第5話 考えうる限り最悪の班

 魔導車(時速70キロ前後)で走ること約5時間。

 やっと悪魔学園に到着した。


 行きは楽しみそうにはしゃいでいた生徒達だが、思いの外魔導車で疲労が溜まったのかそこまで大騒ぎはしていない。

 かく言う俺は魔導車の中で熟睡できたので気分爽快だ。


「此処が悪魔学園か……」

『悪魔のう……どいつもこいつも面倒な奴じゃな。儂等精霊よりよっぽどキャラが濃くて疲れるわい』


 まぁ確かに悪魔は欲望の塊みたいな奴なので、精霊よりもキャラが濃いのは仕方無いのかもしれない。

 それに爺さんの口振りからすると、何度か悪魔と会ったことがあるのだろう。


「俺も悪魔の契約者には手を焼かされたぞ」

『お主も儂の同士か……流石契約者なだけあるのう……』

『「…………はぁ……憂鬱だ(じゃ)」』


 俺達は溜息を吐きながら先生先導の下、悪魔学園へと入る。

 正直ヘラが居なければこのまま回れ右して帰りたい気分だ。


「シン……君だけだよ、そんなに憂鬱そうなの」

「嘘つけ。どうせお前も心の中で行きたくないと思っているだろ」

「…………」


 アーサーは俺の指摘に何も言わずに、気まずげに目を逸らした。

 やはり行きたくないと思っていた様だ。


 しかし、俺達の思いなど集団において無に等しく、そもそも先生や他の生徒達は悪魔学園にヤバい奴らが居るなどと知らないので、どんどん先に進んでいく。

 悪魔学園側も、真にヤバい奴らの事はひた隠しにしており、精霊学園の方も恐らく把握していないと思われる。 


 学園の中に入ると、1番に目に飛び込んでくるのは、宙に浮かんだソファーに座った頭にツノを生やした生徒の姿。

 皆が驚いている中、そのソファーに座る生徒———悪魔学園の生徒会長であるサルヴァトーレがその端正な顔に柔和な笑みを浮かべた。


「———ようこそ、精霊学園の皆様。ソファーに座りながらの歓待をお許し下さい。悪魔との契約においての対価なので」

「勿論承知しております」

「ありがとうございます。それでは早速———」


 サルヴァトーレがパチンッと指を鳴らすと、精霊学園の生徒も教師も含めた全ての人を覆う程の巨大な魔法陣が現れる。

 その瞬間、騒然とする精霊学園側の生徒達を落ち着かせる様にサルヴァトーレは口を開いた。


「安心して下さい。この魔法は転移魔法です。これから歩いて行くのも面倒なので、僕が全員を体育館まで転移させます」


 その言葉を聞いた瞬間に———俺達は転移させられた。











「———それでは早速ですがぁ〜試験の為の班わけを行おうと思いますぅ〜。我が校は人が少ないのでぇ〜全校生徒と組む事になりますぅ〜」


 体育館へと移動した俺達は、少しイラッとする口調で話す生徒会副会長のミレイユの進行の元、魔族の特徴である短気な性格が災いしてか、特に学園長の言葉があるわけでもなく、早速班わけが始まる。

 その言葉と共に精霊学園の生徒達は色めき立つが……逆に悪魔学園の大半の生徒達は緊迫した赴きで立っていた。

 恐らくヤバい奴らとならない様に祈っているのだろう。


 かく言う俺も———


「アイツら以外なら誰でもいいから……頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む……ッ!」

『物凄い祈り様じゃのう……』


 爺さんにドン引きされるほど、1人あの2人———ヴィルヘルムとクルト———と同じ班にならない様に祈っていた。


 あの2人でなければ生徒会長でも副会長でもいいから……どうか2人とは離れています様に……!


 しかし———

 

 

「———第35班———ミレイユ、シン、ヴィルヘルム、クルト」



 …………。


「………………………マジかよ」

『こ、これは……災難じゃのう……』


 俺の茫然自失の呟きに、爺さんが本気で俺を憐れむ。

 そしてそれは爺さんだけでなく、悪魔学園のほぼ全ての生徒から同情の視線が集中する。 


 ……やりやがったな学園……。


 そもそもクルトとヴィルヘルムがハッピーセットならぬヘルセットなのは元々分かっていたが、更にこの2人の次に面倒なミレイユまでが同じ班とか、もはや拷問でしかない。

 恐らく面倒な奴らを1つの班に纏めたかったのだろうが……大人達の頭はイかれているのだろう。そうに違いない。


 俺の絶望感に満ちた表情と、悪魔学園のその異様な空気に、精霊学園の生徒達も何かを感じ取ったのか、俺の下へやってくる3人の生徒に目を向けた。


「わぁ〜〜カワイイ子でよかったわぁ〜〜この2人となんて目が腐るものぉ〜〜」

「ふんっ。俺も貴様らの様な卑怯者となどなりたくないに決まっているだろうが!」

「ふ、2人の天才と同じ、は、班……嫌だなぁ……妬ましいなぁ……」


 ミレイユは制服姿ではなく、いつの間にか普段の痴女みたいな格好に戻っており、非常に目のやりどころに困る。

 彼女は色欲と契約しているせいで、普通に生活するだけで相手を情欲させてしまうのだが……あくまで格下だけなので、俺には1ミリも効かない。


 ヴィルヘルムはムキムキな大男で、見るからに戦闘を好まそうな姿をしており、クルトは……見た目からゴミ具合が見て取れる。

 クルトは死ね。

 

「———よろしくお願いします……」


 俺は取り敢えず渋々、本当に渋々頭を下げた。


 …………ヘラ成分を補給したい……。


 俺は昨日の女神の様なヘラの姿を思い浮かべて暴れ出したいのをグッと我慢して何とか理性を保っていた。


————————————————————————

 現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。

 なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

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