ、そっか。はーちゃんも凄く可愛いよ」

 「あ、ありがと」

 「う、うん」


 好きな人にカッコイイって言ってもらえた俺はなんとかそれだけ返すのが精一杯だった。


 今日のはーちゃんは綺麗な服で纏めていて、現世に降臨した女神のようだった。普段は下ろしている髪も縛っていて、輝かしい真っ白なうなじが見えていた。うっすらとメイクもしているのか、はーちゃんだと思って見ると、自然と惹きつけられるような魅力があった。大胆に肩を出しているのに不純な感じは全くしなくて、真っ白なロングスカートは彼女の無垢な魅力が詰まっていた。なにより、俺とのデートでおめかししてくれたはーちゃんの気持ちが嬉しかった。


 「…ちょっと早いけど、もう行く?」

 「そうだね。じゃあ、行こっか」


 いつまでも駅前にいるわけにはいかないと思った俺は移動を促した。はーちゃんも頷いてくれて、俺に右手を出してきた。咄嗟のことに対応できなかった俺は固まってしまった。


 「あ、ご、ごめんね。イヤ、だったよね」

 「イヤじゃない!」

 「あっ!…えへへっ」


 引っ込めようとしたはーちゃんの手を俺は慌てて握った。するとはーちゃんも嬉しそうに微笑んで握り返してくれた。その笑顔だけで俺の心臓の鼓動は高鳴った。


 「…なんか、恥ずかしいね」

 「そ、そうだね」

 「でも、嬉しいな」

 「…うん。なんかはーちゃんと手を繋いでると安心する」

 「そうそう!幼馴染みだからかな?」


 それからも俺たちは何気ない会話を続けていた。気付けばいつも通りの雰囲気に包まれていた。


 …これからの初デート、成功させなきゃな!俺は好きな人の温もりを感じてそう強く決意した。空はまるで成功を知っているかのような快晴だった。

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