第201話 巫女と見習(6)
「
「僕が一番初めに疑問に思ったのは、ナナガシラに
「そのことか。そういえば、お前はここに来る前から、理由が分からないって言ってたな。何が疑問なんだ」
「はい。ナナガシラですが、あっ、一応、市町村名は
「つまり、封印するなら廃村になったときにするべきだと」
「そうです。さすが、隼斗さんですね。呪に対してなら、それがベストなタイミングのはずです」
「当時できない理由が何かあったとか?」
秋人のあからさまな
「
「ああーっ。どいうこと」
「ナナガシラに人は途絶えました。ですが、神様はまだ存在しているのではないでしょうか。実菜穂たちが入ったのは、その神様と何か接触をする必要があったから。でもそこはこの際、無視します。問題は、ナナガシラにいる神様です。この神様にはそれぞれ
秋人が漣に確認した。漣は
「うん、そう。ここの鳥居に入ることができるのは、
漣が説明すると、秋人は頷いた。
「これが廃村になっても封印できなかった理由です。鉄鎖の神様の巫女が、ナナガシラを封印すれば、ナナガシラに存在する神様の聖域を荒らすことになります。そうなれば当然、神様同士の争いを起こす火種となるはずです。鉄鎖の神様といえど、簡単にはできないのではないでしょうか」
「うーん、秋人、待て。廃村になったときに封印しなかったという理由がそうだとして、いま封印されている説明にはなってないぞ」
隼斗は
「はい。本題はこれからです。隼斗さんも僕も間違っていましたが、封印をしたのは誰でしたか?」
「ああ、
「そうです。僕も、隼斗さんも封印をしたのは、巫女だと思っていました。でも、志希名さんは巫女ではない静南さんだと教えてくれました。巫女である
「あーっ、それは巫女がやれば問題になるから……いや、違うな」
(静南って奴が何者か知らないが、巫女ではない。でも封印はできる……待てよ。巫女であろうとなかろうと、封印することがまずいのだろ。なぜやったかって? あーっ、思考がスタートに戻ってしまった)
隼斗が湯呑を見つめ考え込んでいた。秋人は考え込む隼斗を見てクスリと笑った。
「隼斗さんは、さっきの僕と同じですね。答と疑問が
「ああ、そうだ。見えそうで見えない感じだ」
「はい。さっきまで僕も同じでした。封印したのが巫女ではない静南さんである理由。それは真那子さんがこの場に存在しないからです」
「何言ってるんだ、お前。話が飛んだぞ。まさか、真那子って巫女は想像上の人というオチか」
隼斗が前のめりになり、持っていた湯呑をひっくり返しそうになった。
「いいえ、真那子さんはこの神社の巫女として存在しています。持っていたハンカチのおかげなのですが、僕は、参道を通るときに代々の巫女たちがこの社を護っているのを見ることができました。おそらく先代の巫女がその役を終えれば、次の巫女が引き継ぐ。一人、一人が一命を繋ぎ巫女としての役目を果たしてきた。この神社では、巫女が絶えることが無かったのではないでしょうか。静南さんは巫女としての力を持っている。なのに、巫女ではない。それはつまり……」
「正式な巫女がいるってことか。でも、その巫女はこの神社にいない」
「そうです。志希名さんが言ってました。氏神の巫女は一人しか存在しない。だとすれば、真那子さんは生きて存在している。それなら、何処にいるのか。その答は、
秋人が礼を含めた眼で漣を見ると、漣は「わたしが?」と驚いて自分を指さしていた。
「漣が教えてくれたっていつだよ」
答にたどり着けないでモヤモヤしている隼斗は、敢えて答を聞かず、漣のことでヒントをもらおうとした。
「隼斗さん、思い出してください。ナナガシラからここに来るまでに、休憩した場所があったでしょう。あのとき漣さんが寄り道しなければ、僕は答にたどり着けませんでした」
「ああ、思い出した。漣が百年前のことを話していた場所だな。
「そう、そこです。その場所こそが、封印したのが巫女ではない静南さんである理由。志希名さん、もう一度お
秋人が気迫のこもった声を放つと、志希名は避けることなく秋人に答えた。
「そうじゃ。真那子はそこにおる」
(おいおい。じゃあ、漣が言っていた湖が消えたっていうのは本当のことか。あの場所には人影などなかった。湖は消えて、残ったのは
志希名の答えを聞いて、隼斗と漣はお互いを見て理解できているのか確認した。漣の顔が少し晴れやかになっているのを見ると、隼斗は秋人の方を見た。秋人は、隼斗に頷いてみせた。
「隼斗さん、大丈夫です。漣さんに確認するまで、僕もまだ確証はありませんから」
(漣は何に納得したんだ?)
秋人の言葉に隼斗は聞こえぬほどの音で舌打ちをした。
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