第7話 シエラを探そう。その前に..
私は「時の加護者」アカネ。
この異世界アーリーが私の知る異世界アーリーから6年後の世界と知った。私はドライアドから「時の加護者」トパーズのシエラと「運命の加護者」シエラを探す旅に出るように告げられた。そして謎に包まれる少女ツグミ。彼女を連れて、私の冒険は始まった。
—南極タイサント—
とにかく、今の私にとってシエラを探すことが何よりも先決すべきことだ。
まずはこのカームタップという激しい潮流の壁に囲まれた南極タイサントから出るために、船が必要だ。
船を用意するにはレンパス村へ行かねばならない。
レンパス村と言えば、現地ガイドのラチャグがいる。
私はギプス国王女カレンが率いるカレン調査団と共に、このタイサントの伝説調査にきた当時のことを思い返した。そして、結果を逆算する方法で次にすべき行動を決めることにした。正直、今はシンプルに行動を決定するほかに余裕がなかったのだ。
どうしてこんなに短い間に6年の歳月が過ぎてしまったのか、理解できない。単に現世と異世界との時間の歪みとは思えない。それに、私の秩序の力が使えない理由もわからない。
「あーっ! もうごちゃごちゃ考えるのやめだっ! 」
「そうだ! やめだー! あははは」
無邪気な声をツグミがあげる。そうだ、旅の計画も私ひとりではないのだ。しかし、レンパス村はどこにあるのだろうか?
「ねぇ、おねえちゃん、喉が渇いた。さっき川があったよ。そこでお水を飲んでいい? 」
「うん。そうだね。私も喉が— 」
そうだ!村に必要なのは飲み水。つまり、村は真水がある川のふもとにあるはずだ。
「すごい!! すごいよ! ツグミ! 」
「へへへ。凄い? ツグミほめられた! 」
もしかしたら、これがツグミの中に蘇ったヨミの英知なのかもしれない。ヨミは先代アカネの補佐や助言、そして策略家だった。ツグミを通して私に助言をしてくれたのかもしれない。これはツグミがいてくれて助かるかもしれない..
「へへへ。ツグミ楽だよ。ありがとう、おねえちゃん」
この長い距離、私はずっと6歳のツグミを背負いながら歩くことになった。もしかしたら、シエラを見つけるよりも、ラインとソックスを探す方が先決かもしれないな..
***
—フェルナン国 北の山脈—
「はっくしょん.. 」
「大丈夫ですか? シエラ様」
「ああ、大丈夫だよ。少し洞窟内の冷たさが身に染みてね.. 」
「すいません。オレブランでありながら、あなたを暖める羽毛すら持たないわが身を呪います」
「そんなこと言っちゃいけないよ。君たちはシャーレ様によって素晴らしい身体をもらったんだ。それに君たち親子が僕を守ってくれたから、僕はこうしてまだ生きている」
[ カサッ ]
足音に緊張が高まる。さらに石を踏む足音が近づくと、洞窟内に松明のゆらめきが届いた。
シャー シパッ! パン!!
オレブランの少女の跳躍をいかした鋭いナイフ攻撃は侵入してきた男の頬をかすめたが、受け止められてしまった。
「ライラ。また腕を上げたな。計算された変幻自在な多重攻撃、ひとつ受け損ねたよ」
「パパ!! 」
「やぁ、ロウゼ。いつも悪いね。何か変わったことがあったかい」
「ああ、相変わらず各国に白亜部隊を配置させてやがるよ。いつも奴らの警備の裏をかくのに一苦労だ」
ライラはロウゼの肩に乗ると甘えている。
「そんな奴ら殺しちゃえばいいのに」
「こら、ライラ。ダメだぞ。どんな奴にも命はひとつしかないんだ。命の幕を閉じる事を簡単に考えてはいけないよ」
ライラは口をとがらせる。
「ふふふ」
「なんだ? 」
「ロウゼ、お前がそういうことを言うとはね。さっき.. 少し昔のことを思い出していた。そしたらお前がそんなこと言うもんだからさ。今更ながらそんな風に思ったのさ」
「やめてくれ。お前もまだ昔の思い出に埋もれるには早いだろ。それよりもシエラ。お前は感じないか? 俺はシャーレ様の恩恵の力が無くなって久しいが、さっき一瞬、懐かしい空気を感じたのだが.. 」
「ごめんよ。僕は見ての通り半分、岩になってしまってね。感覚といえば地面の冷たさを感じるだけなんだ.. 」
その時、外では片足が仄かに光る男の指揮の下、白亜部隊20人が洞窟の中に踏み込もうとしていた。
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