第3話 隠れ最強を悩ます3つのこと。
3章のタイトルを『精霊暴走』から『精霊と悪魔の狂騒』に変更しました。
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———一週間が過ぎたある日。
「———明日から皆さんには悪魔学園に2週間行ってもらい、合同で試験を行ってもらいます!! 皆さんは悪魔について知っていますか? ———ではルド君、説明してみてください」
珍しくハキハキと話すエマ先生に一同が驚きながらも頷く。
そんな生徒の中から、エマ先生はルドを指名する。
「はい! 精霊が『陽』を司る存在で、悪魔は『陰』を司る存在です! 能力は多種多様で強力な代わりに数が圧倒的に少ない存在です!」
「よくお勉強していますね! ルド君の言う通り、悪魔はこの世界において欠かせない存在であり、決して悪い存在ではありません。そして悪魔学園にはそんな悪魔達をその身に宿す素質に長けた生徒達が在籍しています。仲良くなって試験を無事合格してくださいね!」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
こうしてまたいつもの生活が始まる。
———1時限目の体育。
今日は男女混合で魔導ベースボール———身体強化や得意な魔法を使いながら魔力で出来たボールとバッドでする異世界版野球の様なもの———をやっている。
我がCクラスは皆仲が良いので楽しそうワイワイとプレイしていた。
そして俺はそんな皆を見ながらグラウンドの隅で気配を消す事に徹していた。
そんな俺の下に、沢山の女子からの黄色い声援を貰っていた男子の敵———アーサーがやって来る。
「……恋人が居ながらチヤホヤされてると男子に絞められるぞ」
「囲まれたくて女の子達に囲まれている訳じゃないんだけどね……」
これが強者の余裕と言うやつか。
まぁ俺には推しのヘラが居るので、全く羨ましくないが。
と言うか、正直俺には、ヘラとアーサーの彼女であるマリアさん以外の女子など、路傍の石ころと然程変わらないので、道に沢山の石ころが落ちているアーサーが可哀想にすら思えてくる。
「それで……俺に何の用だ?」
「いや……君はどうするのかな、と少し思ってね」
恐らくアーサーはこれから起こる事件について言っているのだろう。
悪魔とは、ルドが言っていた通りの存在だが、1番上に7つの大罪を司る大悪魔、それの眷属である上位悪魔、更にその下の……と言った風に分かれている。
更には、幾ら素質があっても、何かしら対価を払わなければならないのだ。
それは素質の程度で変わるらしい。
そして———悪魔学園。
主に悪魔との適性がある魔族が多く在籍しており、それ以外の種族はごく僅か。
更に全校生徒は200人足らずと、1000人以上在籍している精霊学園に比べれば物凄く少ない。
その分強力で物凄くキャラが濃い。
まず学園を代表する生徒会長は大悪魔である怠惰の悪魔と契約しているため常にソファーを離れず寝てばかり。
副会長も大悪魔である色欲の悪魔と契約しているのだが……男女どちらもいけるタイプで、彼女が居るだけで荒れまくる。
しかし———そんな奴らよりも面倒な奴が2人いる。
1人は、3年生のヴィルヘルムと呼ばれる魔族。
此方の方がまだマシだが、戦闘狂過ぎて手が付けられない。
1度スイッチが入ると手当たり次第に襲い掛かり、暴虐の限りを尽くす。
更に厄介なのが、憤怒の悪魔の契約者である事だ。
コイツの対価のせいで奴は止まらない。
戦闘狂なのは元からだ。
そして2人目が、クルトと呼ばれるサイコパスだ。
戦闘系の才能皆無な奴だが、嫉妬の悪魔との契約者で、『自分よりも才能がある者絶対殺すマン』でもある。
コイツは兎に角嫌われていた。
何故なら、コイツが鬱ゲーと呼ばれる要因の1つであり、1番最初の閲覧注意が表示されるキャラだからだ。
先程『自分よりも才能ある者絶対殺すマン』と言ったが、正確には、殺す前に実験室に連れて行かれ、生きたまま身体を実験台にされ、その後で才能を奪う。
これは主人公もだし、ヒロインもされたりする。
ヘラはどのルートでも返り討ちにしていたが……この世界では、奴をヘラの御目に掛ける事なく俺が対処する予定。
更にヴィルヘルムは直接関わらないが、欲に溺れたクルトが精霊と悪魔を暴走させて殺し合いをさせる。
これがまた阿鼻叫喚の騒ぎで、主人公達は迫り来る精霊と悪魔と戦いながら原因であるクルトを殺さなければならない。
つまり、俺がクルトを何とかすればそれで終了。
「取り敢えず……クルトには今まで自分がして来た事を悔やんで貰う」
「それが1番だね。流石に僕もアレを直ぐに倒すのは無意味だと思ってるよ」
もはやアーサーですら『アレ』呼ばわりする始末で、如何に奴が嫌われているかが分かるだろう。
毎回嫌いなキャラとして名前が上がっていただけある。
———だが、1つの懸念がある。
「原作厨が何をするかが不明なんだよな……」
「ああ……確かに。シンがすることは完全に原作破壊だもんね」
絶対に俺が動けば同時に奴も動くはずだ。
ただ———前回俺に何もしてこなかったのを見るに、俺の存在を知らないか、転生者は
だとすれば———直接俺に接近してくるから、俺など無視して、全く姿を表さず、誰がを裏から操るか。
この2つに1つだと思われる。
転生者なら傲慢な奴だと嬉しいなぁ……それならノコノコとやって来そうだから。
奴の強さがどれくらいか分からないが……最低でも顔くらいは見ておかないとな。
「アーサー、お前も気を付けろよ。絶対に1人で行動するな」
「分かってるよ。必ず複数人で行動するさ」
アーサーはそう言うと、クラスの奴らに呼ばれて戻って行く。
ほんと、人気者は大変そうだ。としみじみと思っていると……後ろから気配を感じ、振り向いてみると———
「———あ、いた」
「へ、ヘラ!? どうしてここに!? と言うか今は授業中じゃ……」
———建物の角からひょっこり顔を出したヘラが居た。
驚く俺に『私、授業自由参加なのよ。びっくりした?』と悪戯っぽく笑う姿は、お茶目でとても可愛い。
ヘラは綺麗な所作で、ベンチに座る俺の横に座る。
普段ならこんな見られたら危ない事はしないが、今は誰も見ていないからかもしれない。
最近はゲームでは見た事ないヘラの表情を見ているよな……。
こんなに感情豊かだとは思わなかった。
まぁこっちのヘラの方が楽しそうだし、ヘラが良ければ全てよし。
ただ……最近ちょっと距離が近過ぎないだろうか。
今もほぼ肩が触れそうな程近い。
そのせいか、ヘラから物凄く良い匂いもしてくるので、余計緊張しっぱなしだ。
「? どうしたの?」
「い、いや! ……えっと……ヘラ、悪魔学園では何が起こるか分からないから気を付けてね」
「ふふっ……どうしたのよ急に。でも大丈夫よ。私、自分の部屋以外では常に警戒しているもの」
ああ……確かに。
この言葉はヘラには不要だったか。
「あ、でもね……」
「??」
ヘラは真っ赤な顔でチラチラと俺を見ながら———
「シン君の隣に居る時は……不思議と安心できて落ち着くの。だから———一緒にいてくれると嬉しいな……」
「……っ」
「じゃあまた明日ね?」
気恥ずかしげに『えへへ』とあどけない笑みを浮かべた後、バッと何処かに消えていった。
…………………………ふぇ?
この後ヘラの言葉の真意について考えていたら寝れなかった。
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仮にヘラがこんだけ頑張っているのに気付かないなら、シンは男として終わっています。
それと、明日は1話になるかもです。
模試という憎き強敵がいるので。
現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。(明日は無理かもだけど)
なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
作者の執筆の原動力となりますので!
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