第4話 テンプレ通り?

「あの、一つお伺いしても宜しいでしょうか?」


アイザックが罪状を読み上げる前に手を上げた。


「何だ?この期に及んで」


露骨に嫌そうに私を見るアイザック。

あ~あ……。いくら制作会社に言われてキャラを改変したからと言って、あまりにも性格悪すぎないだろうか?本当に彼をメイン・ヒーローにして良かったのだろうか?


「はい、その罪状についてお伺いしたいのですが……今から読み上げられる内容はどなたから聞き取りをしたものなのですか?」


出来るだけ、丁寧に尋ねてみることにした。


「そんなのは当然、セリーヌからの聞き取りに決まっているだろう!お前が彼女に露骨な嫌がらせをしてきたのだからな!何故そんなことを尋ねて来るのだ⁈」


私をビシッと指さし、吐き捨てるように言うアイザック。


「そうですか……。念の為に伺っただけです。では、どうぞ読み上げて下さい」


「全く……生意気な女だ。だが、そんな態度を取っていられるのも今の内だからな?」


 本当に何て嫌な態度を取ってくれるのだろう。けれどアイザックが酷い態度を取ればとるほど、私には勝機が見えて来る……はずだ。


「アイザック様。アンジェリカ様もああ、仰っていられますのでどうぞ読み上げて下さい」


セリーヌが促す様子を見て、矢張り彼女に対する違和感を拭えない。


「ああ、そうだな。では読み上げる。まずは一つ目!お前は自分が侯爵家の人間である為に男爵家のセリーヌを馬鹿にし、自分が主催するお茶会に彼女を呼ばなかっただろう⁈」


この世界がゲームと全く同じなら、そこには大いに誤解がある。けれど私は否定も肯定もせず、遭えて黙って聞いていた。ここで私が何を訴えても無駄なことは分かり切っていたからだ。


 アイザックは私が黙っているのを肯定と捉えたのだろう。ニヤリと口角を上げた。


「では、次の罪状だ!お前は学生食堂でにいるセリーヌに他の令嬢たちの前で、彼女を叱責したことがあっただろう?あの後、セリーヌはその場に居たたまれなくなり、食事も途中で席を立ったことがあったそうだ!」


 ああ、確かゲーム中でもそんなことがあったかもしれない。


「それだけじゃない、まだまだあるぞ……!」

 

 そしてアイザックはその後も次から次へと私の罪状を読み上げていく。それらを聞きながら、私は思った。


 本当に、テンプレ通りにシナリオが進んでいたのだなぁと……。

 これでゲームのシナリオ通りなら、全ての罪状を読み上げられた後にアイザックから婚約破棄を告げられる。

 代わりにアイザックはセリーヌと婚約することを発表し、私は爵位を奪われ僻地へと追放されるのだ。


 勿論、これはあくまでシナリオ通りにいけば……の話だ。


 でも!そうはいかない。


 私は悪役令嬢アンジェリカでは無い。このゲームのシナリオ作家なのだ。


 だから……これから最後の悪あがきをさせて貰います――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る