第10話

二年生は全部で8名。

次期キャプテンの片山さんは正捕手、長井さんは俊足で1番ショート、久保山さんは控えのピッチャー、センターは二年生ながら4番を打つ白木さん、守備に定評のあるレフトの長谷川さん、長谷川さんと同郷の浜野さんは控えのセカンド、キャプテンの大友さんと同郷の井ノ原さんは控えのサード、あとは控えのファースト、安藤さん。

安藤さんは本来、恐怖の谷川さんのパートナーなのだが、左手を骨折していてまだ完治していないので、昨日の僕の惨劇は起きたのであった。

まだプレーは出来ないが、左手にギプスをして見学には来ていた。

小柄だがなんだか癖の強そうな人で、

谷川さんのパートナーに相応しい感じがした。

「チワーーーーーーー!」

一段と大きなあいさつが三年生を迎えた。

三年生は5人しかいなかったが、圧倒的な存在感と、風格があった。

まず、キャプテンの大友さん、前にも書いたが、ハスキーボイスで彫りの深い男前だ。副キャプテンの掛田さんはエースピッチャー、高架から見ていた時は常にグラウンドの周りを走っている印象があった。同じく副キャプテンの中岡さんはセカンド。動きが俊敏で優男。そして恐怖の谷川さんはファースト、谷川さんには多分、全三年生男子いや、全校生徒が知ってると言ってもいい恐ろしいまでの伝説があった。この戦慄の伝説は後程披露するが。

そして、谷川さんの横にいつもピッタリくっついている宮本さんは、三年生で唯一の補欠だった。

この宮本さんは後述するが、一番のサイコパスだった。

三年生と僕たち一年生には、大きな壁があって、会話を交わす事は殆どない。それどころか声をかけられる事も、一年生でレギュラーの渡か、同郷である以外はまずないと言っていいだろう。

だから昨日の僕に谷川さんが声を掛けてくれたのは、本当にレアなケースで、あそこで僕が放屁などせず、無難に基礎練をこなしていれば、ひょっとすると、谷川さんに寵愛された可能性もあったのだ。

正直なところ、僕はあれだけ恐ろしい谷川さんの事を少し憧れの目で見ていた。それは髪型も、学ランの着こなしも、ユニフォームの着方ひとつ取っても、他の誰とも違う着こなしだったのだ。で、あの一匹狼感。八方美人でいつも人の顔色を窺う僕とは真反対のアウトローに痺れていた。

もちろんそんな僕の羨望を知るわけも無く、三年生は部室前に整列する僕たちには一瞥もくれず、部室へ入っていった。

三年生へのあいさつ、部室への入室を見届けて、僕たちは道具を持ってグラウンドへ急いだ。



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