死にゆく私へ ~ノブレス・オブリージュ~ 2


その男爵令嬢の振る舞いに問題があるのだが、この人には理解できないのだろうか?。


私は直接兄に苦言を呈する事にした。

「兄上、公爵令嬢であるメリッサより男爵令嬢を優先させるのは、如何なものかと思います。体面的にも、もう少し改善をした方が良いのではありませんか?」



「クロード、私も馬鹿ではない。色々考えているから、大丈夫だ。」兄は面白そうに笑いながら答えた。


その時にもっと話し合えば・・・いや、メリッサと王位を奪えば良かったのだ。


数日後のパーティーで、謂れのない兄の公開断罪が突然に始まった。エロールは男爵令嬢の腰に手を回して引き寄せながら


「メリッサ、貴様はミーナに醜い嫉妬心からイジメを行ったそうだな。頭から水を掛けたり、階段から突き落とそうとしたり。目撃者も居るので言い訳は無用だ。」等と公の場で責め立てた。


「私は何もしていません。」メリッサは凜として答えた。


そして、言ってはいけなかった一言が発せられた。

「ミーナは、私の子を身籠っている。私の子は王族だ。彼女へのイジメは王族への不敬である。」と宣いメリッサを糾弾したのだ。


王族への不敬は、大罪である。


社交の場で始まった追及が、噂を無限に広める事となり、一部貴族からメリッサへ厳しく追及するようにと王に陳情があり、坂道を転がる様に悪い方へと流れは止まらなくなってしまった。


メリッサの父である公爵と対立している派閥の貴族達が、ここに来て幅を利かせて公爵に詰め寄る。

これ以上、王室と公爵の派閥の距離が近づくのを嫌ったからである。公爵を失脚させたいのだ。


公爵は娘のメリッサを激しく罵り、公爵家から除籍すると発表した。

そして国王に魔力の供給をストップする等と脅しをかけてきた。


派閥の争いに、魔力の供給問題。騒がしくなった世間の噂。

事がここに至り状況の悪さに初めて気が付いた王である父と王太子である兄は、メリッサへの処分を私に丸投げしてきたのだ。



そして死罪の執行の日がやってきた。

私は側近達だけで毒杯を牢獄まで持っていき、もう一度メリッサに確認をした。


ガリガリに痩せて顔色も優れない。それでも気品溢れる彼女は、姿勢を正しカーテシをして見せた。

「クロード殿下、私は恥じる行いをしてはおりません。」


「分かっている、貴女が死ぬ事はない。私が何とかするから逃げよう。」

そう言ったが、聞き入れて貰えない。


部下が毒杯を渡すと、彼女はそれを一気に飲み干した。







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