第7話 険悪な雰囲気のヘラと痴女
「———どうしたんだ、ヘラ?」
「……大丈夫?」
大丈夫……?
俺、何か心配させる様な行動をしただろうか?
俺がヘラの真意を測りかねていると、ヘラが心配そうに眉尻を寄せて言う。
「だって……班決めの時、物凄く絶望した様な顔してたから……それに魔導車に乗る前の顔もやつれてたから……」
半分はヘラのせいなんだけどね。
ヘラが可愛すぎるが故に寝れなかったんだけどね。
しかし、班決めの時、俺ってそんなに絶望感丸出しの表情をしていたのだろうか?
確かに絶望したけども。
ただ……俺を心配してこんな所まで来てくれるなんて優しすぎないか?
「ヘラの班の人達は大丈夫? ヘラは別行動している様だけど……」
「大丈夫よ。私の班は悪魔学園の生徒会長とアーサーと生徒会長の秘書のユイさんだから」
なるほど……自分の班があまりにも悪かったのでヘラの班はしっかりと聞いていなかったが、聞いた所めちゃくちゃ良い班だな。
生徒会長は面倒くさがりだから誰かに危害を加えるとかはないし、アーサーは言わずもがな。
そして何より———サルヴァトーレの秘書兼お世話係のユイさんは、強くて性格いいし何事もそつなくこなせる。
後この学園にしては珍しく礼儀がちゃんとしている人でもある。
どうやら学園側も、ヘラの班選びには相当頭を悩ませたらしい。
まぁヘラの班が安全そうなので俺の班が絶望的なのも許してやろう。
ヘラが良ければそれでよし。
俺が心の中でそんな事を思っていると、何やら覚悟を決めた様子のヘラが言った。
「———少し入らせて貰えるかしら?」
ヘラが教室の扉を開けようとするので俺は急いで止める。
すると露骨にヘラの眉間に皺が寄る。
しかし、ここであの3人と———特にクルトのクソ野郎には合わせるわけにはいかない。
ミレイユは大して強くないのでいいし、ヴィルヘルムは俺が介入すれば良いので何とかなるが……クルトはダメだ。
アイツをヘラの視界に入れてはならない。
「入るのはやめてくれないか……?」
「……どうして?」
「えっと……」
「———私はシン君が嫌な思いをして欲しくないの。一応私の肩書きは世界でも通用するから牽制くらいにはなるかなって」
確かにヘラは十傑の『第10席』。
十分な牽制にはなると思うが———
「ねぇシン君……だめ……?」
「ぐ……」
ヘラがぐいっと俺に近寄り、上目遣い&潤んだ瞳のダブルパンチで此方を見つめる。
表情も少しシュンとしているのがとても庇護欲を唆り、俺に対してのクリティカルダメージを与えるに繋がった。
しかし———それでもヘラの為に此処は退いて貰うしかない。
「やっぱりダメ———」
「———ちょっとシン〜〜まだ誰かと話している———あらぁ?」
「…………ふーん……」
俺が必死に耐えていたと言うのに、脳内ピンク一面の痴女ミレイユが教室から出てきやがった。
更にその後ろからヴィルヘルムとクルトが現れ———俺の頑張り虚しく全員がヘラと顔を合わせてしまった。
「おい、何で皆出てきた———」
「———貴方達がシン君の班の人達?」
「そうだけどぉ〜〜それが何かぁ?」
「聞いていた問題児ばかり……どうしてシン君と同じ班なのかしら?」
「そんなの教師に聞いてよねぇ〜〜まぁ私はシンみたいな可愛い男の子に会えて良かったけどぉ〜〜?」
目を細めるヘラを煽る様にニヤニヤと笑みを浮かべるミレイユ。
2人の間に険悪な雰囲気が流れる。
「貴女、悪魔学園の生徒を何人もやめさせているらしいわね? 皆貴女に手を出されて、恋人と別れて、家族と決別して……色々な噂が立っているのだけれど、どう思っているのかしら……?」
「それはぁ〜〜私の可愛さに靡くアイツらが悪いだけよ〜〜」
全く悪びれもなく全ての責任は向こう側にあると豪語するミレイユには呆れて声も出ない。
ゲームを知っている俺からすれば、コイツに恋人を人質に取られて無理矢理ヤらされた者も知っているからな。
「へぇ……なら先に言っておくわ」
ヘラはスッと背筋が凍る様な冷酷な瞳でミレイユを見た後、薄ら笑いを浮かべて、何故か俺と腕を組んだ。
「へ、ヘラ!?」
「———シン君に手を出したら……絶対に赦さないから」
ヘラは氷点下の雰囲気を纏い、僅かに魔力を漏れさせながら、ミレイユを睨みながら言う。
そんな初っ端から強い拒絶を示すヘラにミレイユは目の笑っていない笑みを浮かべた。
「例えばこんなこ———」
「———触れるな痴女。何かすれば貴様が死ぬぞ。貴様は大人しくしていろ」
ミレイユは何かする前にヴィルヘルムに襟を鷲掴みにされて、校舎の外へと投げ飛ばされる。
急な仲間割れの姿に目を瞬かせて少し驚いた表情を見せるヘラと俺だったが、ヴィルヘルムはそんな俺達に歩み寄ると、ヘラ見下ろしながら獰猛な笑みを浮かべた。
「お前……『10席』のヘラ・ドラゴンスレイだな?」
「……ええ」
「俺と勝負———」
「ストップ」
俺はヴィルヘルムの言葉を遮る様にして2人の間に立った。
「ヘラと戦うのはダメだ、ヴィルヘルム。その代わり———俺と勝負するので我慢してくれ」
俺がそう言うと———ヴィルヘルムは何故か得意げな、嬉しそうな表情を浮かべた。
「ふっ……良いだろう。正直その十傑よりもお前の方が強そうだったからな」
コイツ……最初から俺と戦うつもりだったな……これだからコイツら嫌いなんだよ。
俺をこの班にした教師達を恨みながら天を仰いだ。
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ちょっと強引になったけど……次はヴィルヘルムとシンの試合です。
そこで初めての悪魔が登場しますよ!
現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。
なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
作者の執筆の原動力となりますので!
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